京都で働きたい医師・医学生の方へ 京都で暮らし、京都で築くメディカルキャリア
京都の救急
KMCCキャリアパスのススメ
救急座談会~京都がキャンパス!~
2012年3月対談
― 学び、体験し、京都にしかないチャンスを生かしてほしい。
司会救命救急センター京都第一赤十字病院副院長 池田 栄人先生 |
対談者大学京都大学大学院医学研究科初期診療・救急医学分野 教授 小池 薫先生 |
対談者大学京都府立医科大学救急医療学教室 教授 太田 凡先生 |
対談者基幹病院第二岡本総合病院 副院長救急・外科部長 清水 義博先生 |
なぜ、救急医になったのか-それぞれの理由
池田
総合診療医でもある救急医は緊急を要する病態や疾病、外傷に対して適切な対応が求められます。その救急科専門医の指定施設は現在京都府内に3つの救命センター、2つの大学、10の基幹病院があり、これらの病院が連携し、できるだけ早期に救急科専門医の資格が取得できるようサポートするシステムがKMCCキャリアパス。そのプログラムの内容や救急医の魅力について、それぞれの立場からお話していただきますが、最初に各先生方に救急医になられた理由をお伺いします。
小池
私が卒業した頃は内科や外科医が救急医療もやっていた時代でした。がんの外科医を数年やり、ちょっと悶々としていた時、当時、日本医科大学の救急医学の大御所・山本保博助教授(当時)に出会って方向転換したのです。一つのことを狭く、深くやるより、大きく、広くやる救急医療が私の性に合っていると思ったからです。
太田
医者になろうと決めて以来、誰にでも「どうしましたか?」と温かく患者に向かえる医師になりたいと思っていました。大学卒業前、一番近いように思えた内科学教室に入局し、そこから京都第二赤十字病院の救命救急センターに赴任させていただき、大学院を挟み8年半、救急の基礎を学びました。そこで勤務を続けるうち、重症救急患者に限らず軽症患者も、成人に限らず小児も、疾病に限らず外傷もと、どんな救急患者さんが目の前に来ても「大丈夫ですか」と診療を開始できる救急医になりたいという思いが強くなりました。そのチャンスを、湘南鎌倉総合病院でいただくことができ、どんな患者さんでも断らずに引き受ける病院の方針にも強く惹かれ、総合診療的な救急医として仕事を続けていく思いを固めました。
清水
私も急病人を助け、命を救うことができる医師になりたくて医師を志しましたが、今のように救急科がなく、当時大外科制であった府立医大の第二外科に進みました。研修後、宇治の病院に来て、救急の何たるかも学んでいない時にいきなり大きな外傷の患者が運ばれてきて、びっくりしたわけです。この人を誰が救うのかと・・・。もう、ここで学んでいくしかないと思いました。この地域にはきづ川病院や徳洲会病院などの救急病院があり、地域の中で育てられました。
池田
私もがんの外科医を15年ほどやってきて、手術ばかりやっているうちに閉塞感を感じ始めました。そんな時、救急をやる期間があり、やり甲斐を感じたのが動機です。定型的な診療から解放された感じでした。
京都の救急医療の魅力
池田
医師も多く恵まれた医療環境の京都ですが、救急医療に関してはいかがですか?
小池
京都の大きな特徴は皆が一丸となっていることですね。ここ数年、京都の救急を盛り上げよう、そのためには医師も学生も大学や病院の枠を大きく越えて自由に人的交流し、医師としてのキャリアアップにつなげようという気運が高まっています。こんなまちは日本中探しても京都だけではないでしょうか? そこが京都で研修する魅力ですね。
太田
いい人間関係が保たれていますから仕事がしやすい。特に、東北大学から小池先生が京都に来られたことは、京都の救急医療にとって画期的でした。
清水
小池先生が来られてからは府全域でいろんな先生に相談できる雰囲気ができ、その良好なムードが大学を中心に広がっていったのですね。
池田
全く分け隔てをしないのが京都の救急の特徴です。京都のこの環境を生かして救急医としてのキャリアを積んでもらおうと企画したのがキャリアパスプログラムで、プログラムを作成するにあたり、救急医療の定義を「救急科専門医とは総合診療医である」と明確にうたっています。命に関わる状態や疾病、外傷に対して適切な対応ができ、初期診療や処置ができること。専門医や専門施設のコンサルテーションが迅速かつ適切にできることです。とはいえ、救急科専門医の資格取得は大変難しい。それを皆で協力して、取得までのステップアップや修了後のサポートもしていこうというのが趣旨で、プログラムは趣旨に沿った内容になっています。
京都の救急科キャリアパスモデルの特徴と今後の方向
池田
大学の研究室との関係はどうなっていますか?
