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更新日:2021年8月4日

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舞鶴かき小屋の物語

※この記事の内容は2021年7月16日時点のものです。

日差しが強くなった京都舞鶴の漁港に立ち込めるかぐわしい煙。地元の若手漁師らが経営する海鮮バーベキュー店から流れてくる。大きな岩がきや高級二枚貝のとり貝が炭で焼かれる匂いだ。網の上の食材はすべてとれたての地元海産物で、漁獲した漁師が自ら接客して自慢の海の幸でもてなす。
 

漁師が自慢の海の幸でもてなし

その店は「舞鶴湾かき小屋・美味星(おいすたぁ)」という。

冬は全国でも珍しい天然マガキのかき小屋として営業。近畿園や中国地方からも客が訪れる評判の店だ。夏は店の外でブランド水産物の「丹後の海育成岩がき」や「丹後とり貝」などのバーベキュー料理でもてなす。いずれも季節限定で週末のみの営業だが毎年、計6千人余りが訪れる。


 

天然マガキに付加価値を

舞鶴のかき小屋は冬の天然マガキから始まった。創業は2014年1月。素潜り漁をする漁師グループが自ら海に潜って獲ってきた天然マガキに付加価値をつけて売り出そうと始めた。
漁業用倉庫を店舗に改修し、店には蓋付きの大きな鉄板を備えたテーブルを導入した。天然マガキの蒸し焼き料理を出すかき小屋は全国で希少な存在だった。


肉厚で味が濃厚な舞鶴湾の天然マガキ

スタッフは若手の漁師が中心。素潜りで漁獲したサザエ、アワビ、ナマコなどを地方卸売市場に出荷することで収入を得ているが、天然マガキは出荷量が一定量を超えると値崩れを起こし、売れなくなる。
かき小屋代表の濱内喜久男さんは、「漁師の我々は獲ってきたマガキを市場に出すだけ。舞鶴湾の天然モノは、こんなにうまいのに安く取引され、歯がゆかった」と当時を振り返る。
入り組んだ形状の舞鶴湾は有事の際、船舶の避難港に指定されているほど穏やかな良港だ。三方を山に囲まれミネラルを含んだ清水が湾に流れ込むため、肉厚で味が濃厚なカキが育つ。
しかし毎年、売り切ることができない。かき小屋の広報を担当する北村俊雄さんは「カキが市場を経由し魚屋で売られたその後を知りたかった」と回想する。

そこで2003年から市民と直接触れ合う「昼市」を始める。冬から春の期間に月1回、漁港の荷さばき所で市をはり、対面販売して消費者のニーズを探った。5年ほど経ってから七輪を置くようになり、その場で魚介の炭火焼きを楽しむ人が多かった。
中でも天然マガキを志向する人が多いことが分かった。漁師らは早速、行動に移す。マガキ専門の商社に相談し直接、カキ産地の宮城まで足を運んで視察。現地の店の豪快な鉄板焼き料理をひと目で気に入り、かき小屋の経営に踏み切った。

珍しい天然マガキのかき小屋という話題性でメディアが注目し、市の広報や仲間の宣伝もあって初年度から約2500人が来店した。味には自信があった。「ここのを食べたらほかのカキは食べられない」。そんな賛辞を受けた。北村さんは「私が知りたかったお客さんからの直接の言葉。それが今、皆の励みになっている」。
今では当たり前となったスタッフによる〝殻むき〟は、いつのまにか定着したサービスだ。テーブルごとにスタッフがつき、来店客の目の前でマガキを蒸し上げ、食べやすいようにカキ殻を開ける。こうしたほかにはない〝おもてなし〟も受けてリピーターを増やしていった。
 

海鮮バーベキューも


育成岩がき(左)と丹後とり貝

2015年の夏からは、ブランド化を進める育成岩がきなどを売り出すため、店の屋外で海鮮バーベキュー店を始める。アワビやサザエのほか、近年は高級食材として知られる丹後とり貝もメニューに加えた。
育成岩がきは舞鶴湾のほか、宮津市の栗田湾、京丹後市の久美浜湾などの栄養豊富な内湾で約3年、育てられる。天然モノに比べ実入りが大きく、濃厚でクリーミーな味わいが特徴だ。
丹後とり貝も京都北部の内湾で稚貝から約1年かけて丁寧に育成。京都府のブランドトリガイとして名高い。一般的なトリガイに比べて大型で甘みもある。高級食材として、京阪神を始め首都圏にも出荷されている。江戸前のすし屋では、一貫数千円の値が付けられている。

夏のかき小屋では目前に広がる漁港を借景に、こうした京都のブランド水産物などを豪快に炭火で焼いて提供。2020年はコロナ禍にもかかわらず大盛況で、過去最高の約3千人が来店。2時間半待つ客もいた。
来店客は冬のかき小屋ファンが多い。コロナ禍の前は、SNSなどを通じて評判を知った中国や韓国の観光客も目立った。店長の秋田真吾さんは「このまま少しずつお客さんが増えれば。これからも変わらず、新鮮な魚介を正直な値段で提供していきたい」と話す。
 

舞鶴湾は日本一の海

現在、かき小屋は20~50代の13人で切り盛りする。冬は約4カ月間、夏は約3カ月間の営業だが、メンバーの収入が安定したという。夏場の閑散期には生活の支えとなっている。冬はズワイガニ漁にも出るメンバーは「舞鶴の天然マガキはここでしか獲れず、ここでしか味わえない」と強みを話す。
慣れない飲食店で働くことに苦労もあった。でも皆がそれぞれ、その苦労を楽しんでいるという。濱内代表は「舞鶴湾は日本一の海。かき小屋では、そんな日本一の海で獲れる魚介を知ってもらう素地ができた。これからもこの仲間で楽しく支え合いながら現状を維持し、更に知名度を上げて全国の人に舞鶴のカキを知ってもらいたい」と話している。

かき小屋は土・日曜、祝日に営業。海鮮バーベキュー店は岩がきの実入りが良い8月下旬ごろまで営業する。営業時間は土曜が午前11時~午後9時。日曜・祝日は午後5時まで。団体(8人以上)で予約すれば平日も利用できる。冬のかき小屋は12月ごろに開業する予定。詳細はホームページで。

 

特集記事「京都北部で海のミルク「岩がき」「真牡蠣」をランチで食す」もご覧ください。

京都府北部「海の京都」は育成の牡蠣で有名な地域です。
5月~8月は生食で美味な大型の岩がき、冬期は炭火焼、蒸し焼き等で美味な真牡蠣(マガキ)を召し上がることができます。
牡蠣は、舞鶴市(舞鶴湾)、京丹後市(久美浜湾)、宮津市(宮津湾・栗田湾)、伊根町(伊根湾)で育成養殖が盛んで、年月をかけて育てられ牡蠣の品質は非常に高く全国へ出荷されたり、地元の飲食店舗や宿泊施設で提供されています。

 


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