農薬や動物用医薬品等が残留する食品の規制が変わる!
(京都府保健環境研究所だより83号掲載)
1 農薬等は必要?
農産物の生産過程において、病害虫の防除等は欠くことのできない重要な作業ですが、少ない労力で一定の効果が得られる点で、農薬等(動物用医薬品や飼料添加物を含みます。以下、同様です。)が使用されています。
また、収量や品質を維持し、商品価値を高めるなどのためにも使われます。
現在では、桃やりんごなどは農薬を使用しなければ、商品価値のあるものは生産できないとも言われています。動物用医薬品や飼料添加物の使用も、食肉や卵を衛生的、安定的に供給するためにはやむをえない面があります。
2 農薬等は残留する?
しかし、多くの農薬は農作物に散布され、目的とした作用を発揮した後、ただちに消失するわけではありません。このため、使われた農薬が収穫された農作物に残り、これが人の口に入ったり、家畜の飼料として利用され、ミルクや食肉を通して人の口に入ることも考えられます。また、動物用医薬品等についても長期間使用することにより、耐性菌が生じる可能性もあります。
3 何が問題?
この残留した農薬等が人の健康に害を及ぼすことがないように、農作物に残留してもよい量の限度が「残留基準」として食品衛生法で定められています。
しかし、現在、国際的に農作物への使用が認められている農薬等は800以上あるといわれていますが、そのうち我が国において残留基準が定められている農薬等は約280に過ぎません。したがって、現行制度(ネガティブリスト制度)では、残留基準が定められていない農薬等については、いくら残留していても、その食品の流通を禁止することはできず、食の安心・安全の面で問題となっていました。
一口メモ
動物用医薬品:牛、豚等の病気予防のための抗生物質等
飼料添加物:飼料の品質低下防止のための防かび剤等
耐性菌:突然変異により医薬品等の効果のなくなった細菌類
4 規制はどう変わる?
これまでは、残留基準が定められていない農薬等については規制がなかったため、特に輸入農作物等については安全面での不安がありました。
そこで、日本だけでなく、世界中で使われている主な農薬等に残留基準値を暫定的に設定するとともに、これ以外の基準値が設定されていない農薬等が一定以上含まれた食品の流通を原則禁止するという「ポジティブリスト制度」が平成18年5月29日から施行されます。
これに伴い、規制対象農薬等は現在の283農薬等から799農薬等に大幅に増加します。
このように幅広く農薬等を規制することにより、残留基準が定められていない農薬等が残留する食品の流通がなくなります。やや専門的になりますが、これまでの規制とポジティブリスト制度施行後との違いを次の図に示しました。
一口メモ
(1) ネガティブリスト制度
すべての農薬等に規制があるわけではなく、規制するものについてだけリスト化し基準値を定める制度
(2) ポジティブリスト制度
原則使用が禁止された状態で、安全性が確認され使用を認めるものについてのみ基準値を定める制度
図 ポジティブリスト制度導入前後の規制の違い(厚生労働省資料より)
5 二つの基準
(1)暫定基準
国内外で使用される農薬等について、国際基準、農薬取締法(農薬の品質の適正化や安全使用等を目的として制定された法律)に基づく基準及び先進諸国の基準を参考に、暫定的に基準値(暫定基準)が設定されます。
(2)一律基準
安全性が不確定なため暫定基準が設定されていない農薬等については、「人の健康を損なうおそれのない量」として一律基準(0.01ppm)が設定されます。
これを具体的な例で示すと下表のようになります。
| (これまで) | 農薬A | 農薬B | 農薬C |
| 米 | 0.2 | 0.5 | 基準なし |
| 白菜 | 0.5 | 基準なし | 基準なし |
| みかん | 0.2 | 0.2 | 基準なし |
| 茶 | 0.3 | 基準なし | 基準なし |
| (これから) | 農薬A | 農薬B | 農薬C |
| 米 | 0.2 | 0.5 | 0.1(暫定基準) |
| 白菜 | 0.5 | 0.1(暫定基準) | 0.01(一律基準) |
| みかん | 0.2 | 0.2 | 0.01(一律基準) |
| 茶 | 0.3 | 0.01(一律基準) | 0.2(暫定基準) |
いずれの場合においても、基準を超えて農薬等が残留する場合は流通が禁止されます。
6 京都府保健環境研究所における対応
当研究所では、府民の食の安心・安全を確保するため、従来から食品に残留する農薬等の検査を行ってきましたが、農薬等をひとつひとつ分析するには多大の労力と時間を要しますので、数十種類の農薬等を一斉に検査する方法を取り入れてきました。
それでも、今回のポジティブリスト制度の規制対象となる799の農薬等はそれぞれ異なる性質を有しているため、これらすべてを一斉に検査することは困難です。
そのため、当研究所においては、検査対象農薬等を、過去に検出された農薬等や国内或いは府内で多く使用されている農薬等に絞るとともに、検査方法を改良したり、測定精度を更に上げるために研究を重ねています。
(理化学課)

