[心の健康について]
〈統合失調症〉 統合失調症の経過について
時間の経過や症状は、誰もが同じ経過を取るものではありません。しかし、一般的には、ゆっくりと時間をかけて回復をしていきます。
A 急性期
疑い深さ、睡眠障害、幻覚・妄想など、まわりから見てもおかしい言動が見られます。症状の程度が強いので、強い不安、恐怖、せっぱ詰まった感じに襲われます。コミュニケーションが障害され、幻覚妄想などのために判断力が低下します。睡眠のリズムが乱れ、昼夜逆転となり、食欲がなくなり、ひどく痩せることもあります。薬物療法と安静な環境が何よりも大切です。このような治療を続ければ、幻覚・妄想の状態は少しずつ治まっていきます。
B 消耗期
心身とも疲れ切った状態で、心身のエネルギーが落ちて、活動が鈍くなる時期です。
特徴としては、
- とても疲れやすい、根気が続かない、集中力がなくなる、など。急性期の激しい時期を過ごした後ですから、当然なのです。
- 非常によく眠ることによって、エネルギーを蓄えられます。回復期へとつながっていくために、大切な時期です。
- 両親に甘えてきたり、受け身的になることがあります。エネルギーのレベルが下がっているからであり、エネルギーが蓄えられると、自然になくなります。
C 回復期
消耗期を経て、社会との関わりを持とうとする時期です。この時期の回復の度合いはさまざまで、急性期から引きずってきた幻覚・妄想などの症状が残ることもあります。また、回復期から感情が動かない、会話が乏しい、気力がない、関心がないなどの症状が徐々に目立ってきて、長期間続く場合もあります。
回復のペースはゆっくりですが、それに伴い、少しずつやれることが広がっていきます。このような活動の広がりは、自分の興味のあることを中心に伸びていきます。この時期になると、デイケア、作業所などに参加することを考え始める時期でもあります。
回復期は「努力」「無理」ではなく、「ゆとり」「安心感」が大切です。
再発について
統合失調症は残念ながら再発する場合があります。家庭や学校・職場での様々なストレスや、治療の中断がきっかけとなることが多くみられます。ですから、リハビリテーションをきっちり行いストレスに対する抵抗力を高めること、自分の判断で治療を中断しないことが大切です。また、調子が悪くなるときには、頭痛、不眠、気力がない、なんとなく不安、音に敏感・イライラするなど、その人によって特徴的な症状が出てきます。(この時期を前駆期と言います。)こういった前駆期の症状を把握していれば、再発を予測しやすくなり、適切な対処が可能になります。
Q1 精神の障害とリハビリテーションについて教えてください。
精神の障害は、生活していく上で、どのようなところに現れるのでしようか。また、リハビリテーションとは、どのようなことを指すのでしょうか。
A1 精神障害者は、治療を必要とする病気を持っていると同時に、社会生活を困難にする生活障害を持っています。ですから、幻覚、妄想、不安、緊張などの症状がかなり治まっているにもかかわらず、日常生活を送っていく上で、障害が残る場合があります。たとえば、下表のようなことです。
生活の仕方 |
|
働くこと |
|
---|---|---|---|
人付き合い |
|
まとめる力 |
|
精神科のリハビリテーションでは、上記のような生活障害のうち、ご本人が生活をしていく上で何が問題になっているのかを把握します。そして、障害を受け入れながら自立した生活を営む方法を、本人、家族、援助者がともに考えます。こうして立てられたリハビリテーションの目標に向けて、それぞれのペースで少しずつ練習していくのです。その人自身のQuality of Life(生活・人生の質)をできる限り高めることが、精神科リハビリテーションの目的といえるでしょう。
精神科リハビリテーションは、個人のリハビリテーションと並行して、集団の活動に参加することで、よりよい効果が得られることが多いようです。料理やスポーツなどの活動や、陶芸や木工などの作業をしながら、少しずつ人と交流していくことで、社会生活を営むにあたっての自信を回復していくことが可能になります。
援助者には、精神科医、作業療法士、看護師、精神保健福祉士、臨床心理技術者などがいます。精神科デイケアでは、これら多職種のチームが、それぞれの専門性を活かしながらリハビリテーション・プログラムを考え、運営を支えています。
Q2 回復していくときに、どのようなことを心がけたらいいですか?
精神障害の回復には時間がかかると聞いていますが、どんなことに注意をしたらいいのでしょうか。また、回復途上で利用できる制度や施設はあるのでしょうか。
A1 障害の程度や、回復にかかる時間は人によって違うので、リハビリテーションの目標もかわってきます。回復途上で利用できる制度や施設も増えてきていますので、自分の状態に合わせて無理なく利用していきましょう。焦らずに、一歩ずつ進んで行くことが大切です。
自分に合ったリハビリテ−ションの目標を達成する為に…
1.病気の管理
まず病気の管理をしっかりと行うことが大切です。症状や薬については、本人や家族だけで判断せず、遠慮なく主治医に相談してみましょう。自分の抱えている病気の特徴や回復過程などを知っておくと、調子が悪くなってきた時も早く対処でき、再発を防ぐことができます。
2.睡眠と休養
急性期が過ぎた時期は、特に十分な休養が必要です。周囲から見ると、何もせず寝てばかりいたり、ぼんやり過ごしているように見えますが、この時期蓄えたエネルギーが回復への第一歩となります。
元気が出てきて、家庭外での活動に関心が向くようになっても、睡眠と休養は大切です。せっかく始めた活動も、睡眠と休養をきちんと取らないと続けることはできません。自分に合った生活ペースを身に付けましょう。
3.相談する
症状や薬については主治医、利用できる制度や施設については精神保健福祉士、などというように、相談先も複数あると様々な情報が得られます。本人や家族だけで問題を解決しようとせず、色々な所に相談してみてください。
各保健所や地域生活支援センター、病院などに精神保健福祉士がいますので、一度問い合わせてみてください。現在の生活状況や目標に合わせて、利用に適した制度や施設を紹介してもらえます。