[豆知識] 環境のタイムカプセル「入皮」

 入皮(いりかわ)は、樹木の内部に取り残された樹皮のことです。はじめは別々の幹が生長にともなって接触して、やがて全体が一本の幹として合体してできたり、樹木の傷口を傷の周囲が被い尽くしたりして入皮が形成されます。この入皮を使って、過去の環境汚染の状況を調査する手法を国立環境研究所の佐竹研一氏らが開発し、注目を集めています。

 過去の空気の状況を推定する方法としては、南極や北極の氷に閉じ込められた空気を分析する方法が知られていますが、人口の集中した地域では適当な方法がありませんでした。入皮は、入皮が形成された当時の大気汚染物質を蓄積していて、しかも入皮は年輪に挟まれているので、その入皮が形成された時期が特定できます。樹皮はこれまで世界各地で環境汚染のモニタリングに用いられてきた実績がありますから、入皮は「環境のタイムカプセル」として利用できます。

 人類は古くから鉛を用いてきましたが、自動車のガソリンの添加剤として有機鉛が用いられるようになってから環境中の鉛の濃度が飛躍的に増加してきました。台風で倒れた日光杉並木のスギの入皮(約200年前に形成された)の鉛濃度は約0.1ppmであるのに対して、樹皮の鉛濃度は40~150ppmでした。屋久島のスギの樹皮の鉛濃度は約1.5ppmです。

 佐竹氏らの手法はイギリスの産業革命当時の大気汚染の推定にも用いられ、佐竹氏はイギリス王立科学院から表彰されました。

 入皮は過去の調査に用いるだけでなく、街路樹や植林などに積極的に入皮を作り、現代の環境状況を将来に伝える動きも始まっています。

 

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