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総務省では、平成27年から効率的で質の高い仕事を目指して、オフィス改革により多様な働き方が可能になる環境づくりを進めている。
グループアドレス制を導入したオフィスやその改革の概要を調査し、府の働き方改革の参考にする。
平成26年に閣議決定された「世界最先端IT国家創造宣言」により、情報のデジタル化(ペーパーレス化、デジタルアーカイブ化)の推進と生産性の向上を図ることが求められ、さまざまな世代が働きやすくなる環境を進めていく必要がある。
総務省では、可動式の机を導入し、業務の都合により席を入れ替えたり、プロジェクトに応じてレイアウトを変更したりすることが可能となるグループアドレスを他省庁に先駆け導入した。そのほかにも、紙資料をデジタルデータ化し(約8割の紙文書を廃棄)、集中スペースや会議スペースを確保(約3倍に)したり、回線を無線LAN化したりしたことにより、パソコンを持ち歩きながら仕事をすることが可能になった。また、内線用のPHSが全職員に貸与され、自席を離れても電話が可能になっている。特に、パソコンが持ち運べることで、ペーパーレス化が進み、テレワークが容易になったことで在宅勤務の実施者も増加したとのことであった。この改革を実施したことにより、6割以上の職員から「作業の手戻りが減った、意思決定のプロセスが変化し、効率化が図られた」との意見があった。
総務省としては、オフィス改革にはコストがかかることを踏まえ、それぞれの職場に適したオフィス改革が進められ、働き方改革が実現できるよう、その後押しをしていきたいとのことであった。
改革されたオフィスを視察
総務省地域力創造グループでは、地域経済好循環推進プロジェクトの推進、都市から地方への移住・交流の推進、人材力の活性化・交流・ネットワークの強化、地域情報化の推進、国際交流・国際協力など、地方公共団体が地域の課題に積極的に対応していけるよう支援しており、その概要を調査することで京都府内市町村への施策の導入を進める。
今回の調査では、地域創生と地方からのGDPの押上げを図るために地域力創造グループが実施している、「ローカル10,000プロジェクト」「シェアリングエコノミー(個人等が保有する活用可能な遊休資産や能力を他の個人等も利用可能とする経済活動のこと)活用推進事業」を中心に説明を受けた。
「ローカル10,000プロジェクト」は、産学金(金融)官の連携により地域の資源と資金を活用して雇用が生まれる地域密着型の企業を立ち上げる事業であり、府内では3市町村9件がこれまでに採択されている。支援対象は、例えば、地元の農産物を活かした特産品の開発・販売、観光拠点整備などで、民間事業者等が実施する施設整備や機械装置、備品などの初期投資費用が対象となり、それぞれ公費のほか、地域金融機関による融資が条件となっている。特に、今年度は国の重要施策のほか、東京オリンピック・パラリンピックの関連施策等が重点支援となっている。
「シェアリングエコノミー活用推進事業」は、地域の新たな「共助の仕組み」を生み出し、地域の課題解決や経済の活性化につなげることが期待される施策である。例えば、地域で活用されていない遊休スペースや主婦等のすきまの時間をマッチングさせ、場所を提供したり子どもを預かったり、住民のニーズを住民が満たす仕組みをつくり、地域に潜在する資源をうまく活用していくことが求められている。
総務省では、どちらのプロジェクトについてもまだまだ活用の可能性があり、成功事例の発信などPRにも力を入れていき、地域経済の好循環を作っていきたいとのことであった。
「渋谷未来デザイン」は、未来の「都市」の可能性と、まちの課題を解決するため、多様な人々のアイデアや才能を、領域を超えて集め、オープンイノベーションにより社会的課題の解決策をデザインする「公・共・私」の連携組織である。こうした新しい公共のあり方について調査する。
「渋谷未来デザイン」は、2018年4月に設立され、渋谷区の基本構想「ちがいをちからに変える街。渋谷区」に沿って、行政機関(渋谷区)のほか、多様な主体(個人、企業、学校など)が共創し、多様性を許容する渋谷の課題解決と未来の渋谷のデザインに取り組んでいる。
