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ひきこもり状態が改善傾向にあり、一定の外出が可能な状態になった当事者が、社会への第一歩を踏み出すための準備を行う「居場所」の運営をNPO法人等に委託している静岡県の取組について調査を行い、今後の引きこもり対策の参考とする。
ひきこもり当事者は、仲間体験が不足し、人間関係を形成することが困難であることが多く、支援に当たっては、当事者に配慮された空間で、社会に参加する準備が必要という認識の下、静岡県では、支援の次のステップとして必要な「居場所」を身近な地域に設置し、社会への第一歩を踏み出す支援を行っている。
静岡県ひきこもり支援センターは「居場所」機能を有していないため、平成28年4月、県内4箇所に「居場所」を設置し、平成30年度は5箇所目(伊豆市)を設置。
「居場所」は、原則週1回・4時間程度、貸会議室等を利用して、NPO法人等のスタッフにより運営し、自由に過ごす空間を提供するほか、ひきこもり当事者同士で決定したプログラム(読書、ゲーム、料理、スポーツ、散歩、買物等)を実施し、社会への第一歩を踏み出すための準備を行っている。
今後の課題として、ひきこもりが長期化する前の早い段階で、親だけでも相談に来ることにより、改善につながるという支援成果等の周知のため、ひきこもりに関する講演会を引き続き実施し、県民のひきこもりに関する理解を深める必要があるとのことであった。
概要説明を聴取
静岡市児童相談所が、長期的に寄り添った支援が必要となる里親について、業務全般をNPO法人静岡市里親家庭支援センターへ委託し、緊密に連携して里親委託を推進している取組について調査を行い、今後の里親委託推進の参考とする。
静岡市では、平成17年度に児童相談所が設置されたのと同時に、市の里親会が設立され、早くから児童の愛着形成の重要性について、市と里親会で共通認識を持ち連携を進めてきた。
平成22年度には、市里親会を母体としたNPO法人静岡市里親家庭支援センターが設立。静岡市は、申請受付から里親の認定前・後の研修、登録後の里親への助言・指導等の対応、里子と里親との交流事業、一般市民への周知啓発事業等をNPO法人静岡市里親家庭支援センターに委託し、児童相談所や里親会等との連携強化を図っている。
今後の課題として、里親委託率50%の達成(平成30年4月1日現在:44.2%)、里親の高齢化に伴う新たな里親登録者の確保、里親養育のスキルアップ、里親制度の周知啓発による理解の促進に向け、さらに取組を進める必要があるとのことであった。
概要説明を聴取
概要説明聴取後、市児童相談所前で撮影
さいたま市美園地区の子育て世帯を対象とした、全国初の人工知能(AI)を活用したスマホアプリによる情報配信サービス等について調査を行い、今後の子育て支援施策の参考とする。
さいたま市の「副都心」の一つとして新市街地形成の進む美園地区では、都市開発の進捗に伴って人口が急増しており、地区内への転入者には比較的若い年代の子育て世帯も多く、今後ますます増加することが見込まれている。
このため本地区においては、ICT を活用し、各種地域サービスの創出を図りながら「スマートシティさいたまモデル」の構築を目指すため、「公民+学」が連携して、子育て環境向上に寄与する各種施策に取り組んでいる。
取組の一環として、本地区の子育て世帯に向けて、子育てイベント情報や医療機関情報等を1つのスマートフォンアプリで配信するサービスを平成29年6月より開始。
イベント情報配信においては、子育て世帯に親しみのある近隣エリアの民間商業施設、公共施設等で行われる子育てイベント等を独自に開発したソフトウェアが抽出し、毎日夕方に、最新情報を自動的に届ける仕組みを構築した。
その他、子育て世帯向けに、電動自転車(チャイルドシート付含む)や超小型EV のシェアリングサービス、駅備え付けのオープン型宅配ロッカーを整備して、実証実験を開始している。今後は、Bluetooth 端末を活用した子どもの見守りサービス等を展開していくとのことであった。
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シェアリング自転車設置場所を視察
地域の高齢者を地域の助け合いで支える「共助社会」を目指し、地域通貨により様々なサービスを提供する伊達市の「共助社会構築推進事業」について調査を行い、今後の高齢者支援施策の参考とする。
伊達市は、高齢化や若年層の転出の影響から、一人暮らしの高齢者が増え続けており、特に75歳以上の割合が年々増加している。そこで、かつての大家族時代の「自助(家族内共助)」の代わりとして、「地域が家族」のようになって「地域内共助」を実現する必要があるという課題認識の下、地域通貨を媒体とした共助の仕組みを構築。
モデル事業実施の平成29年度については、市の補助を一定程度行うこととしている。基本的な仕組みとして、要支援者(75歳以上の高齢者や障害者等のみの世帯)は、地域の自治組織を主体とする運営母体を経由して支援者にボランティアを依頼する。ただし、円滑に運営していくため、自治会・町内会を経由する方法や、要支援者から支援者へと直接依頼する方法も取り入れている。
運営母体(地域の自治組織)は、各地区内の住民調査や地区内でのマッチング業務を担い、市は、全体の事業の管理、事業の新規立ち上げ支援や相談対応など、総合的な活動支援を担っている。また、事業実施の検証のため、ボランティアを行った支援者から、支援内容の報告を求めることとしている。
今後の課題として、市からの補助金に頼らない事業運営の仕組みの構築や、介護保険等の法定サービスとの棲み分けの整理等を検討する必要があるとのことであった。
概要説明を聴取
概要説明聴取後、市議会議場で撮影
東日本大震災を教訓として「仙台駅周辺帰宅困難者対応指針」や「一時滞在場所運営マニュアル」等の策定、帰宅困難者対応訓練の実施のほか、防災・減災に向けた啓発活動等に取り組んでいる仙台市の取組について調査を行い、今後の防災・減災対策の参考とする。
平成23年3月11日に発生した東日本大震災では、鉄道や地下鉄など、公共交通機関が運行停止した。地震発生が平日の午後であったことから、地震直後から通勤・通学者等の一斉帰宅行動が始まり、JR仙台駅や地下鉄ターミナル駅などでは、帰宅できない人で混雑し、最寄りの避難所に殺到するなど、混乱が生じた。
仙台市では、こうした課題を教訓として、行政や民間事業者等の役割を明確にした上で、課題の解消に向け、以下の帰宅困難者対策に取り組んでいる。
1. 個人、事業者等の日頃からの備え(啓発活動)
2. 一時滞在場所の確保(市内30カ所)
3. 一時滞在場所運営マニュアルの策定
4. 帰宅困難者対応指針の策定(仙台駅周辺、長町駅周辺)
5. 帰宅困難者対応訓練(仙台市、民間事業者、他行政機関の協働により、対応指針の確認を行うことを目的に、JR仙台駅、地下鉄仙台駅等を会場として平成29年9月1日に訓練を実施(参加者数:約400名))
なお、帰宅困難者対策は、「自助(自ら守る)」の徹底を前提とした上で、関係者が互いに助け合う「共助」の取組へとつなげていくことが重要とのことであった。
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