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京都府でイワガキが漁獲されるようになったのは、平成6年以降であり、それまで地元の漁業者も殆ど食べていなかった。当時のグルメブームに乗って、夏でも食せる大型カキとして注目されるようになり、その知名度が全国区となったおかげで、急に獲られだしたのだ。したがって丹後の海の幸としては新参者である。しかし、数年後、乱獲の影響か漁獲量は減少し、サイズも小型化してきた。そこで、海洋センターではイワガキを育成する研究をスタートさせた。
陸上水槽で卵から稚貝までを人工的に飼育する技術と、海面筏で300g以上の大きさまで育てる技術の開発を進めた。希望する漁業者へ筏で育てる技術の移転を図った。近年では「育成岩がき」の生産量は順調に伸び、天然貝よりも人気があるようだ。人気の秘密は身入りの良さ。育成貝は、同じ重さの天然貝よりも1.5倍の身が詰まっている。育成貝は潮通しが良く、餌が豊富な中層に吊すため、岩盤等に付着する天然貝より身入りが良くなる。
イワガキの生産量が伸びると、思いもよらない現象が見られるようになった。養殖筏等に稚貝が付着するようになったのだ。自然に付着する稚貝を利用することを天然採苗というが、イワガキでも天然採苗ができないか、技術開発をすることとなった。天然採苗は、人工的な飼育に比べ大幅にコストを削減できる上、大量生産も可能である。昨年までに技術開発に成功した。今後は、天然採苗により漁業者自らがイワガキの稚貝を安定して生産できるようになればと期待したい。
(平成24年4月27日京都新聞掲載 京都府農林水産技術センター海洋センター 藤原正夢)
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