ホーム > 府政情報 > 府政運営・行財政改革 > インターネット知事室 > 知事の発言 「京都のちから 地域力を育てる」

ここから本文です。

知事の発言 「京都のちから 地域力を育てる」

最新情報へ バックナンバー一覧へ

[知事が問う・日本の選択]関西6府県の6知事が会談

《平成16年9月14日付の毎日新聞に掲載されたものです。》

 毎日新聞がシリーズで展開している会談企画「知事が問う 日本の選択」で、関西6府県(滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)の知事に議論してもらった。6知事会談は昨年12月に次いで2回目。今回も政府が進める「三位一体の改革」について注文が相次ぎ、「政府を強く監視していく」とした。また、府県境を超えた体験・地域型教育や、児童虐待の具体事例のデータベース化など、府県連携についての新たなアイデアも出された。会談は2日に毎日新聞大阪本社で行われ、司会は伊藤芳明・大阪本社編集局長が務めた。

「三位一体」改革

  • 知事会合意、我々が主導--太田氏
  • 削減でなく移譲リスト--井戸氏
  • 交付税抑制は別の議論--柿本氏
  • 「コップの中の争い」脱却--山田氏
  • 部分と全体の話が混同--木村氏
  • 国の変革これから本番--国松氏

――国と地方の税財政を見直す「三位一体の改革」では、全国知事会などが補助金削減案を決め、国と地方の協議機関を作ろうという動きになった。知事会の合意をどのように評価し、どう展望しているのか。

【太田】 全国知事会の議論は13時間に及んだ。新聞では四十七士と書かれたが、素晴らしいものができたと思う。結論にはいろんな見方があると思うが、妥当なところに落ち着いた。地域主権の時代を作るのは知事たちだ、と全国に印象付けることができた。後に「歴史の転換点だった」と言われると思う。近畿の知事が会議をリードする役割を果たした。

  義務教育の国庫負担金削減については、地域の実情に即したきめ細やかな教育をやっていく上で、これから地方がその主体を担う。時代の転換点であって、模索すべき方向だと思っている。道のりは険しいが、手当てをきちんとすれば、国民の不安に応えていける一つのきっかけができると思う。

【井戸】 昨年の対応があまりにも「国庫補助金削減ありき」だったので、(政府が3兆円の)税源移譲を「骨太の方針」で掲げられたのは、画期的だと評価している。国の予算は税収が41兆円しかなく、国債収入が36兆円という中で、あえて3兆円は税源移譲するよというフレームを、国が自ら提示した。地方自治体側として積極的に行動を起こさないとなれば、この後、地方自治は語れない。そういう意味で千載一遇のチャンスだと認識していた。検討過程は議論があったが、手順を追った過程で大局的な集約が図られた。

  ご指摘の協議機関をつくり、既にスタートする動きがある。財政経済諮問会議で交付税削減の議論が上がっている。我々は、3兆円の税源移譲リストを上げたのであって、削減リストを上げたつもりは全くない。地方財政裕福論や地方交付税縮減論が出てくることに警戒感があった。しかし、「ボールを投げ返さないと、分権は進まないのではないか」と理解した。にもかかわらず、即座にそうした議論が出てくることに、政府を強く監視していかないといけないと思う。

【柿本】 今回は出発点だと思っている。3兆円の税源移譲が本物か幻か、実は疑問を持っている。しかし、3兆円の税源移譲は、補助金を一般財源に切り替えようとしてきた我々の流れに対して、一つのステップができたと思う。

  問題は、補助金が余っているから削ってくれというのではなく、それを自由に使える金に切り替えてくれということ。経済財政諮問会議で「交付税を抑制しよう」というのは、別の議論だ。

  地方が使える金に切り替えようという話と、国と地方が互いに努力して財政健全化をしていこうというのを、一緒にしてはいけない。地方6団体が「三位一体を進めていこう」と決意した趣旨の裏をかかれたようになっている。6団体の決断は、スタートであって結論ではない。協議会は可能な限り実効的な運用をしてもらいたい。

