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青森県産業技術センターは、県産業の振興や発展を目指し、平成21年4月に青森県内唯一の地方独立行政法人の研究機関として発足した「工業」「農林」「水産」「食品加工」の4部門から成る13研究所を統合した総合的な研究機関です。
平成23年度、同産業技術センター内に「青森県6次産業化サポートセンター」を開設しましたが、研究機関にある『6次産業化サポートセンター』としての機能をフル活用しながら、6次産業化に取り組む農林漁業者や関係団体の技術開発から商品づくりまで、多様なニーズに対してきめ細かく支援を行っています。
また、農業部門で開発した人工衛星による画像を、工業部門がスマートフォンを活用して、現場で使えるようにした事例など、部門を超えた成果があるとのことでした。
サポートセンターでは相談窓口を開設していますが、相談内容によってはアドバイザーを無料で派遣し、6次産業化につながる案件の発掘から事業化までを総合的に支援しているほか、6次産業化をしたいと考える人がいれば、まずは毎月行われている「ABC相談会」へと案内・誘導しているとのことでした。
青森県の6次産業化・地産地消法に基づく事業計画の認定件数は、全国でもトップクラスであり、6次産業化を推進するという当初の目的を達成したと考えられ、今後は、認定事業者の事業計画達成に向けた商品開発や販路拡大など、その後のフォローアップ支援を強化し、自立を促していくことがより一層必要になるとのことでした。
あおもり農商工連携助成事業(農商工連携ファンド)は、中小企業基盤整備機構の融資対象事業で、同技術センターが青森県と県内の金融機関の協力を得て、農商工連携型地域中小企業応援ファンド事業により造成した基金(総額28億円)の運用益を活用して事業者等を支援する事業で、各都道府県ごとに制度設計は異なりますが、同県では試作経費やPRのための製品の作成などに幅広く助成しているとのことでした。
なお、マーケティング企画も研究しており、特産品であるりんごについては、多くの商品開発と販路拡大について支援が行われています。
また、同技術センターが歳月をかけて開発したお米が、青森県初の特A米となり「青天の霹靂」の名で、売り出されたとのことでした。
概要説明を聴取した後、センターの敷地内にある植物工場を視察
青森県の3分の2は森林で、その3分の2が国有林であり、県内には世界自然遺産の白神山地を有しています。樹種はヒバを始め、ブナ、スギ、アカマツ、クロマツなどバリエーションが豊富で、特に県の木に指定されたヒバは全国の蓄積の8割以上を占めています。
同県内では、平成27年度に六戸町の大型木材加工施設や平川市の木質バイオマス発電施設が操業を始め、新たな木材需要の創出による県内の林業振興が期待されていますが、木材需要の高まりに対応して伐採量が増加する一方で、伐採後の再造林が放棄される森林が今後増加することが懸念されています。
同県では、「青い森再造林推進プラン」を平成27年1月に策定し、当該プランに基づき、再造林推進のための調査や放棄地の実態把握、低コスト再造林に向けた検討を行うため、県の重点事業として、「次世代につなぐ青い森再造林推進事業」を創設し、低コスト化による森林所有者の造林意欲の向上と再造林放棄地の解消に向けた取組を進めています。
とりわけ、再造林の低コスト化を進めるため、冬季に積雪する寒冷地であるといった同県の地理的・自然的条件に適した伐採・造林の一貫作業システムの導入手法等を検討しています。
同システムの主な流れは、木を伐採した時に用いた機械を使って地こしらえ作業をするとともに、丸太を搬出する車両を使って苗木の運搬も行い、取扱いしやすいコンテナ苗で植栽を行います。機械を使うことで、省力化を図ることができますが、コンテナ苗は生産コストがかかるという課題があり、そこは量産でカバーしていきたいと考えているとのことです。森林総合研究所の東北支所が中心となって研究を進めており、今後現地実証を行っていくとのことでした。
なお、同県の森林・林業施策では、津波被害によるクロマツの赤枯れ被害が発生し、海岸防災林の復旧作業に平成32年度まで取り組む予定であるほか、北海道と青森県では従来みられなかった松くい虫被害が近年みられるようになったことなどの懸案事項があるとのことでした。
概要説明を聴取
北海道立漁業研修所は平成9年4月、道内の3研修所を1箇所に集約し、総合的な教育・研修機関として開設されました。同研修所のある鹿部町は人口約4千人の漁村で、近くには水産試験場があります。
北海道の平成25年の漁業生産高は1,306千トンで、全国の27%を占めます。漁業就業者数は29,652人です。近年、地球温暖化の影響のためか、鮭やホタテは減って、イカも獲れなくなったとのことでした。水揚げ量については、オホーツク海側が日本海側の2倍ですが、組合員一人当たりの生産額は5倍であり、水揚げ量が如実に反映されるとのことです。また、就業者が減っても一人当たりの水揚げ額が増える訳ではなく、道内では毎年約200人が新規に就業する一方で、約1,000人が引退している状況とのことです。
漁業を取り巻く環境が厳しい中、同研修所は、漁業研修や就業相談など、漁業就業者確保に向けた取組を実施しています。
