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いよいよお別れを言う時が参りました。京都に参りまして19年、そして知事として16年、職員の皆様、また、村田議長はじめ府議会議員の皆様、市町村長の皆様、市町村議会議員の皆様、さらには関係団体の皆様、府のOBの皆様、本当にお世話になりました。
時の流れというのはこれは止めることはできませんし、人の一生も留まることは許されません。私は知事になったときに最初に考えたのは、「辞めるときだけは間違いたくないな」ということでした。19年前の8月16日、送り火の日に、私は一人で京都駅に降り立ちました。あいさつを済ませて、その日は、ホテルの屋上で送り火を一人で眺めておりました。このときのことは、私は一生忘れることはできないと思います。この歴史と伝統に満ちた都で、本当にちゃんとやることができるのだろうか。誰も知る人もいない中で、誇り高きこの地で、京都で、私は受け入れてもらえるんだろうかという、本当に不安いっぱいの日でありました。
そして、2年半後、府議会の皆様をはじめ多くの皆様に推され、知事選挙に出馬することになりました。京都が私のふるさとになる、不安が安心に変わったときでありました。不安の中で過ごした日々が、本当に大勢の皆様に知事に出ろと言われた時に、認めていただいたんだという、その思いだけで出させていただきました。
しかし、新しい立場では、もはや自分ができるのかと、不安に思うことも許されない立場になってしまいました。知事選の後に、実は一通のお手紙をいただきました。私の勝利を願って、病身を押して投票所に足を運んでいただいた方が、その夜に倒れられて、そして、「山田さん大丈夫か」、と言いながら亡くなったという手紙でありました。私は自分を選んでいただいた府民の皆様の選択が、絶対に間違いではなかった、そのことを証明していかなかればならないと思いました。自分の限られた能力の中でできることは、先ほどお話がありましたように、真っ先に現場に行くこと、そう思い込んで職員の皆様には、大変ご迷惑をおかけしたと思いますけれども、鳥インフルや災害の時にも先頭を切って現場に駆けつけさせていただきました。
府民の皆様とともに進んでいかなければならない。和ぃ和ぃミーティングも200回を超える形になりました。それだけに、選んでいただいた府民の皆様の信頼に、ある程度ご満足はいただけないかもしれませんけれども、応えることができたと自分で思った時には、退け時は誤りたくないという思いは、年々募るばかりでございました。
多くの災害に見舞われましたけれども、2004年京都府北部を襲った台風23号、就任2年目の私が現場に駆けつけた時に、「偉いさんが何しに来たんだ」、その言葉を至るところで投げつけられました。歯を食いしばった日々でありました。それから10年、また北部を災害が襲いました。駆けつけた私に投げかけられたのは、「知事何とかしてくれ」、という助けを求める声でした。なんで非難されないのかなと、なんで怒られないのかなと、まだやらなければならないと決意をした時でありました。
そして今、こうしてお別れの言葉を述べております。京都に来た時には全く考えもしなかったような大勢の方々にお別れに来ていただいております。こんな幸せな別れは予想すらできませんでした。もう信じられない思いであります。勇退を表明して以来、至るところで「ご苦労様でした」と声をかけていただきました。東日本の大震災の避難者の皆様から、感謝の寄せ書きをいただきました。子ども食堂の方から、感謝の言葉をいただきました。街角で知らない方々から、声をかけていただきました。「ご苦労様」、これが私にとっての金メダルであります。私の金メダルであります。そして、今日お集まりいただいた方々、皆様が私の16年の知事としての人生であります。皆様との絆が私の人生であります。
私が今日、府庁を去っても、私と府政をともにした皆様が残ります。皆様と蒔いた種が芽を出します。荒巻知事が蒔かれた種を、私は必死に育ててまいりました。そして、その種は洪水にも夏の暑さにも耐えて、花をつけ、実をつけていただきました。それなら、実は大地に戻り、新しい芽をつけなければなりません。私の役目は終わりました。でも、京都府政は今日も明日も変わりなく続きます。本当は私の見送りのためにですね、皆様の手を止めてもらうのはいけないことかもしれません。でも、16年に1回であります。お許しをいただきたいと思います。
月曜日から新しい知事が参ります。西脇知事が来られます。この春から新しい府政が始まります。でも、彼が育てるのは、長い歴史の中で皆様が蒔いてきた種であり、そして、西脇知事も休むことなく、新しい種を蒔き続けることだと思います。多くの課題、過疎高齢化の問題や格差の問題、インフラを生かした府民生活の構築、府政は留まることを許されません。府民の皆様のために、府政はさらに新しい歴史を紡ぐことでしょう。その長い歴史をつなぐことができたことを誇りに、私は去ることができます。皆様もどうか健康に注意をして、お互いに尊重し、ともに支え合いながら、共生社会をつくりあげていただきたいと思います。
皆様と過ごした日々を糧に、私も新たな挑戦に入ります。「挑戦なくして前進はなし」、言い続けた言葉を、またこれからも皆様とともに続けていきたいと思います。そして、皆様と過ごした日々を皆様と一緒に積み上げてきた仕事を誇りとして、支えとして、そして、その幸せを噛みしめることができる、そのことを胸に抱きながら、お別れを申し上げたいと思います。皆様本当にありがとうございました。
府民の皆様本当にありがとうございました。
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