【山田】 地方分権論は、国と地方の権限争いだった。しかし、今回の議論を通じて「誰が本当に国民生活を守れるのか」というのがテーマではないかと思った。厳しい選択の中で、補助金の削減案を出したのは「このままでは住民生活を守ることができないのではないか」との危機感を持ったからだ。そうでないと6団体の一致はなかったと思う。国には「今までの行政水準を維持できるのか」「地方に任せると、義務教育も含めて維持できないのではないか」という議論が出ている。国と地方で700兆円も借金があって、国家財政の4割以上が借金という中で、本当に中央官庁は今の水準を維持できるのだろうか。

  義務教育の国庫負担金は、2年間で4500億円削減された。社会福祉施設の新規建設は、3分の2以下に抑えるよう通知が来ている。こういう状況では、集中と選択しかない。苦渋の選択を地方はしている。国が「水準の維持」と言うのなら、今までの経過はどうだったのか、国は見通しも示せない。地方がまとまって集中と選択をやっていかざるを得ない。そう国民に訴えていかないと「コップの中の争い」になってしまう。

【木村】 地方分権はグローバリゼーションの中で「住民の生活に近いところは、身近な行政がやる」というのが世界的な潮流だ。それを踏み外してはいけない。そうでないと、サービスをやってくれるなら、国でも地方でもいいと言う話になってくる。中央は騎虎の勢いで、義務教育の人件費の話に終始している。しかし、奨励的補助金にも大きな問題がある。ロット(量)は大きくないが、全部やめようという話になっている。今はあまり議論されていないが、大きく取り上げていくべき問題だ。

  小泉首相と中央官庁が一体となってリストを出せと投げてきたのなら話は分かりやすいが、小泉首相から直接地方に投げられて、地方から議論をつくして中央官庁に投げ返した。地方も騎虎の勢い。受けたほうの中央官庁が驚いているという状況だ。建設国債を財源にして補助金を出しているところがあるが、財務省も事業官庁も「その分を全部、地方の税源にいくような話を出してきて何事だ」と言っている。誰も落としどころを決めることができない。今までなら、財務省や総務省が落としどころを考えて、年末まで持っていった。経済財政諮問会議の民間議員は交付税まで言い出した。もう入り乱れて三つどもえ。

  和歌山のように財源的に豊かでない県が、あえて「見直しリスト」に賛成しているのも、必要なものは交付税で調整が取れるという前提になっているから。それが、三位一体に合わせて思惑の違う議論が出てきている。さらに、教育の問題と引っ掛けられた。三位一体の削減リストの問題と一緒にされて話をすり替えられている。中のパーツの話と、全体の枠組みの話が混同されていて、しかもマスコミも問題の本質を分かっていない。余計に話が混乱しつつある。

【国松】 地方分権はかなり前から言われ、方向も示されてきた。財源を伴った分権、自らが判断して責任持てる分権になっていなかったのを、三位一体という形になり、3年間で4兆円というスケールになった。初年度やってみたら、補助金は削減スケールが決まって税源はスケールが決まっていなかった。さらに、交付税は最後にバッサリと削減された。そうした昨年の反省に立って、税源移譲を巡る話からやろうとなった。

  中身は国では簡単に調整できないからと、地方にボールを投げられた。新潟の2日間の知事会議が取り上げられるが、私は3日間の会議だと思っている。災害のため1日東京でやって、残る2日を新潟でやった。その間に、委員会であらましの議論をしてもらって、時間をかけてオープンに議論をした。最後は小異を捨てて大同についた。地方6団体が、財源を伴う本格的な分権の流れにしないといけないと集約した。

  ボールは投げ返したが、中央官庁が果たして縦割り組織の中でどこまで出来るだろうか。郵政や道路公団ではなく、もっと本格的な日本の仕組みを変える話だ。シナリオがない中、中央官庁、国会、政府が最後にどうするのか、こっちのほうが心配になる。山あり谷ありの議論になるが、間違いなくキックオフ宣言をした。現場を中心にして国を変えようと。これからが本番だ。

観光

  • 「伝統の宝庫」に安住--太田氏
  • 先端産業現場PRを--国松氏
  • 若い世代の交流急務--山田氏
  • 遷都1300年で連携模索--柿本氏
  • 世界遺産登録追い風--木村氏
  • 文化資源の再発掘を--井戸氏

