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石川県の「能登の里山里海」は平成23年6月に、日本で初めて世界農業遺産に認定されました。認定を契機に様々な地域活性化の取り組みが進められています。
世界農業遺産とは、国連食糧農業機関(FAO)が平成14年に開始した取り組みで、農業の近代化が進む中で失われつつある伝統的な農業・農法をはじめ、農業と結びついた文化などが組み合わさり、ひとつの複合的な農業システムを構成している地域を認定し、その保全と持続的な活用を図るものです。
「能登の里山里海」が認定されるにあたり評価された点は、山の斜面や谷間を利用した水田などの独自の土地利用や海女漁などの伝統的な農林漁法、キリコ祭りなどの農林漁業と深く結びついた祭礼、棚田、間垣などの優れた里山景観、豊かな生物多様性、輪島塗や揚げ浜式製塩法などの伝統的な技術です。このように、古来の農法だけでなく、人々の日常生活や文化の観点も含めて「能登」という面的な広がりで認定されたことで、「元気な里山里海づくり」が加速したとのことです。
平成23年6月には、世界農業遺産の認定を活用した「能登の里山里海」を未来へ引き継ぐ取り組みを推進しようと、石川県、地元4市5町、農林漁業・商工・観光団体で構成された「『能登の里山里海』世界農業遺産活用実行委員会」が設立されました。実行委員会では、世界農業遺産に関連する認証制度として「未来につなげる『能登』の一品認定制度」を創設し、能登棚田米や奥能登揚げ浜塩など32品を認定されています。
また、高校生が能登の匠の知恵や技を取材する「聞き書き」という取り組みも実施されています。この取り組みは、名人の技術や知識をアーカイブとして残すだけでなく、高校生が自らの暮らす地域の農林漁業、伝統文化、祭礼について知り、誇りを持つきっかけになっているとのことです。
石川県の独自の取り組みとしては、地元7金融機関とともに、「いしかわ里山創成ファンド」(平成28年度から基金総額を120億円に増額し、名称を「いしかわ里山振興ファンド」に改称)を創設されました。これはファンドの運用益と企業等からの寄付金を加えた、年間約8,000万円を、里山里海に人の手を取り戻す生業創出の取組やイベントに対して資金的に支援をするという取り組みです。これまでに能登ブランド農産品の開発や、農家民宿の事業など146件が採択されています。
最後に、世界農業遺産に認定された一番の効果は、地元住民が、「当たり前」と思っていた地域の資源や暮らしに「光」をあて、地域の「宝」であることを再認識することができたこととのことです。そして、地域住民が地域に「生きる自信と誇り」を取り戻し、地域を活性化する動きを、実行委員会としても支えていきたいとのことでした。
関係者から概要等について説明を聴取
説明聴取後、現地を視察
石川県では、県の中心的な地場産業の一つである食品産業や伝統的工芸品産業において、国内需要の減少等を背景に、海外展開を目指す県内企業が増加しています。
こうしたことを背景に、同県では、平成16年に「国際ビジネスサポートデスク」を商工労働部産業政策課内に設置し、企業が国際ビジネスを行う上で直面する問題に対し、県の海外事務所や、JETRO金沢等との各種支援機関と連携し、ワンストップで対応されています。
主な支援内容は、現地展示会の開催、海外バイヤー招聘商談会の開催、専門家による相談対応、各種情報提供です。
現地展示会として、平成29年7月には、県主催でシンガポール市内において現地のバイヤーを集め、県内企業とのシンガポールビジネス商談会が実施されました。実施にあたっては、シンガポールに支店を有する北國銀行とも連携し、幅広いバイヤーに声掛けを行ったとのことです。また、商談会終了後も、同行のセールスやその後の県のフォローアップが実施されました。この商談会での成約件数は20件で、現在もフォローアップを継続していることから、成約件数は今後も増加する見込みとのことでした。
海外バイヤー招聘商談会は、海外のバイヤーを招聘し、県内企業を訪問する取り組みです。平成29年5月の海外バイヤー招聘商談会では、6件が成約し、その他にもバイヤーが高い関心を示し、商談継続中の案件が多数あるとのことでした。
専門家による相談対応では、県とアドバイザリー契約を結ぶ国際法律相談事務所によるアドバイスの提供などを実施されています。法律相談の他、海外事業経験の豊富な大手企業OB等を依頼のあった中小企業に派遣し、海外法規制等に対応するための具体的なアドバイスの提供などもされています。
