新年のご挨拶
決意を新たに!
京都府農林水産技術センター海洋センター 所長 中津川俊雄
新年明けましておめでとうございます。
年頭にあたり、謹んで新春のご挨拶を申し上げます。
昨年を振り返ってみて頭に浮かぶ出来事は、一時期の1ドル80円台という急速な円高の進行、株価の下落、日本経済におけるデフレの進行、政府の環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉への参加の検討、また上海万国博覧会の開催やGDP世界第2位に躍進等、世界経済における中国のめざましい台頭、北朝鮮による韓国延坪島への砲撃事件等でしょうか。
しかし、強く記憶に残っているのは、何と言いましても『異常気象』でした。春の低温、その後の多雨、猛暑、秋の装いもどこ吹く風かのような急な冬の到来等々。昨年7月の広島県庄原市、岐阜県可児市、そして同10月の鹿児島県奄美地方での大規模な集中豪雨被害、日本各地での竜巻の発生等、自然の猛威を見せつけられた1年間であったように感じます。世界的にも異常気象が原因と言われる事象が各国において見られ、やはりエルニーニョ現象、ラニーニャ現象や北極の海氷の減少といった地球規模での海況の変化が、温暖化と共に世界的な気候変動に大きく影響したようです。
気候の変動は農作物等、食糧の生産に直結しており、野菜価格の高騰や品不足、米の品質低下等、私たちの生活に大きな影響がでました。また、山のドングリ等の不作のため、熊が人里へ異常出没し、人的被害が出る等、鳥獣被害もありました。
秋の味覚の代表格であるサンマに関しては、高い海水温の影響による漁獲不振が、漁解禁当初マスコミ等でよく取り上げられました。また、サケの沿岸への来遊、河川遡上にも影響が出た模様で、漁獲が減少し、青森県陸奥湾沿岸等ではホタテガイが高水温により大量死し、大きな被害が出ました。一方、東シナ海で昨年春の水温が低かった影響か、全国的にエチゼンクラゲの来襲がなかったのは何よりでした。
府沿岸でも8、9月には30度近くまで海水温が上昇し、舞鶴湾や栗田湾、宮津湾では、10月以降育成トリガイ種苗の生残、成長に高水温の影響がみられました。
水産業界を取り巻く環境は、産地魚価の低迷、漁業後継者不足、漁業就業者の高齢化、低位水準の漁業資源等と、相変わらず大変厳しい状況が続く中、今年度からは資源管理・漁業所得補償対策がスタートすることとなります。各府県の資源管理指針に基づく資源管理計画を定め、その計画に記載の資源管理措置を適切に履行することで、漁業者の方々が加入された漁業共済制度における国の共済掛金補助率を引き上げるというものです。また、TPPは、発効から原則10年以内に参加国間での貿易に関する関税撤廃を目指すという協定ですので、参加となれば水産業界に種々の影響がでるでしょう。
ところで、昨年の「漁連だより」1月号でも触れましたが、「丹後の海の恵みを生かすアクションプラン(水産アクションプラン)」の改定が進められています。重点課題は、経営安定対策、後継者確保対策、漁村資源の活用の3つです。プランでは、ブランド水産物の生産拡大、基幹漁業である定置網漁業や底曳網漁業における担い手対策、漁村資源の活用促進による丹後産水産物の安定供給体制づくりが挙げられています。
近年、農林水産業の6次産業化が声高に叫ばれるようになりました。農林水産業は本来1次産業で農林水産物を生産するのですが、2次産業である食品加工業と3次産業である流通販売業を合わせて実施する経営形態とされ、1、2、3を足して6次産業という造語が生まれたようです。2次産業、3次産業で得ていた付加価値を農林水産業者自身が得ていこうという考えです。府内の農業分野では、九条ネギの生産者がカットネギを生産販売することで、大きな業態に成長された先進事例があります。TPP対策を考えた場合にも、6次産業化は重要な要素といえます。しかし、府内の水産業界では、これまであまり取り組まれたことのないものです。漁業者の方々ご自身で生産、加工、販売まで一手に引き受けることは難しいかもしれませんが、地域の人々の力を合わせて加工、販売に繋げることができれば、よいのではないでしょうか。
近年定置網漁で多獲されるサワラの利活用では、低価格であるヤナギ、サゴシ銘柄の有効利用が問題です。日本海側の他県では、ヤナギ、サゴシのすり身加工で練り製品化しようという試みがあります。府内でも、既にこれらのサワラ銘柄をかまぼこ原料の一部に利用していただいているようですが、丹後地域での新しいお土産物、地産地消の商品開発、あるいは高齢化が進む中、歯の悪いお年寄りでも咀嚼可能な商品開発を考えた場合、サワラを前面に出した練り製品の商品化は6次産業化を考えるよい課題ではないでしょうか。そのためには、漁業者、系統組織、水産流通、加工業界等による漁商工連携は重要だと思います。
海洋センターでは、府機船底曳網漁業連合会の要請を受け、平成21年度に水ガニのリリース後生残率調査を実施し、非常に高い生残率であることを確認しました。水ガニの漁獲禁止は、ズワイガニ資源の持続的利用のために有効であることが立証でき、昨春には底曳網漁業者の方々に研究成果を報告できました。また、平成20年度から阿蘇海環境改善技術開発という調査研究を実施中ですが、これまでの取組成果として阿蘇海内でのアサリの垂下養殖技術を開発し、地元漁業者の方々と一緒に実証事業に向けた取り組みを進めています。できあがったアサリは、地元商工観光業界でご利用いただけるよう連携をお願いしています。更に、本年3月末までに海洋センターのトリガイ種苗生産施設の増強を実施します。これまでトリガイ育成漁業者の方々の要望に十分に応えきれなかった種苗供給数を順次増加させ、ブランド水産物である「丹後とり貝」の生産拡大に貢献していきます。資源管理型漁業の推進、藻場造成関連技術や二枚貝類の生産技術開発等、資源と環境に優しい漁業技術の開発を大きな目標にしつつ、今後も皆様と一緒になって、水産アクションプランに挙げられる水産施策推進のために必要な調査研究を進めて参りたいと決意を新たにしております。
最後になりましたが、平成23年の幕開けに当たり、今年一年の皆様方のご多幸と豊漁を心より祈念いたしまして、新年のご挨拶といたします。