――観光の話に移りたい。太田さんは東アジアを意識した戦略を言われている。

【太田】 日本経済新聞が上海やソウルで実施した日本の観光地調査によると、今一番人気があるのが、北海道と東京。京都は上海で7位、ソウルでも7位。要するに歴史的建造物では持たないということだ。逆に言えば、それがあるがゆえに関西はサボってきた。関西各府県で連携しようと言いながら、20年ぐらいサボっている思う。関西は歴史と文化と伝統の宝庫だから「何もしなくても人は来るもんだ」と思っていると、それは違う。東アジアの人たちは歴史的建造物に興味があるのではなく、「雪が見たい」「温泉に入りたい」と思っている。

  上海の人に聞いて意外だったのは、上海は結構、内陸に入っているため「海が見たい」という。そういうニーズさえ、きちんと捉(とら)えていないと思う。旅行会社はいろいろあるが、(海外旅行に出かける)アウトバウンドに興味があって、外国人観光客を呼び込むインバウンドには関心がないのではないか。6府県が連携を強めて、いい観光商品を開発して東アジアの人たちに提供していかなければ、関西国際空港というゲートウエーがあるのに、観光客を他に取られてしまう。

  韓国、台湾、中国、香港で日本に来る外国人観光客の57%を占めている。だから、やはり東アジアの人たちに焦点を絞って、彼らにどういうニーズがあるか、どこに行きたいか、何を体験したいかをつかむ必要がある。意外と工場なんかを見たいという人も多い。

――工場や伝統工芸といった関西特有の資産を観光資源にする「産業観光」も、今後注目されるのでは。

【国松】 例えば中国は人口規模が大きいところに、どんどん力をつけていって、海外旅行もかなり自由になりつつある。向こうからすれば、大阪や京都、奈良などの府県の区別は関係ないのだから、関西は行政だけでなく、官民一体にならなくてはならない。また、歴史文化より、日本の先端技術や産業に興味を持っていると感じる。だから東京に行くと「新幹線乗りたい」「秋葉原に行きたい」という話になる。関西にも先端産業の現場はたくさんある。それらを観光のルートにしてPRしていく必要がある。

【山田】 韓国や中国に観光誘致に行くと「日本文化は我々の亜流」と考えられていることも感じられるが、実際にプレゼンテーションをすると、「こういう日本独特の文化があるのか」と分かってもらえる。関西は日本文化の宝庫であり、この特色を生かしたPRが必要。

  インセンティブツアー(企業などによる海外報奨旅行)や産業ツアーの誘致も、韓国向けにプロモーションを行って、モデルツアーも実施した。京都のハイテク企業見学と京都観光のタイアップは人気が集まると思う。また京都の場合は通信系が強いが、大阪ならバイオが強いとか特色があり、関西で連携すれば、奥深い観光誘致が出来るのではないかと考える。

 また、反日ブーイングが目立った先のサッカーアジアカップなどを見ると、若い世代の交流を今のうちにつくっておくべきとも感じる。関西の日本海側の門戸である舞鶴港の特区構想で、京都府が提案していた韓国からの修学旅行生のノービザ(入国)が全国レベルで実現した。例えば、舞鶴港を基点として関西の高校生と中国や韓国の高校生との交流ができるようなプログラムづくりは、これからの日本とアジアの関係を考えるうえでも意味を持つ。

【太田】 ニューヨークやパリが多くの観光客を集めるのも文化のお陰。文化の力をもっと磨く工夫をするべきだ。大阪府の行財政改革で、民間の力を借りる施策として、(芸術イベントなどの資金を一般から募る)「アート・ファンド」を提案した。こうした新しい方式を関西がチャレンジしていくべきだ。

――井戸さんは、観光ビザ免除の拡大をして観光客が来やすくしようという考えだ。

【井戸】 それは(観光振興の)基礎条件。中国での団体観光ビザ発行の窓口は今まで北京の大使館だけだった。昨年の2月から上海の総領事館でやるようになり、12月から広州の総領事館でもやるようになった。アジアに対するインバウンドだけでなく、アウトバウンドが大切。観光客が行かないのに「来てくれ」というのは(アピールが)弱い。中国観光も単なる物見遊山でなく、中国の方と出会えるようなコースをいっぱいつくっていくことが大事だと思う。そこで(兵庫県では)「WE・ASIA推進事業」で高校生の海外修学旅行を進めている。

