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 はじめに
 
  前回の季報(第65号)で磯(いそ)焼けの起きる原因のひとつとして植食動物の食害を紹介しました。藻場の回復、造成には植食動物の取り除きを 積極的に行う必要があります。しかし、取り除いた植食動物は、藻場回復の 害敵生物として取り扱うのではなく、有用な水産資源として積極的に利用し ていきたいものです。
  さて、磯焼けを引き起こす代表的な植食動物にキタムラサキウニが上げら れることを前回(第65号)に示しました。キタムラサキウニについては以前の季報(第31号)で他のウニとの違いや、生態、利用等について紹介しました。今回は、磯焼けを引き起こす植食動物を有用な水産資源として積極的に活用を図る手段のひとつとして、海洋センターが宮津市島陰地先で試験を行ってきたキタムラサキウニの短期蓄養の技術について紹介していきます。紹介する技術が少しでも磯根漁業の水揚げ増につながり、また、藻場の回復、造成に絡めて、磯根資源の資源培養が図れるための一助となれば幸いです。 
 
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1.短期蓄養のねらい
1)キタムラサキウニの生活を知る
  京都府沿岸のキタムラサキウニの分布は、海洋センターがこれまでに行っ  てきた調査では経ヶ岬を境にして東側(丹後海)の海域に多く、西側の海域 には少ないようです。キタムラサキウニは低い水温を好むので、高い水温に は弱いという特徴を持っています。そのため、キタムラサキウニは水温の高 くなる夏は深場に移動して転石などの陰に隠れて生活します。このことから、 水温の高くなる夏に浅い場所で見ることはほとんどありません。高い水温に 弱いことを示す例として、沿岸の水温が非常に高くなった平成6年の夏には、 キタムラサキウニが大量に死んでいる状況が何カ所かで観察されてました。 逆に、低い水温には強く、秋から春にかけては深場から水深1m以浅の場所 へも移動して、転石や岩盤の表面に散らばって生活しています。キタムラサ キウニの産卵時期は9月から10月で、この時期には生殖巣(身)は崩れや すいことから、あまりよい製品にはなりません。キタムラサキウニを利用す る場合は産卵期までに漁獲して生殖巣(身)を利用することになり、5月か ら7月は身入りの良い状態になります。しかし、天然の場合は、生殖巣(身) の色が黒ずんでいたり、強い苦味を持つ個体があります。強い苦味を持つ原 因として、キタムラサキウニの食べ物が考えられています。キタムラサキウ ニの食べる餌(えさ)は、基本的にはアカウニやムラサキウニと同じように 海藻が主ですが、食欲が他のウニと比べて非常に盛んです。したがって、周 辺に海藻がないとフジツボや死んだ魚なども食べることもあります。キタム ラサキウニは魚肉を食べ続けた場合、苦味が強くなるという報告があります。 このことから、身入りは多くても個体によっては味が劣る場合があります。 
 2)なぜキタムラサキウニの短期蓄養試験に取り組んだのか
  キタムラサキウニを始めとする海藻を食べる生物(植食動物)の食害によ って、磯根藻場が荒廃し、「磯焼け」状態になることは前回の季報(第65号)で紹介したとおりです。今後は、京都府の磯根漁場を磯焼けから守るためには植食動物の取り除きを積極的に行う必要があります。また、新たに藻場を造成していく海域についても同様の働きかけを行っていくことが大事です。取り除いた植食動物は、単に磯根漁場の害敵生物として処理・処分をするのではなく、有用な水産資源として積極的に利用していくことを検討したいものです。キタムラサキウニはムラサキウニやバフンウニとともに磯根漁業の資源です。
 
 3)キタムラサキウニの採り方を考える
  キタムラサキウニは身入りが良くなる夏場には高い水温を避けるために深 場に移動して、転石などの陰に隠れて生活することから、従来の水視漁法で漁獲することは困難でした。そのこともあり、今までは十分に活用できませんでした。漁獲は、潜水して取る方法もありますが、潜水漁法は漁業調整規則や他の漁業との関係などを始め、地元でも検討していかなければならない問題が残されています。
  そこで、現在の漁法でキタムラサキウニの生態を利用した漁獲方法を考え てみました。キタムラサキウニの年間の住み場は、水温の変化に関連しています。
図1の水深別の密度(定められた範囲に住んでいるウニの数)から、5月はそれぞれの水深帯では1m四方に3個から5個程度ですが、身入りの良くなる7月は、これまで住んでいた水深3mにキタムラサキウニはみられず、水深5mから7mにもほとんど住んでいない様子がうかがえます。しかし、水深10mから15mの密度は5個で5月とほとんど同じ密度のキタムラサキウニがいました。9月には、水深5から7mでは1m四方に1個以上の密度となり、前回(7月)と比べてやや密度は高くなりますが、水深3mにはほとんどみられません。1月は水深3mないし5mは4個程度の密度になり高くなりますが、水深10mから15mの密度は1から2個程度とやや低い状態でした。3月はそれぞれの水深帯では3から4個程度とほぼ同じ密度でした。5月は水深3mでは4個で1,3月と変わらない程度の密度でしたが、水深5−7mでは6〜7個、10ー15mでは4個と密度が高くなる様子がみられました。このことから、キタムラサキウニは水温が高い時期には深場に移動し、水温が下がってくると深場から浅場に移動してくることがわかります。特に、冬場は非常に浅い場所の転石や岩盤の表面に広く散らばって住んでいる様子をみることができます。そのため、タモ網でも容易に採ることができます。ただし、冬はまだ身入りが悪いので商品として利用できません。したがって、冬場の採りやすい時期に漁獲し、2〜3ヶ月程度の間を蓄養すれば身入りが良くなり、出荷できるようになります。
  
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