京都ジョブパーク 総合就業支援拠点

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精神障害者の雇用支援ツール「SPIS(エスピス)」を活用(株式会社島津製作所)

株式会社島津製作所人事部マネージャーの境様にSPISについてお話いただきました。(2017年11月)

障がい者雇用の経緯

島津製作所の障がい者雇用は、これまで特別な戦略もなく、各部門の人材需要にあった障がい者が見つかれば新規採用するという状況でした。そのような中で障がい者の定年退職・自己都合退職が重なったこともあり、2014年には実雇用率が1.6%台まで下がってしまいました。さすがにこれはまずいということになり、障がい者雇用の担当者をおいて精力的に取り組んだ結果、2年間で24人(うち精神障がい者4人)を採用し、実雇用率が2.0%を超えるまで回復しました。

しかし新たな課題として精神障がい者のマネジメントの難しさに直面しました。当事者・職場担当者・人事部でうまく連携が取れずに対応が後手に回ってしまったことがしばしばありました。原因は、マネジメントする上での留意点が明確になっていなかったことで、その結果、現場の管理職や指導担当者の不安が大きくなってしまいました。2018年の法定雇用率改定に伴い精神障がい者の雇用を進めていくため、何とかしなければと思っていました。

SPISとの出会い

職場風土を変えることは大変です。どのように行動すべきか悩んでいた時に、京都障害者雇用企業サポートセンターが主催する「業種・企業規模を問わず勉強・交流する会」に参加する機会を得ました。同じ悩みを持つ企業担当者と情報交換できたことは、社内で悶々としていた私にとって大きな励みになりました。そして、勉強・交流会でSPISと出会った時は心が躍りました。説明を聞く中で、障がい者の就労定着支援だけでなく、メンタル不調者の対応にもSPISは効果的だと思いました。そして我社の現状から、年々増加傾向にあるメンタル不調者の対応にSPISを活用し、その実績を社内で共有した上で障がい者のマネジメントへ展開する方が職場の理解を得やすいと考えました。

メンタル不調者へのSPIS導入

メンタル不調者に対して職場ではネガティブな思考に陥っていました。在職中の社員がメンタル疾患を発症した結果、休職と復職を繰り返して周囲が苦労したことや、就業困難となり突然退職し後任者が不在となって職場が混乱するなどのケースがあったからです。職場のメンタルヘルスへの対応は健康安全センターで行い、本社敷地内に診療所を設けて、産業医・保健師・看護師・臨床心理士が常駐し、各事業所の人事担当者・管理監督者等と連携を取って進めています。しかし、本社でも広い敷地内に建物が45あることや、東京支社など距離的に離れている事業所も多く、一元管理が難しく情報共有に課題を持っていました。

この対応策としてSPISは非常に有効です。まずは、東京支社の営業職の社員でトライアルしました。この方は適応障がいで休職し6か月前に復職したところで、回復途上であるが体調や気分に不安定な状況が続いていましたが、「見てほしい・聞いてほしい感」の強い方で、上司・支援者に見守られているSPISを使うことが復調への追い風になると判断しました。SPISへの入力項目は、生活面・社会面・作業面のそれぞれで自由に設定できるのですが、この方の場合は、合計6項目を設定し、本人を中心として、東京支社の直属上司が担当者となり、本社にいる臨床心理士と人事部管理職が支援者となりリアルタイムで情報共有してマネジメントしました。

その結果、この方は体調や気分に多少の波があるものの、予想通り仕事上の悩みやプライベートな出来事を事細かく発信してくれました。東京支社では、営業職という上司とのすれ違いが多い中でもタイムリーに状況把握とアドバイスがスムーズにできるようになり、本社においても、この方の様子が把握できてSPISの効果を実感することができました。

SPISの効果と今後の課題

トライアルで感じた効果は以下の内容です。

  • 関係者で瞬時に情報共有できる
  • 当事者の見守られることによる「安定感」
  • 当事者理解が深まる⇒関係性を構築する上での新しい発見に
  • 評価項目の変化をグラフ化することが可能⇒産業医面談に活用
  • 上司のコミュニケーション能力向上・成長
  • 当事者・関係者が良い方向を目指せる

その後、使用者は6名。うち精神障がい者は3名で就労定着支援に効果を発揮しています。これまでの経験の中で、マネジメントにおいては「当事者の特性を考慮した対応」「異動など職場環境変化時の的確な対応」「外部支援者とのつなぎ」などが重要であることを感じました。これらは、SPISを利用することでより効果的に対応できると判断しています。今後もさまざまな工夫をしながら、よりよい就労支援体制を構築していこうと思います。

<参考>SPISとは

当事者が自分のコンディションを日々記録するWeb日報システムで、企業側の支援者や外部支援者と情報共有できるシステム(Supporting People to Improve Stabilityの略)。日報データは、従業員当事者・職場担当者・外部支援者の三者で共有。いつでもどこでもパソコンやスマートフォンで簡単にアクセスでき、コメントへの返信も可能。記録項目の推移をグラフ化することで、体調面・精神面の好不調の波が一目瞭然。詳しくはhttps://www.spis.jp/(外部リンク)

SPISとは

 

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