  観光で行っている人はいっぱいいるが、果たして中国の人とじかに接しているか(疑問だ)。青年の交流事業(兵庫県青年洋上大学)で、中国で民宿させてもらっている。日本の青年にじかに接することで(受け入れ家庭が日本に)関心を持ってもらっている。そのような草の根の交流が大切だ。

――確かにそれは観光の一つの重要な面ですね。

【井戸】 もちろん産業観光も大事だ。台湾の新幹線が川崎重工(兵庫工場)で造られ、(神戸港で)船に積まれて出ていく。それを台湾の若い人に見てもらえるだけでイベントになると思う。このように単なる工場見学でなく、イベント化、ソフト化すればいろいろ面白い企画が組める。

【木村】 このたび熊野・高野・吉野が世界遺産に指定されたお陰で、観光客が増えている。大阪市立美術館では特別展「祈りの道~吉野・熊野・高野の名宝~」が行われている。

  企業戦士として活躍した団塊の世代が退職し、時間が出来ると、癒やしを求め、京都や奈良などの古い神社・仏閣、街などを訪れる。日本文化に本格的に浸りたいという層が一気に出てくるのだ。今までの観光バスで行って大騒ぎするといった観光と(ニーズが)変わってくる。そういう層に対して関西として、新しい観光の提案もしていけば、関西観光を復権出来るのではないか。

【柿本】 文化遺産が(観光資源として)古くなったのではなく、観光のシーズ(SEEDS、提供側の持つ技術やアイデア)が多様化しているのだ。県をまたがったツアーも生まれてきている。奈良県もシャープ(天理総合開発センター)などがあり、見学者も多い。観光ならこれ、産業ならこれというわけでなく、交流のタネが多角化していることを認識すべきだ。

  奈良県は平城京遷都1300年である2010年に記念事業を計画しているが、関西には平城宮と関連の深い紫香楽宮跡(滋賀県)、難波宮跡(大阪府)もあり、連携した記念事業も模索している。また2010年には上海万博があるので、うまく使う(連携する)方法も考えている。「タネ(観光資源)がいっぱいある」というのは受け身の考えで、積極的に人に来てもらえるものに演出する、商品としてつくることが大切だ。

【山田】 今年の秋は京都は元気だ。恒例の「京都まつり」「京都賞」に加え、学生らによる「京都学生祭典」、京都大学などと連携した「京都文化会議」、京都市の「京都文化祭典」、さらにはこのたび新たに京都に誘致する「科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム」(STSフォーラム)と、1回目とか2回目という新しい催しが目白押し。こういう文化イベントを組み合わせていくことが観光振興の非常に大きな力になるのではないか。

―関西というと伝統文化や遺跡というだけでなく、産業やイベントを組み合わせていくことが大切だということですね。

【井戸】 足元をもう一度見直そうという動きもある。兵庫県御津町の室津港は参勤交代の西国大名の下船地。そのような歴史文化を再評価していく。歴史文化を機軸とする地域おこしをみんなが評価し、ネットワークに結び付いていく。文化資源の再発掘は重要だ。

【柿本】 6年目を迎えた「なら燈花会」には今年、10日間で70万人が来た。東大寺や奈良公園にろうそくをともすというだけの発想だが、「神秘的である」と人が集まるのは奈良の持っている雰囲気のお陰だろう。

【木村】 柿本さんの話は非常に大事なことで、今あるものに付加価値を付けることが重要だ。今度、和歌山大学は観光学部をつくろうとしている。このような学問的なアプローチも関西観光振興には必要だろう。

【井戸】 来年1月17日が阪神淡路大震災から10年ということで、兵庫県では今年から来年にかけてコンベンションブームという状況になっている。メーンは来年1月18日から22日までの「国連防災世界会議」だが、集まったたくさんの人々のフォローをどうするかというのが課題だ。京都だけでなく、兵庫にも泊まっていただくという仕掛けをつくる上で、今出た体験や付加価値を組み合わせていくことが大事だと思う。

【国松】 滋賀はエコツーリズムを新しい観光パターンとして重視している。琵琶湖や里山などでの自然体験を地域の人と一緒にして癒やされるというエコツーリズムが、新しいタイプの観光のメニューになると思う。

