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丹後の海は、いま(吸虫の生き残り戦略)

 海洋センターは、宮津市の栗田湾最奥部に面して位置しており、浜には専用の研究用の筏がある。マアジとイシダイの幼魚がこの筏周辺の海面をクルクル回る現象が、確認された。1996年9月のことである。以来、夏から秋にかけて、マアジやイシダイの幼魚、ハゼの仲間等の小魚の「クルクル舞」が時々見られるようになった。原因は、ガラクトソマムという吸虫の幼虫が脳内に寄生することであり、吸虫性旋回病という病名が付けられている。九州のブリやトラフグ、イシダイ等の養殖魚では、時々見られる風土病的な病気である。なお、人体への影響はない。
 この病気は、九州以外では殆ど知られていなかった。おまけに養殖魚ではなく、日本海沿岸の天然魚での発生情報は皆無であった。そのため、興味津々で研究室に持ち込まれたサンプルの解剖を行うのである。脳以外に異常がないことを確認したうえで、脳内を慎重に探る。写真は、ハゼ類の脳内から見つかった直径1 mm弱の球形のシストで、中に長さ3~4 mm程の幼虫が丸く収まっている。シストは1個の場合が多いが、複数個見つかることもある。
 この吸虫の最終宿主はウミネコであり、小魚は中間宿主ということになる。上空を飛ぶウミネコに見つかって捕食されやすくなるように、神経を圧迫して、小魚に「クルクル舞」をさせるものと考えられる。この寄生虫の賢い生き残り戦略には、まったく驚かされる。因みに、この吸虫の生活環には、第1中間宿主と第2中間宿主が必要で、小魚は第2中間宿主である。しかし、第1中間宿主は特定されておらず、謎のままである。 

吸虫性旋回病のハゼ類とシスト   

(平成24年6月8日京都新聞掲載 京都府農林水産技術センター海洋センター 中津川俊雄)

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宮津市字小田宿野1029ー3

ファックス:0772-25-1532

ngc-kaiyo@pref.kyoto.lg.jp

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