また、海外の現地情報を得にくい中小企業に対して、県の海外事務所と連携した現地情報の提供などを実施されています。
こうした様々な取り組みにより、特に相談の多い食品産業や伝統工芸品産業に限ると、輸出を開始した企業数は過去5年で約2倍になっているとのことでした。
関係者から概要等について説明を聴取
同センターは平成22年4月に設置されて以降、鳥獣被害対策の現場対応の中心的役割を担っておられます。
被害対策には、野生鳥獣を「捕る」対策、野生鳥獣から「守る」対策、野生動物を「知る」対策を組み合わせ、関係機関と連携して取り組まれています。今回は、「知る」対策の中心である、鳥獣被害対策に携わる人材育成の取り組みについて調査しました。
同センターでは、被害対策を実施する範囲に応じた知識・技術を習得していくための各種研修を実施し、必要な人材を必要な場所に確保する体系的な人材育成をされています。
まず、平成20年から始められた研修では、集落ぐるみの被害対策に必要となる地域リーダーの育成に取り組まれました。この研修では、被害対策の現状と課題、関係法令の基礎などを学ぶとともに、生息状況の調査、被害防除技術の実習が行われました。これにより、多くの集落で鳥獣害に対する基本的な取り組みが浸透したそうです。
しかし、シカやサルによる広域的な被害が顕在化したため、平成23年からは地域の指導者を取りまとめて集落間の調整を行う人材が必要となったことから、地域対策指導者の育成に取り組まれました。この研修は、市町村職員やJA営農指導員、県職員などを対象に、生息状況調査、被害防除技術、集落環境診断法など現場における実習を中心に行われるとのことです。
さらに、多様化する鳥獣被害に対応するため、平成27年からは被害対策を総合的にマネジメントする専門技術者が必要となったことから、地域対策指導者からの情報に基づき、「捕る」「守る」「知る」対策を効果的に組み合わせた総合プランを作成できる高度専門技術者の育成に取り組まれています。
こうした人材育成の取り組みにより、被害対策の基本的認識と手法が県内関係者へ周知、統一されたこと。県、市町村職員などの対応レベルが標準化、継続したこと。また被害農業者・地域住民の対策意識が向上するという成果があったとのことです。
しかし、高度専門技術者の適正配置やスキルアップに課題もあるので、今後も更なる人材育成の強化を図っていきたいとのことでした。
関係者から概要等について説明を聴取
説明聴取後、施設を視察
秩父市と周辺の横瀬町、皆野町、長瀞町、小鹿野町は、人口減少の中、生活に必要な機能を分担して行政サービスを行うため、平成21年に総務省のプログラムである「ちちぶ定住自立圏」協定を結びました。平成24年2月にその中に観光を促進する組織として同観光公社が設立されました。
同観光公社は平成28年2月に、観光庁が募集する日本版DMOの第一回候補法人に登録されました。現在は、日本版DMOの登録に向けて、「観光地経営」の視点に立った観光地域づくりに取り組むとともに、登録要件である必須KPI(評価指数のこと。満足度、リピーター率、観光消費額、総宿泊者数)の調査等に取り組まれています。
同観光公社の行う主な事業は、民泊を利用した修学旅行誘致、広域レンタサイクル、着地型旅行商品の開発、地域ブランドの確立と特産品の販売促進、観光ガイドの推進などです。その中でも収益の大きい事業が民泊と広域レンタサイクル事業であり、民泊で年間約400万円、広域レンタサイクルで年間約300万円の収益があるとのことです。
民泊を利用した修学旅行誘致とは、地域の農家や一軒家を活用して修学旅行生等を受け入れる事業です。現在は204軒の登録があり、平成29年度は国内7校、海外10校の1,592人の生徒を受け入れる予定とのことです。この事業は収益があるだけでなく、交流人口が増え、地場産業の売り上げ向上にもつながるとのことです。
広域レンタサイクルは、借りた自転車を観光協会の持つ観光案内所などのサイクルスーテーション5カ所で乗り捨てることができます。自転車(110台)は同観光公社が購入し、各観光協会にレンタル業務を委託する形を取られており、収入は同観光公社と観光協会で折半されているとのことでした。
同観光公社では、こうした様々な事業を展開されていますが、実施にあたっては、なるべく地域外の企業への業務委託を避け、地域にお金を落とす仕組みを考えながら取り組んでいるとのことでした。
関係者から概要等について説明を聴取
説明聴取後、現地を視察
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