これまでは、同区の住人を中心にまちづくりを考えてきたが、多くの人が訪れる区ならではの特性を活かし、多様な主体と意見交換した方が新たなアイデアが生まれ、まちづくりが進むのではないかという考えのもと、同組織が立ち上げられた。立ち上げにあたっては、他府県の産官学連携の先進的な事例を調査し参考にしようとしたが、多数の事例で、資金、人材を確保し継続していくことが難しくなっている状況が見られたことから、多くの協力企業を得たり、グッズを販売したり、他団体からの事業を受託するなど、資金を確保する工夫をしている。また、区役所からの人材が派遣され、人材の確保も継続的に図ることとしている。
これからの渋谷のまちづくりに向け、行政だけでなく、同組織がプラットフォームとなって、住人、働く人、学ぶ人、訪れる人の多様な主体と一緒になってまちづくりをすすめていく原動力となり、渋谷の魅力を世界に向けて発信していきたいとのことであった。
「Plug and Play Shibuya」は、スタートアップ(新しく設立されたばかりの企業)や多様な企業が集まる、「世界で一番刺激的な街“渋谷”で働きたい、起業したい」という思いを実現するため、東急不動産が開設したオープンイノベーション施設。こうした人が集まり、イノベーションが生まれる施設はまだ京都には少なく、その可能性と設置の意義について調査する。
「Plug and Play」は、2006年に米・シリコンバレーで創設されたスタートアップ支援組織。同社がこれまで創業初期を支援した企業は2,000社以上あり、2018年に日本に進出、スタートアップが他の企業や行政、金融機関などとパートナーシップが形成できるよう支援している。さまざまなプレーヤーが集まるオープンな施設は、今後、渋谷のシリコンバレーの拡大とそれと連動する企業のイノベーションを加速させると期待されている。
同不動産では、渋谷駅周辺を中心としたエリア一帯を広域渋谷圏と定め、都市開発の重要拠点とし、「PlugandPlay」のほかにスタートアップ向けオフィスを開発する計画を立てている。さらに場の提供だけにとどまらず、ベンチャーキャピタルを通じて資金需要にも応えられるよう、スタートアップが集うための整備を進めている。
同不動産では、2020年までにスタートアップと「100のサポート・ビジネスの創出」に取り組んでおり、行政とも連携しながら企業が集まる渋谷のまちづくりに貢献していきたいとのことであった。
オープンイノベーション施設を視察
三菱総合研究所では、本年、全国の31の自治体と協力し、育児やゴミ出しなどの住民からのさまざまな問い合わせに人工知能(AI)が応答するサービスの実証実験を開始。今後の京都府行政のあり方を根本から考えるきっかけとするため、こうしたAIを活用した行政サービスについて調査する。
人口推計では2050年に日本の総人口は1億人を切り、高齢化率が約40%となるなど、今後の人口減少社会にどう対応するかが課題となっている。人口減少社会を止めるためには、少子化対策を講じて出生率を上げることが重要であるが、その効果が出るまでに時間もかかる。その間にAIやIOTなど使える技術を総動員して時間を稼ぐことを同研究所は提唱し、その実証実験を進めている。
例えば行政業務の分析をしてみると、一日の半分が住民からの問い合わせ対応となるような部署もあり、こうした問い合わせに対して、AIを活用した回答システムを導入し、実際に実証実験を進めた。その結果、利用者の90%からこのサービスを継続してほしいとの回答があるなど、評価も高く、同研究所では、そのほかにも医療分野での予測や予防、法案等の作成、議会の議事録、交通など、行政のさまざま分野でAIが活用できると考えている。
世界経済フォーラムで「データは新しい石油である」と例えられたように、データを活用して行政の業務に生かしていく作業は今後増えていく可能性があり、同研究所では、事例を積み上げながら研究・実証・導入に取り組んでいくとのことであった。
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