研修内容のうち、「総合研修」は、将来の漁村のリーダーとなろうとする漁業後継者や漁業を志す者が、漁業に必要な知識と技術を学ぶ研修です。「つくり育てる漁業技術研修」は、漁業就業者に対し、資源管理や栽培漁業等に関する最新の知識や技術を修得させ、また、漁村における指導的役割を果たそうとする者に対し、指導に必要な知識及び技術を習得させることを目的とした研修です。「漁業就業促進研修」は、漁業就業者が、経営改善等を図るために必要な資格を取得するための研修です。
同研修所の寄宿舎「海友寮」は、50名まで収容でき、実習船2隻(はぐくみ1号、2号)は操船実習、漁労実習等に使用されています。
研修所で教えられることは、基礎の基礎だけにとどまるため、研修生は卒業後、漁師の下で経験を積んでいくことになるとのことでした。
また、研修所では漁業経営についての研修も実施していますが、漁業が経営的に成り立つ施策を打っていく必要があるとのことでした。
概要説明を聴取した後、研修所内を視察(潜水実習室(水深4.5メートルプール))
函館市の観光客は、平成23年度まで減少傾向にありましたが、平成24年度からインバウンドによる回復がみられ、平成27年度における観光入込客数は約495万人でした。北海道新幹線の開業に向け、マスメディア等により盛んに函館が紹介されたことによる効果に加え、収容人数5千人の多目的施設「函館アリーナ」がオープンしたことや、引き続き外国人観光客も好調であったことから、観光入込客数は前年度を上回りました。
また、各種機関の調査では、北海道新幹線の開業後も好調であるとみられるとのことでした。
同市では、観光などで函館を訪れる交流人口を増やした地域振興を期待しており、平成26年度から平成35年度まで10年間の計画である函館市観光基本計画の基本方針では、「交流・にぎわいの創出」「おもてなし・満足度の向上」「国際化の推進」の3つを掲げています。またキーワードは、「函館ブランド」「プロモーション」「ホスピタリティ」「もう1泊したいまち」「MICE」の5つで、計画の最終年度にあたる平成35年度の観光入込客数の目標では、550万人を目指しています。
平成28年3月26日、北海道新幹線の「新青森-新函館北斗」間が開業しましたが、今後、2030年度末までに札幌まで延伸される予定です。
北海道新幹線の開業は、函館観光にとって、「第二の開港」ともいうべき一大転機であり、新たな時代を築くための出発点となります。
同市は、今後、まちの魅力を高める観光ブランド力の強化や観光客受入体制の整備を行っていき、まち全体を公園のような、歩いて楽しいまち並みとする「ガーデンシティ構想」を進めるほか、観光ボランティアによるおもてなしや観光案内の充実など、ホスピタリティの向上を図り、花壇やイルミネーションの充実、Wi-fi環境の整備などを図るとのことで、通年型観光を目指し、広域連携も強化していくとのことでした。
また、視察を行った「はこだてみらい館」は、平成28年10月にJR函館駅前にオープンした中心市街地の賑わい創出を図ることを目的とした施設で,観光交流に力を入れる同市において、先端的な技術などを活用した様々な体験や交流をする場を提供していました。
概要説明を聴取した後、はこだてみらい館を視察
函館は、対馬海流・リマン海流・親潮の3つの異なった海流が流れ込む恵まれた地理的・自然条件にあり、豊富な水産資源と水産・海洋分野の優れた学術研究機関や関連産業が集まる街です。
こうした地域の優位性をより高めようと、平成15年に「函館国際水産・海洋都市構想」が生まれ、国際的な水産・海洋に関する学術研究拠点都市を目指すことになりました。産学官が連携して、マリンサイエンス分野で世界をリードする研究成果や革新技術を生み出し、雇用の創出と産業経済の活性化に結びつけるねらいがあります。
この構想を推し進める母体として、平成21年4月、一般財団法人函館国際水産・海洋都市推進機構が設立され、函館市国際水産・海洋総合研究センターが平成26年に開所しました。
同センターは、函館市の函館国際水産・海洋都市構想のシンボルとしての役割を担う施設で、来館者も自由に見学できる大型の実験水槽や函館港が一望できる展望ロビー、海水を使用できる実習室や、学会の開催等を想定した会議室などを備えるほか、入居型の貸研究施設として、学術試験研究機関や民間企業が入居できる研究室を備えており、水産研究機関、北海道大学関係の研究機関、海藻研究機関、民間企業などの団体が入居しています。
隣接する岸壁には調査研究船が直接接岸でき、函館港外から直接採取した海水を水槽実験に使用することができるなど、水産・海洋分野の研究開発支援や産学官連携を促進しています。
函館市の魚は「イカ」で、現在、大型実験水槽ではスルメイカ育成の実験中とのことでした。現在はまだ研究成果を事業化できるところまでには至っていませんが、これから基礎研究だけでなく、魚群探知機などの有望な研究もあるので、これらを事業化していきたいと考えているとのことでした。
概要説明を聴取した後、センター内を視察(共用実験施設・共用ラボ)
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