義務教育

  • 現場に応じた「京都方式」--山田氏
  • 「食育」や「親学習」推進--太田
  • 財源確保が一番の問題--柿本氏
  • モデル事業で域内交流--井戸氏
  • 琵琶湖学習で協力可能--国松氏
  • 関西のこと深く教える--木村氏

――各論の義務教育の問題は、地方が特色を出すチャンスでもある。「京都方式」といわれる少人数教育について紹介してください。

【山田】 教育水準を上げるには三つ方法がある。一つは少人数学級。例えば30人学級。もう一つは、理科や算数のように子どもたちに差ができる教科について少人数授業をする。三つ目は、学級崩壊など1人の教師でうまく運営できない場合に対応する複数教員の配置だ。

  この三つの方法をどう実施するか、学校の状況に合わせて学校現場が考え、選択して、教育委員会が調整する形に変えた。税源移譲していく方が「京都式少人数教育」には合っている。少人数教育について、市町村レベルでどういう選択をしたかを、父母や住民に説明するよう求めている。

【太田】 選挙の洗礼を受ける立場から言えば、子どもたちの教育を充実する政策なくして、知事や市町村長に当選しない。教育の充実は必ずやらなくてはならない仕事。

  大阪府も少人数教育の他に、食生活を見つめる食育、家庭の教育力を向上する親学習のカリキュラム作成、地域の教育力を上げるため、中学校区でまとまって子どもたちがボランティアに参加するイベントの開催などに取り組んでいる。あらゆる知恵を絞って教育に対処しなくてはならない。

  自由度、裁量を広げていくうえで、今回の(義務教育費国庫負担金の)一般財源化は自治体に一筋の光を当てた。ほとんどが人件費とはいえ、できる限りの創意工夫をしていくことで、地域の実情に沿った教育に変えていく大きな力になる。金額の問題ではない。

【国松】 三位一体の改革で、中学校分だけを(全国知事会の国庫補助・負担金削減リストに)入れるのは適当でないと私は主張したが、最終的に全国知事会で賛成した。教育現場の裁量を広げる仕組みが望ましい。

  一方で、国づくりは人づくりと言われるように、教育は国家的な要素も多くある。全国知事会に行く前、市長会、町村長会の代表と意見交換した。教育だけは(削減リストに)入れないでほしいというのが共通の意見だった。市町村長からすれば、財源を保障できない懸念がある。

【柿本】 問題は財源。税源移譲することに総論として反対ではない。裁量を認めた時に、財源を約束するかどうかが根本的な問題だ。裁量権は移ってもその分、財源が減ったら、かすみを食べたことになる。地方行政に占める義務教育費のウエートは大きい。高校教育まで含めたら、奈良県の人件費の約3分の2は教育関係。教育をないがしろにできないだけに、財源確保が保障されるかが一番の心配だ。

――関西という域内で、モデル校による新しい交流はできないか。何かアイデアはありますか。

【井戸】 知識教育はそれなりに工夫されているが、今の教育で欠けているのは、体験教育と地域教育。体験教育のフィールドを変えるのも大切。兵庫県の生徒が奈良県のお寺で合宿してもいい。奈良県の生徒が兵庫県内の高原でテント生活をしてもいい。相互交流のモデル事業として取り組める。地域の人たちが教壇に立って体験談を語るなど地域学教育も徹底していく。

  教育財源論について言えば、なぜ教育財源をどこかの省が配らなくてはならないのか。トータルの財源として保障するやり方をしたらいけないのか。変に財源論に結び付けて義務教育論をやっていることに非常に矛盾を感じる。教育論からすれば、もっと議論を戦わせればいい。財源論ではないのではないか。

【木村】 今、私立学校の持つ意味が大きくなっている。枠組みが変わってきている。教育が多元化している。そんな時、補助金を出してどうのこうのという話にしがみついているような考え方はいかがなものか。

 公教育は大切だと思っている。国は仕組みのこと考えてくれたらいい。総体として地方にお金を確保する仕組みを交付税制度などでつくれば、それで良い。おかしなことをしている県があれば、国が言えばいい。人件費の半分を出しているから地方に介入する。それをやめてしまったら介入できなくなるという自信のない発想はやめるべきだ。大人の議論をするべきだ。

