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[心の健康について]

〈東日本大震災 被災地支援 京都府心のケアチーム 活動報告書〉
2. 診療対象者の精神科医療的特徴

会津地方の精神科医療機関は震災直後から福島県各地で機能不全に陥った病院で入院継続不可能となった患者さんを一部名前や処方もわからないまま数多く受け入れ、避難所に避難してきた既存の精神科外来患者さんを多数受け入れ、震災により精神状態が悪化した会津地方の患者さんをフォローしておられ、当チームが活動を開始した4月にはすでにこれらの問題はほぼコントロールされつつあった2。その上で3月下旬に「会津こころのケアチーム(以下会津チーム)」を形成し、約5,000名の避難者の巡回診療を分担で開始するところであった。当チームは会津保健福祉事務所の提案にて、会津チームの一員として2,000名の避難が見込まれた会津美里町内の楢葉町民の巡回診療を高田厚生病院チームとともに担当することとなった。したがって、当チームの活動では表1における「5.活動の目的」のうち、2)1.既存患者さんの継続診療という役割はほとんどなく、2)2.スクリーニング、プライマリケアが主な任務となった。

全期間中、250名の被災者、職員を対象に664回の診療・相談を行った(表2)。対象者250名の平均年齢は54.2歳(4-94歳)、内訳は男性121名、女性129名、住所地は全員福島県内でうち楢葉町が145名、双葉町が43名、浪江町が41名(図1)などで、このうち被災市町村職員が73名(29.2%)であった。また、会津保健福祉事務所職員の心の健康相談を12名(4.0%)に対して30回行った。2回以上当チームの診察を受けた方は112名で、多い方には16回の診察を行った(図3)。これら巡回診療のほか避難所での心の健康講話会などを14回、診療と位置づけない避難者の相談、各組織でのケースカンファレンス、支援組織内の心理的諸問題についての相談などを随時行った。対象者の主たる暫定診断は反応性抑うつ状態(ICD-103による分類:F43.2、F32の一部)が55名(22.0%)と疾患の中で最多であった(図9)。同じ震災関連ストレスによる抑うつ状態であっても症状の強度や持続期間によってICD-10ではF43.2やF32に分類されるが、便宜を優先し併せて1つのカテゴリーとした。以下外傷後ストレス障害(以下PTSD)は4名(1.6%)、認知症9名(3.6%)、統合失調症圏7名(2.8%)、気分障害圏12名(4.8%)、神経症圏31名(12.4%)で、身体疾患・医療健康問題の相談も35件(14.0%)あった。この診断集計は主要な1つだけを選択したものであり、アルコール依存症、認知症、知的障害については副診断として扱われここに挙げられていない例もあるため、各疾患の罹患人数を意味していないことに留意願いたい。

PTSDの比率1.6%は従来調査、例えば阪神大震災16か月後に飛鳥井ら4が行った調査における割合3.1%などに較べ少ない。しかし診察医がスクリーニングや心理教育目的にて84名に対して随意で行った「災害精神保健に対するスクリーニング質問票(SQD)5」では、21名(施行者中25%、全対象者比8.4%)がPTSD判定基準を満たしており、いわゆる不全型PTSDに該当する例が多いものと推測される(表3)。中井6は阪神淡路大震災直後のPTSDについて、「避難所のようにむき出しに生存が問題であるときにはこれは顕在化せず、恐らく仮設住宅に移住した後に起こるのであろう。」と述べている。当チームが診察した人の多くに高い緊張感、焦燥感、身体の震えなど過覚醒徴候が見られていることから、今回の被災者も同様に今後衣食住が安定しこの過覚醒が生体防衛として不要になったにもかかわらず収まる気配を見せない時、PTSD症状が主訴として表れるのではないかと推測される。

原因・背景別(複数選択可)では「避難所生活や対人関係のストレス」が最多で126名(50.4%)、次に「震災や原発被害に関する喪失・ストレス」が96名(38.4%)であった(図10)。福島県では地震や津波の被害による避難者だけでなく、原子力発電所事故に基づく避難命令によって避難している人が多く含まれ、避難所は自宅から遠方で、避難期間もより長期となることが予想されることなどから避難生活に起因するストレスは他県の被災者よりも重要な位置を占めるものと推測される。

全664診察のうち、処方を行ったのは311回(46.8%)であった。(図11)1日用量から換算すると、パロキセチン(パキシル®)の処方量が比較的多いのが特徴的である。診療記録からは、抑うつ症状に不全型PTSD症状を合併している例などにパロキセチンがよく利用される傾向がうかがわれた。リスペリドン(リスパダール®)液剤やオランザピン(ジプレキサ®)口腔内崩壊錠など精神科救急時に必要とされる薬剤は、既存の患者さんがほぼ会津地方の医療機関にてフォローされていたことからほとんど必要としなかった。

表2.当チーム診療対象者の集計

表2.当チーム診療対象者の集計
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表3.災害精神保健に対するスクリーニング質問票(SQD) 随意施行84名の結果

表3.災害精神保健に対するスクリーニング質問票(SQD) 随意施行84名の結果
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図1.対象者住所地の割合(対象者250名)

図1.対象者住所地の割合(対象者250名)
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図2.診察場所(全664診察)

図2.診察場所(全664診察)
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図3.対象者の当チーム受診回数

図3.対象者の当チーム受診回数
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図4.当チームのメンバ構成(のべ)

図4.当チームのメンバ構成(のべ)
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図5.年齢分布(総診察数・対象者)

図5.年齢分布(総診察数・対象者)
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図6.対象者の年齢分布(男女別)

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図7.診療対象者数の推移 (班別)

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図8.主要町民ごと診察回数の推移 (班別)

図8.主要町民ごと診察回数の推移 (班別)
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図9.診療・相談対象者(250名)のICD-10暫定診断の割合

図9.診療・相談対象者(250名)のICD-10暫定診断の割合
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図10.診療・相談対象者が有する背景・ストレス因の割合(複数選択可)

図10.診療・相談対象者が有する背景・ストレス因の割合(複数選択可)
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図11.当チーム全期間の薬剤使用数

図11.当チーム全期間の薬剤使用数
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