女性チャレンジオフィス開所記念講演会
「起業がもたらすもの-before&after-」
日時 平成17年6月18日(土曜日)
場所 京都府女性総合センター
京都府女性チャレンジオフィスの開所を記念して、有限会社 業態開発研究所(デイス・シュール・デイス)所長で京都府アクションプラン「女性発・地域元気力『わくわく』プラン」参与として御活躍中の、モナト久美子さんに、自らの起業家としての経験をまじえ、起業・NPO創業を目指す、又は創業間もない女性たちへの応援メッセージとなる、御講演をいただきました。以下、講演内容の一部を抜粋して掲載しました。
起業前(before)に心しておきたいこと。
『誰にでも役に立つ起業ノウハウ』というものはない。
10人いたら、10人の起業の仕方、10人のねらい目があり、10人それぞれの道筋があります。「これを聞けば」、「この講演に行けば」、「このセミナーに参加すれば」、「これだけ、参加費を払えば」必ず成功するノウハウ、というものはありません。
自分自身を『正しく見つめ直す』機会と捉え、客観的に自己診断する。
一人ひとりの人生の中で、業を起こそうと思っているわけですから、それが大きな転機であろうが、小さな転機であろうが、“今までの生活とは違う何かの転機を迎えている”のは間違いはないことです。そういう時機に来ている自分自身を、今、正しく見つめ直す機会と捉えて、客観的に自己診断してみましょう。
起業を通しての、大きな展望を描いてみる。
“私は将来こういうことをしてみたい”、あるいは、“こういう将来にしたい”という設定でもいいのですが、自己診断を行ったら、次に大きな展望を頭の中で描いてみましょう。
大きな展望のなかで、「1年後」、「3年後」、「5年後」、という『マイルストーン:里程標』はもっておきたい。
大きな展望の中で、“1年後はどういうことをやっていたい”、“3年後はどういうことをやっていたい”、あるいは5年、7年、10年…というように、一般に言うマイルストーン、「私自身がこれを自己実現したい」という里程標を書いてみましょう。
展望に向けての『道』、あるいは『フレーム』を描いてみる。
計画立案の内容・進め方については、自己診断の結果と照合してみる。
マイルストーンを作った、あるいは計画を作ったら、それが、自分のやり方、自分の性格、家庭の状況、あるいは自分自身の状況と照らし合わせてみて、「ここまでは、自分にお金の投資ができる」とか、あるいは「お金の余裕はほとんどない」というように、一項目ずつ、“きちんと自己分析して、自分を取り巻く環境と照合”しながら、展望に向けての道筋、あるいはフレームを描いてみましょう。
計画は『変わることが前提』であり、達成すべきゴールと考えない。
計画通りにうまく運ばなかったときの『精神的リスクヘッジ』をもっておく。
立案した計画は、“変わることが前提”であり、書いた計画がそのまま自分のゴールであるとは考えないほうがいいでしょう。計画していたことが、うまく運べばすべてハッピー…ですが、仕事をやっていくと、不確定の要素が次々に入ってくるため、往々にして自分の思い描いていた計画と、進んでいく道筋が、どんどん崩れていくことに気付く時期があります。
ですから、計画通りにうまく運ばなかった時の、“精神的なリスクヘッジ”は持っておかれたほうが良いでしょう。つまり、 「うまくことが運ばなくて当然である」というくらいの大きな気持ちで起業しないと、あとが苦しくなります。
「気負わずに、細く長く、小さく生んで、大きく育てる」という言葉がありますが、“続けていく”ということを目標において起業なさってみてはいかがでしょうか。いわゆる「業を起こす」ということ自体は、皆さん、一週間後でも、明日にでもできるのです。でも、一番大切なのは“続けていく”ということだと思います。なぜならば、続けていかないと、あなたが業をやったということの、自己実現にもならないし、周囲からのそれなりの評価も得られませんから…。そういうことを考えると、シンプルな言葉で、「継続は力なり」、大きなことはやらなくてもいいんです。着実に小さいことを積み上げていけば、いつの間にか周りが評価してくれて、それなりの道が見えてくる、ということです。
起業後(after)に、どのように 自分の『業』を位置づけるか
「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」
→判らないときは、素直に周囲に頼ろう。
わからなかったら、絶対に周囲に聞く、キャリア講座のいろんな窓口がありますから、ほんとに素直に周囲に頼りましょう。