【柿本】 財源論は大切だ。日本は教育に限らず、都道府県、市町村に多くの仕事が下りている。障害者福祉から公共事業まで、ほとんど地方行政でやっている。地方行政のボリュームは大きい。教育論ができるための財源は確保されないといけない。財源論で教育をやってはいけないが、全体の財源はしっかり確保しなくてはいけない。これは国の責任だ。

【山田】 社会福祉も教育も、税財源の偏在を交付税で補っている。交付税が大枠の中でうまく機能しているか、検証する必要がある。サッカーワールドカップのスタジアムまで事実上、交付税で造ってしまって、財源調整、財源保障と言えるのかという思いがある。

  京都府の場合、義務教育費は約1400億円。このうち国庫補助負担金は約500億円。この500億円を守るのではなく、文部科学省は教育に責任を持つならば、1400億円をどう確保するかを考えないと、単なる自分たちの権限を守るだけの話になる。

  関西の広域連携で言えば、インターネット、デジタル関係は各府県ともブロードバンドが整ってきた。コンテンツ(情報内容)さえあれば一様に配信できる。例えば、「京都文化会議」においては、内外の著名な方が来て講演する。この講演を府立高校に高速大容量光ファイバーによる通信網「京都デジタル疏水ネットワーク」を使って配信し、双方向での対話もしようとしている。また、兵庫、滋賀と情報ハイウエーが今後結ばれれば配信できるようにもなる。IT時代で今までの距離感がなくなる。それらを生かし、関西の特色を出した教育ができないだろうか。

【太田】 体験学習は自然に触れ合うだけでなく、商業や工業などで関西にはそれぞれ特色ある現場がある。それと、域内では縦の交流も重要。幼稚園の子どもたちが、入学前に小学校を訪問したり、大学生が小学生や中学生の学習をサポートする。そんな縦と横の広がりを教育現場で作れるのは地方だと思う。

【国松】 滋賀では琵琶湖を生かした体験学習を小学5年生が行っている。琵琶湖や淀川の流域の問題を同じように学んでもらうことは大変面白いと思う。また、それぞれ持っている得意の分野を情報公開していくという方法もある。インターネットを使えば、現場に行かなくても学べる。

――体験学習を県を超えて行う話は、授業の単位認定などもできないか。

【井戸】 兵庫県内の学生を1カ月間、船に乗せてアジア・太平洋を巡る大学洋上セミナーを行い、これには単位が認定されている。このような大学レベルなら可能かもしれない。

【柿本】 学習指導要領は非常に厳しい。時間の使い方など地域で変えられるように裁量を与えられるのが前提だ。

――教育の問題で情報を共有する試みはどうか。

【井戸】 (中学生が地域で社会体験活動などを行う)「トライやる・ウィーク」を全国化すべきと言っていたら、来年度から国が同様の職業体験事業を行うことになった。

【柿本】 家庭教育用の「親学サポートブック」というのをつくって1歳半健診で全員に渡している。(他県の)教育委員会のベストセラーとして参考にされているようだ。

【木村】 小中学校など、今まで自分の街を知りましょう、県を知りましょうという教育はやっているが、「関西のことを知りましょう」というような教育はあまりやられていない。そのような圏域単位の理解を深めていくことは大事だと思う。

児童虐待

  • 地域ネット形成が大事--木村氏
  • 難しい大都会の子育て--太田氏
  • 情報伝達のルール化を--国松氏
  • 専業主婦こそ悩み深刻--柿本氏
  • 科学的に適切な対応を--井戸氏
  • 核家族のサポート必要--山田氏

――子どもたちを巡る問題では、児童虐待が深刻になっている。

【木村】 和歌山でも児童虐待は増えている。しかし、必ずしも若い親が虐待するとか、定型的なものはない。地域ネットワークを作ることが大事で、和歌山では5市町でネットワークができている。もし、事件が起きたら、号令をかけて専門家など関係者が集まる。そのような仕組みを全市町村で今作りつつある。

