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3.作戦−3 感染経路の解明
 
 感染の道筋(感染経路)を解明できれば、感染を防ぐ方法を開発することができます。では、どういう経路で筋萎縮症の原因ウイルスはクロアワビ稚貝に感染するのでしょうか。

 通常、ウイルス病の感染経路には大別すれば、水平感染と垂直感染があります。水平感染とは、動物の個体から個体へウイルスが感染することを言います。例えばアワビでは、ウイルスが水を介してあるいは貝同士が触れ合うことによって伝播し、感染を繰り返していくわけです。垂直感染は親から子へ、さらにその子孫へウイルスが感染していくことを言います。既に感染した親貝の中で卵や精子がウイルスに汚染された場合に感染が成立します。

 上述しましたように、筋萎縮症の原因体はある種のウイルスであると考えられます。したがって、水平感染および垂直感染の両方の可能性が考えられました。

 まず、水平感染の可能性を検証するため、次のような二つの感染試験を実施しました。

 一つ目の試験では、先に述べました浸漬攻撃法により健康な1年貝に人為感染させ、試験終了時に生き残った貝を約1年間継続飼育しました。これらの2年貝を感染耐過貝(これらの貝は死ななかったけれども、ウイルスを保有していると考えられます)としました。感染耐過貝の飼育排水を健康な稚貝の飼育水槽に15日間流し、その後は、通常の海水を流して120日間飼育しました。その結果、試験開始73日目から死亡し始め、120日後の生残率はわずか10%に止まりました。死亡原因は筋萎縮症でした。一方、比較のために人為感染させなかった健康な2年貝の飼育排水を流した区では筋萎縮症は発生せず、96%が生き残りました。この結果、感染耐過した2年貝から飼育水を介して稚貝への水平感染が成立することが明らかになり、一度感染した貝を稚貝と同じ施設内で飼育する場合、水平感染の可能性を十分に考慮して作業すべきであると考えられました。

 二つ目の試験では、種苗生産に用いる採卵用の天然親貝からの水平感染の可能性を検討しました。府栽培漁業センターでは、舞鶴市の冠島地先に生息する天然貝を親貝用に特別に採取し、隔離された専用の水槽で飼育しています。海洋センターで試験に用いた天然の親貝も、同様に冠島から採取してきたものです。雄、雌別々に飼育していた親貝の飼育水槽内に健康な稚貝を収容した小さな網カゴを5日間浮かべ、その後、通常の稚貝用飼育水槽に移して60日間稚貝を飼育しました。その結果、親貝と同居させた稚貝群では筋萎縮症に感染し死亡しました。因みに雌との同居群の方が雄との同居群より高い死亡率になりました。今回の試験では親貝と稚貝が直接接触する機会はなく、明らかに水を介した感染が成立したわけで、一部の親貝は原因ウイルスを飼育水中に排出していることが考えられました。このことは防疫対策を実施する上で非常に重要なことであり、感染耐過貝と同様、種苗生産施設における作業上、親貝からの水平感染の可能性には十分な注意を払う必要があります。

 以上のように、水平感染に関する試験では大きな成果が得られました。

 次に、垂直感染があるのかどうか調べました。受精卵の表面にウイルスが付着し(卵汚染)、孵化した幼生が感染した場合は、広い意味での垂直感染と考えられています。そこで、受精卵の卵汚染の有無を検討することとしました。

 クロアワビの受精卵を清浄な海水で十分に洗浄し、卵表面のウイルスを取り除くことにより感染を防ぐことができれば、卵汚染の存在の間接的な証明となります。そこで、雌雄各1個体を1組とし、得られた受精卵を2群に分けて、片方の受精卵を徹底して紫外線により殺菌した海水で洗浄し、孵化させました(洗浄群)。一方の受精卵は特別な洗浄をせず、通常の作業で余分の精子を洗い流して、孵化させました(非洗浄群)。それぞれの孵化幼生を別々の水槽で飼育し、波板から剥離した稚貝を80日間飼育しました。その結果、洗浄群では全く筋萎縮症は発生せず、非洗浄群では本症が発生し低い生残率となりました。

 この結果から、受精卵の表面に本症原因ウイルスが付着していた可能性が高いと考えられ、垂直感染の可能性を間接的に証明できました。


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