『人との出会い』、『ヒューマン・ネットワーク』こそが、展望のアクセル、行き詰まり打開の転機につながる。
誰でも何かに着手する時点では、“初めて”の体験なのです。従って、「これまでの経験は?」と尋ねられたり、「起業するには、年齢がちょっと…」と相手が言った場合には、はっきりと答えましょう。「経験もなし、年齢もある程度以上いっています。しかし、私には、これこれのことが、このようなかたちで出来ます!」と、堂々と言えるだけの準備をしてください。これは、絶対、役に立つと思います。
それから、“人との出会い、ヒューマンネットワーク”は極めて重要。何か事を起こそうというとき、“人との関係性”こそがアクセルになるからです。私自身の経験から、壁にぶちあたった際に、「この人の知恵で、この人の助言で、この人の指示で切り抜けた」ということを、何度も経験してきました。まさに“周囲の人に助けられてきた”ということなのです。仕事に息詰まったり、人間関係に行き詰まったり、あるいは家庭の状況に行き詰まったりしたときも、やはり周囲の方々が何かを与えてきてくれたということが、私自身の転機であったと考えています。
自然に出会うことが難しい場合、志を同じくする人と出会う『場』を求めて、出向いていこう。
人と自然に出会うことが難しかったり、志を同じくする人となかなか出会うチャンスがないという方々も、たくさんいらっしゃると思います。そういう場合は、人との出会いや、出会う場を「ゲット」しようと、自ら果敢に求めていくべきですね。そして、出会いの中から自分に欠けている知識や知恵をもらう。起業するからには、“自分から出向いていく”というスタンス、姿勢が必要であると思います。
仕事をするきっかけができたら、発注者・クライアントを 『驚かすような成果物』を提示する最大限の努力を惜しまない。
→長い関係構築の第一歩の投資と考える。
いい加減な仕事を一回して、「この人に発注して、この程度の成果物だったら、もういいや」と思われたら、そこでもう、“関係は崩れる”ということなのです。ですから、「仕様書+α」を、相手、発注者に提示することを、常に自分に言い聞かせて実行する。これは、私自身がやってきたことです。つまり、“自分の努力を相手に形で見せる”ということは、仕事上の良い関係を構築し、継続していくためには、非常に意味があることなのです。
お金のマネージメントはしっかり考えておく
さて、もうひとつのキーポイントは、やはり“お金”です。仕事をして得た報酬については、きちんと管理し、次の展開のための準備資金を確保しておかなければなりません。私も何度も経験があるのですが、「山あり谷あり」ではなく、山のあとに「谷谷谷…」ということもあり、その“谷を再度、登っていくための資金”について、常に頭においておくことが必要なのです。絶対にお金のマネージメントは考えたほうがいい。
それから女性の場合、“融資”ということに抵抗がある方がけっこういらっしゃるようです。つまり、「融資イコール借金」だという意識です。しかし、これについても、ちょっと違った視点から考えてみてはいかがでしょう。「融資を受ける段階にある」ということは、あなたの能力、あるいはあなたが立ち上げられた組織の能力を、金融機関なり、公的機関が査定して、「これぐらいであればお貸ししますよ」と、評価してくれるということなのです。即ち、「融資は、借金ではなく、あなたの能力へのリターン」であるわけです。ですから、無理のない範囲での融資は十分に活用すればよいと助言します。
よく耳にする言葉としての『自己投資』は、一生続けていこう
→自分磨きを、外から、内から対応していく『ゆとり』が大切
自己投資は一生続けていく。私も勉強会や、本を読む会などにずっと継続して参加しています。また、ボランティアですが財団の運営委員もやっています。こういう活動が、すぐに何かをもたらすとは思っていませんが、これらは、“自分磨き”として大切だと考えています。外から、内から、磨き続けて、魅力的に輝いていること。これは、仕事を発注したいとクライアントに思わせる大きな要因にもなるのです。
最後に
最近の流行語に「想定の範囲内」という表現がありますね。しかし、一旦仕事を始めると、それはもう、「想定の範囲外」のことだらけです。
全部、想定の範囲内であれば良いのですが、現実は絶対にそうではありません。常に、想定し得る範囲で、想定外への準備だけはしておきましょう。この準備こそが、「あなたが仕事をし、社会と関わり、あるいは人間関係を続けていく」上での、一つのプラットフォーム(基盤)になるからです。気負わずに、長く続けることを目標に、どうぞ、皆さんも起業について、一歩、踏み出して考えてみてください。