【井戸】 家族の結び付きが衰えている。それをどう補強するかだが、地域の方々に応援してもらうしかないと思う。SOSのサインを地域でキャッチして、関係機関につないでいく。または様子を見守る。兵庫では「まちの子育てひろば」というのを作って、今、県下で約1400カ所が機能している。若いお父さんやお母さんは相談する相手がいない。そこで気楽に集まって悩みを言える場をつくる。これ以外にも、子どもたちが自由に遊べる「子どもの冒険ひろば」、若い人たちが交流する「若者ゆうゆう広場」がある。これからの時代、地域を舞台にした諸活動を考えていく必要がある。

【太田】 大阪は児童虐待の相談件数が全国一。本当に大変。大都会での子育ての難しさというものがある。少子化にも関係するが、都会のマンションの中で、母と子だけが向き合っている。家庭や地域で、広い意味での教育力が落ちているのが一番の原因だろう。岸和田市で中学生虐待事件が起きて岸和田子ども家庭センター(児童相談所)に行ったが、所長さんたちは本当に悩んでいた。1人で150件余りの相談を抱え込んでいる。ケースワーカーを非行対策も含めて十数名増員したが、追い付いていかない。そこは国にもちゃんと支援してもらわないと困る。

――滋賀県では県外に転出したケースについても、児童虐待に関する情報を提供している。これだけ人の移動が激しいと、そういったことも大事だ。

【国松】 滋賀は人口増加率が日本一といわれる県。うちでも虐待の相談件数がすごい勢いで増えている。地域振興局に窓口を置いて、さまざまな分野の関係者のネットワークを作っている。児童虐待防止のネットワークの設置率は80%ぐらい。全国的には40%ぐらいだが。滋賀は、来てもらえる人も多いが、出ていく人も多い。専門機関に情報を伝達する仕組みや、情報を共有化する仕組みを、近県でルール化する必要があるのでは。もちろん、プライバシーへの配慮は必要だが。

――先日、柿本さんの講演を聞いた。奈良に住み、仕事は大阪、学校は兵庫や大阪という、府県を越えたファミリーが多いということで、国松さんの指摘には共感するところも多いのでは。

【柿本】 奈良も移動人口が結構多い。問題のある家庭が移動した場合の対応というのは決めていて、連絡するようにしている。互いの府県で総合的に決めたらそんなに難しいことではない。これはぜひやらないといけないと思う。

  最近はボランティアグループも、子育て支援のようなセンターを作って、可能な限り電話相談に応じている。家庭内暴力のようことがあった時の対処の話が出ているが、実はそういうことが起きる根本原因に対して、情報提供することが重要だ。

  例えば、子育ての悩みを言う人は専業主婦が多い。私も初めて聞いたときびっくりした。働いている人の方が、相談相手を持っている。専業主婦は世間との接触が少なく、かえって子育てについてのいろんな不安を感じている。家庭と地域社会、行政との間で、情報が流れるような仕組みを、一つでなく、いろんなネットワークでやっていく。特に日常的な情報提供を進めていく必要がある。

【井戸】 この問題は個別事案だけの対応をしていると、対症療法になってしまう。社会的事象として、これだけ各県、各地域で共通課題になっているわけだから、科学的に分析して、適切な対応をしていかないといけない。例えば、ファストフードの食べ過ぎなど食や栄養の問題から「切れやすい人間が増えている」とか、幼児期の育て方が問題だとか、いろいろ言われているが、本当にそれが要因なのかどうか、解析されていない。なかなか実験はしにくいが、疫学的な検討が貴重になってくる。

【国松】 なぜ児童虐待が起きるのかという根本的な研究もしなければいけないが、現実に起きていることを早く見つけて、素早く対応しなくてはならない。市町村の保健師が健康診断で子どもを見た時、「何かこれはおかしい」ということを発見することが結構あるらしい。定期的な検診の中で、早期発見ができるのだから、これはもっと生かしていったらいい。

【山田】 京都でも児童虐待ネットワークを全府的に整備したところ、相談が3割増えた。結局、それぞれの現場で、どこでシグナルを捕まえられるかだ。学校での不登校や、幼稚園や保育所での子どもの様子、あるいは保健センターでは乳幼児検診がある。それが全部ネットワークになってやっていかなくてはならない。実際現場は大変ですよ。すべてに対処するとなれば、児童相談所に精神科医を置いて、児童心理学の専門家がいて、カウンセラーもいて、今度は弁護士も置かなければならない。児童虐待の問題については、やはりそれぞれの機関が連携しながら対処するサポートネットを積極的に作っていかないと、追い付かない。