小池
京大の私の教室では「何をやってもいい」のが基本。つまり自由なんです。京大のさまざまな臨床教室や基礎医学の教室で研究することも、また国内外の他大学への留学も可能で、現実に他の大学院に籍を移すことも行われています。もちろん先方の研究室の都合を問い合わせる必要はあります。
池田
大学というスケールメリットを大いに活用できるということですね。
太田
私たちの教室の研究テーマは、救急医療に関する医学教育とよりよい救急医療システムの構築です。京都の救急医療の使命は、日本一ないし世界一の救急医療を実現することだと思っています。なぜなら、まず、救急医療に携わる医師の横のつながりがとても良い。そして、すでに医師数も多い。さらに、京都大学、京都府立医科大学と歴史ある2校の医学部から、毎年医学生が卒業しています。また、熱意をもって卒後医学教育や救急医療体制のバックアップをしてくださる先進的な京都府医師会の存在があります。京都で日本一の救急医療を実践することは、私たちの目標ではなく使命です。今度のプログラムは、その実現のためのものでもあります。救急医としての研修に関して言えば、医療環境の異なる市域と府域で救急医としてのトレーニングができるのも大きなメリットです。
清水
京都全体がキャンパスで、安心できる環境だということを実感します。基幹病院の役割は地域の医療を地域完結型で支えること。地域で解決し、救急で路頭に迷わすようなことは決してしないことです。もちろん、人命のために高次の救命センターになら転送することはありますが、決してたらい回しにはしないという志をもって、宇治市は4分以内で運びます。これは日本でもトップレベルで、地域の病院間連携がうまくいっている証です。救命士とのいい関係ができているからこそ実現できるのです。医師が迅速かつ的確な対応をする現場は、目から鱗のような体験ができます。
池田
府内にある15の救急科専門医指定施設とさらに救急科専門医のいる2病院も加えることで、地域での救急医療が経験できるのもこのプログラムのよさですね。大学で研究、府内の多様な地域での研修、さらには都会と地域の医療のあり方を身を以て体験できる。
小池
後期研修医になる時にまだ道が決まっていない人がいますが、その場合、私たちの教室に籍を置き、教室からの派遣という形で大学や他病院のさまざまな診療科を経験することもウエルカム。個人では難しいことですが、私たちが後ろ盾になれば受け入れ側も安心することができます。幅広く横断的に研修することを目的としたプログラムですから、自分が進むべき専門診療科を決定した医師以外は、すべて引き受けるくらいの意識が組み込まれた内容になっています。
池田
いい医師になろう、いい医療をしたい、その志さえあればいろんなことをお世話させてもらおうというもので、この理念そのものが総合診療の最終的な形態でもあると思っています。
それぞれの立場から救急医を目指す若手医師へ
太田
総合的で緊急時に臨機応変の対応ができる能力を養うためにいろいろな場所が用意されていますから、いろんな所でチャンスを活かしてもらえたらと思っています。仕事が好きで、目の前の患者さんを大切にする気持ち、周りの人と仲良くやる気持ちのある人なら、ぜひ、仲間になってほしいと思っています。
清水
専門外であっても重症患者が来たら「よし、診よう」というハートのある医師の行動も見てほしい。救急医療は命の大切さを考える現場で、命を救うために何が大切なのかが見えてきて、やがて医師としてのリーダーシップを養えます。マネージメントができ、タクトの振れる人間性を養うことまでカリキュラムに入っています。学びに来るというのではなく、何をしたいのかを見つけて魅力的な領域にしていってほしいと願っています。
小池
小医、中医、大医という言葉がありますね。小医は臓器や疾患だけを診る、中医は体全体を診る、そして大医は人の心や社会も含めて診るとするならば、私たちが目指すのは大医。本来の医師としてのあり方をもう一度見直そうということです。そして、自分だけ幸せになればいいという小欲でなく、周りのすべての人も幸せにしようという大欲を持って京都でいっしょにやっていきましょうと呼びかけたいです。
太田
まず、生命の危機に瀕している目の前の患者さんの命を救うことは救急医としての当然のやり甲斐です。それだけではなく、地域を守ること。すなわち、どんな患者さんにでも「大丈夫ですか? どうされました?」と救急診療を引き受けることも救急医としての魅力です。重症診療でなくとも、患者さんの不安を理解し、少しでも和らげること、これは救急医の大切な役割です。そして、小池先生が仰られたような大医の役割、つまり、救急医療を提供する者、それを受ける者、そして救急医療を支える人々が笑い合って手をつなげるような仕組みを考えていくことも、救急医のやり甲斐であり魅力だと思っています。
池田
どんなシチュエーションでも診るという救急医療は、医師本来の目的から考えても、すばらしいものだと思います。京都にはその救急医療の理想を実現させる武器も環境もあります。ぜひ、京都の救急医療をよくするために、このプログラムに参加していただきたいと願っています。
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資格取得が難しい救急科専門医。 KMCCでは、その資格取得をサポートするため、キャリアパスを作成。 平成24年9月から募集開始します。
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