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丹後の海は、いま(魚市場の調査)

    丹後の海にはたくさんの種類の生き物がすんでおり、普通に水産利用しているものだけで優に100種を超える。舞鶴市にあるJF京都漁連の魚市場では、そういった魚介類が連日のように水揚げされ、職員や仲買人らの威勢のよい競り声が響きわたる。
    海洋センターでは、そんなあわただしい魚市場におじゃまして、サワラやアジ、ブリ、イワシなど水産上重要な魚の体長などを調べさせてもらっている。その際、魚の競り売りをさまたげたり商品価値を下げたりしないよう素早くていねいにする必要がある。
    魚の体長をはかる場合、水をはじく目盛り付きの紙を貼った測定板に魚をおき、頭部の前端を0センチの目盛りに合わせ、尾部の後端の紙面に千枚通しで穴をあける。100尾を目安にこの作業をてきぱきと繰り返して、紙面にあいた穴のばらつきから体長の範囲を集計する。ものさしで体長をはかって紙に筆記するより断然早い。
   また、魚の年齢や成熟、食べている餌など外見で分からないことを調べる必要があれば、数尾から数十尾購入して研究室で解剖する。これらの情報は、研究対象とする魚の回遊や生態を推理する大切な手がかりとなる。
   ところで、魚市場には丹後の海であまり見かけない魚介類も時折水揚げされる。これらの大半は、南の海から対馬暖流にのって丹後の海に迷い込んだとみられる生物種だ。このような南方系生物の出現のしかたは、地球温暖化の影響など海の環境変化のバロメータになると考えられる。水産上重要ではない魚介類もまた、れっきとした水産の研究対象である。 

 魚市場で魚の体長を測る海洋センターの職員

(平成24年4月13日京都新聞掲載 京都府農林水産技術センター海洋センター 熊木  豊)

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