  もう一つは地域力と家庭力。地域の力が落ちているところに、こういった問題は起きるんじゃないか。昔は家庭の力は三世代、おじいちゃん、おばあちゃんもいた。先日、子育てしているお母さんと会ったら「地域子育て支援センターに来てやっと救われた。団地に一人いるときには、本当にどうしようかと思った」と。核家族化の中でサポートできる体制がなくなってしまったというのが、非常に問題だ。社会全体のサポートがないと、児童虐待はなくならないと感じる。

ことば

三位一体の改革
  地方分権を推進するため(1)国庫補助・負担金の削減(2)国から地方への税源移譲(3)地方交付税の見直し――を同時に進める改革。
  04年度分として、補助金を1兆円削減し、新設の所得譲与税などで税源移譲を図った。同時に地方交付税が大幅に削減され、地方自治体から猛反発を受けた。
  政府は新たに、06年度までの地方への税源移譲を3兆円規模とする方針を決め、これに見合う補助金削減の具体案の作成を全国知事会などの地方6団体に求めた。義務教育費国庫負担金の削減に一部の知事が強硬に反対、その是非が焦点となったが、8月の全国知事会議で激論の末、中学校教職員の給与分8504億円を含む総額3兆2283億円の削減リスト案が異例の採決で了承された。
  国にとっては権限縮小につながることから、補助金を所管する各省庁の抵抗、巻き返しも予想され、改革の行方は予断を許さない。
世界遺産
  72年にユネスコ総会で採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(世界遺産条約)に基づき、文化遺産、自然遺産、両方の性質を持つ複合遺産が登録される。
  今年7月、和歌山、奈良、三重の3県にまたがる「紀伊山地の霊場と参詣道(さんけいみち)」が新たに文化遺産として登録された。高野山、吉野・大峯、熊野三山の3霊場と、これらを結ぶ参詣道に加え、金剛峰寺、金峯山寺、熊野本宮大社などの歴史的建造物と、沿道の原生林などの自然が融合して独特の景観を作り出している。
  国内の世界遺産はこれで12件。うち5件が関西にあり、観光振興に期待が寄せられている。他の関西の世界遺産は次の通り。(登録年順)  法隆寺地域の仏教建造物(奈良県)▽姫路城(兵庫県)▽古都京都の文化財(京都府、滋賀県)▽古都奈良の文化財(奈良県)

人物略歴

井戸敏三兵庫県知事(いど・としぞう)
  兵庫県新宮町出身。東大卒。旧自治省税務・行政・財務各局などを経て95年官房審議官、96年に兵庫県副知事。01年初当選。現在1期目。59歳。
太田房江大阪府知事(おおた・ふさえ)
  広島県呉市出身。東大卒。旧通産省近畿通産局総務企画部長、岡山県副知事、通産省官房審議官などを経て00年2月、初当選。現在2期目。53歳。
木村良樹和歌山県知事(きむら・よしき)
  大阪府池田市出身。京大卒。旧自治省入省。和歌山県総務部長、同省財政局指導課長、大阪府副知事などを経て00年、初当選。現在2期目。52歳。
山田啓二京都府知事(やまだ・けいじ)
  兵庫県洲本市出身。東大卒。旧自治省行政局行政課長補佐、内閣法制局参事官、京都府副知事を経て02年4月、初当選。現在1期目。50歳。
国松善次滋賀県知事(くにまつ・よしつぐ)
  滋賀県栗東市出身。大阪府庁入庁後、66年に中央大法学部を卒業。76年に滋賀県庁に移り、総務部長など歴任。98年初当選、現在2期目。66歳。
柿本善也奈良県知事(かきもと・よしや)
  奈良県大和高田市出身。東大卒。旧自治省自治大学校長、副知事などを経て現職。現在4期目。近畿ブロック知事会長などを歴任。66歳。

お問い合わせ

知事直轄組織広報課

京都市上京区下立売通新町西入薮ノ内町

ファックス:075-414-4075

koho@pref.kyoto.lg.jp

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

このページの情報は役に立ちましたか?

このページの情報は見つけやすかったですか?