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更新日:2021年12月1日

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由良川のサケ放流


 

郷土愛を育みたい

生まれた故郷の川に産卵のため回帰する習性があるサケ。日本海へとつながる由良川は、放流したサケが遡上する国内最南端の大河。その流域の中でも最上流地点に位置するのが綾部市です。

1979年から京都府はサケ資源増殖を目的に、戻ってきたサケを捕獲、採卵し、放流する事業に取り組んできました。しかし漁獲高の減少などで事業は2007年に終了。以降、綾部、福知山、舞鶴の有志で組織する「由良川サケ環境保全実行委員会(事務局、綾部市)」が引き継ぎました。住民が自分たちで育てたサケの稚魚を由良川に放流して遡上させ「サケの一生」を学ぶことで、故郷を愛する「ふるさと文化」を育てていきたいと思ったからです。「由良川への環境意識を高め郷土愛を育んでほしい」そんな使命感を持ち、コロナ禍でも事業を継続しています。


一斉放流を待つ稚魚


放流会場(綾部市青野町の白瀬橋付近)
 

家庭で育てたサケを放流しよう

現在の実行委員会の取り組みは、サケを自宅などで育てる飼育参加者らに支えられています。参加会費は1口1,000円。1月上旬、発眼卵(卵の中に黒い目が見える状態)と呼ばれるサケの卵100粒を受け取ります。そこから各自用意した水槽で孵化させ、一斉放流の日まで育てていきます。

「飼育は思ったよりも簡単」とパンフレットでも紹介されていますが、担当者の説明を聞いてみると、初心者にもチャレンジできそうです。

まずは準備から。水槽やろ過装置、ポンプ一式、水温計、底に敷く小石などを水洗いし日光消毒します。水温10度前後を保つことが大切で、水槽は発砲スチロール箱でも代用できるようです。

 

飼育の流れは以下のとおりです。

●毎年1月上旬頃、発眼卵が配布されます。
●卵を受け取ったら、水槽の産卵用ザルの中にそっと収容します。
●1~2週間を過ぎると孵化が始まります。
●孵化後18~25日経過すると、栄養分を持つ「さいのう」を腹に持つ仔魚に。
●さいのうを吸収しスマートな姿で泳ぎ出すと、餌を与え始めます。
●3月上旬頃、成長した稚魚を由良川に一斉放流します。

 

また、飼育はできないけど、事業を支えたいという「鮭サポーター」も随時募集しています。放流事業に必要な経費を負担し(1口1,000円)、一斉放流では実行委員会が育てたサケを放流します。


飼育を始めて2週間ほど経ち、孵化が始まった頃


朱色の袋「さいのう」を腹に持つ仔魚たち

福知山市猪崎の市児童科学館は毎年、約200粒の卵を入れた水槽を置いて飼育し、来場者が「卵➡仔魚➡稚魚➡幼魚」と成長する様子を観察できるようにしている。
 

子どもたちに紙芝居でサケの一生を紹介

事業の一環で、同実行委員会は飼育期間中、綾部市内外の保育園や幼稚園などで「サケのお話会」を開いています。子どもたちにサケのことをよく知ってもらうことが目的です。オリジナルの紙芝居『ゆら川のサーモくん』を読み聞かせ、園児たちは由良川を出てから帰ってくるまでのサケの一生について楽しく学びます。

主催者によると、放流時、サケを激励する「帰ってこいよ~」の声に混じって「流したらいかん」などと泣き叫ぶ子どもたちの声も聞こえてくるそうです。離れるのが寂しくなるほど、愛情を込めて小さな命を見守ってくれていたのでしょうね。


「サケのお話会」に参加した園児たち


放流会場での紙芝居の様子
 

由良川環境保全と郷土愛のシンボルに

2021年は福知山、綾部など京都府北部を中心にした約250の個人・団体のみなさんがサケの卵を育てました。そして同年3月7日には、綾部市青野町の白瀬橋近くで、家族連れなど約100人が5万匹のサケの稚魚を放流しました。

由良川に旅立っていったのは体長5センチほどに育った稚魚たち。この後、オホーツク海などを回遊して、3、4年後には体長70センチほどに成長しまた由良川に帰ってきます。帰還するのは、1,000匹に1匹とのこと。放流を通して、流域の環境意識を高め、きれいな由良川を守っていく。子どもたちの郷土愛を育んでいく。サケの放流事業は、郷土愛と環境保全のシンボルにもなっています。


一斉放流の様子


由良川を遡上し、河川の流水を制御する堰(せき)を飛び越えるサケ
(綾部市栗町で10月末頃撮影)

実行委員会の佐々木幹夫会長は「自立して放流事業を継続するために、飼育先を500カ所以上に増やしたい」と話しています。京都市内や遠くは奈良からの申し込みもあるようですが、体験学習の一つとして孫にサケの卵を贈る地元の高齢者も多いそうです。「故郷を愛し、心豊かに成長してほしい」そんな願いを込めて、子どもと一緒に家庭での飼育にチャレンジしてみるのもいいですね。
 

幼少時代にサケの放流を体験し、進学などで地元を離れた若者が美しい川を見てふと地元を懐かしく思い出す。そんな若者たちが地元に戻り、今度は子どもたちに放流体験やサケ回帰のロマンを伝える立場になる。そんな幸せな連鎖が増えていきますように。


由良川にかかる白瀬橋から下流を望む
 

■申し込み・問い合わせ先
綾部サケ放流実行委員会0773-42-2222
舞鶴サケ放流実行委員会0773-82-5003
http://sasaki-33.sakura.ne.jp/sake.htm
 

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