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5.研究の成果
 
 ようやく、すべての感染経路を遮断できる可能性がでてきました。折から、新日韓漁業協定の締結に伴う機器整備事業の一環で、平成11年(1999年)3月に紫外線殺菌装置が栽培漁業センターに導入されました。そして、平成11年6月には、種苗生産の全工程に一貫して紫外線殺菌海水を用いて筋萎縮症の発生を防除した福岡県栽培漁業センターを視察し、防疫技術のポイントを府栽培漁業センター職員と共に見聞してきました。栽培漁業センターでは、平成11年8、9月に濾過槽をはじめとする給水系統や排水系統、種苗生産施設の消毒および使用する器具類の徹底した消毒を実施し、生産施設内への出入りの際の消毒の励行も徹底して、隔離飼育体制を強化しました。そして、平成11年10月には紫外線殺菌海水を流した塩ビ製波板への珪藻付けが始まりました。いよいよ従来から実施していた隔離方式に加えて、種苗生産の全工程に一貫して紫外線殺菌海水を使用する、新たなチャレンジがスタートしたのです。

 同年11月に採卵が始まり、孵化、採苗と生産は順調に進みました。平成12年(2000年)4月には剥離作業が本格化し、同年5月の連休明けをどきどきしながら待ちました。例年大量死が始まる5月の連休前後頃を無事に経過しました。大量死のピークとなる6月になっても、筋萎縮症の発生の兆候は見られません。7月になっても全く兆候がありません。8月になり、発生時期の水温上限である25℃を越えました。間違いありません。遂に量産規模での本症の防除に成功したのです。この時点で、剥離からの生残率は95%、約70万個もの健康な稚貝が育っていました。私自身が研究を始めてから約11年、やっと栽培漁業センターで無病種苗の量産に成功したのです。この間、栽培漁業センターの職員には多大の尽力と協力を頂きながら、残念な結果に終わってばかりでした。ですから、とにかくホッとしました。

 
おわりに
 
 平成11年度には、栽培漁業センターでのクロアワビ稚貝の無病化作戦が成功しましたが、今後も継続して無病種苗を生産していかなければなりません。栽培漁業センターの職員には今までと同様、防疫対策に取り組む意識が重要でしょう。雪印乳業の加工乳による集団食中毒事件ではありませんが、スローガンがあっても、作業マニュアルがあっても、実行するのは人間です。作業をする人の防疫意識の問題が非常に重要なのです。

 筋萎縮症にかかっていない稚貝は生残率ばかりでなく、成長もよくなります。一方、病気にかかった稚貝では摂餌しなくなるため成長が止まります。一度この病気にかかった稚貝も、生き残って夏を越せば再び成長しますが、その多くは翌年5月の放流時期になっても放流適サイズに達しません。さらに、それらの貝は、放流時期の5月に再び発病するケースが多く、死亡しないまでも、動きが鈍くなったり、付着力や食欲が低下し、視覚神経の障害のためか明暗の区別がつきにくくなります。これらのため、放流直後に外敵に食害され易くなるのではないかと危惧されます。このようなことは、放流貝の生残率を低下させ、放流効果を低減させる要因になりうると考えられます。また、放流適サイズに達しなかった貝はさらに育成を継続しなければならず、種苗生産の効率は一層悪くなります。

 無病種苗では、このような心配は皆無です。平成13年5月に無病種苗が初めて放流されることになりますが、漁獲に反映される放流の効果は放流3〜4年後に現れるものと考えられます。従来よりも放流貝の生残率が向上し、漁獲増につながる効果は大きくなるのでは、と期待されます。

 アワビの栽培漁業に対する漁業者と行政並びに漁協系統関係者の長年の努力が報われ、京都府下沿岸の水視漁業が盛んになることを祈念して稿を終えたいと思います。


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