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 腹口類吸虫の第一中間宿主であるカワヒバリガイは、先にも述べましたように、外来種であり、宇治川では1994年頃に定着したとされ、その後急速に分布域を広げ、生息数を増加させていると言います。イガイの仲間であり、足糸をだして石や岩等、他のものに付着することができます(写真16)。どういう経路で我が国に侵入したのかは明らかではありませんが、シジミ生貝等の淡水貝類に付着し混ざってはいってきたのではないかと考えられています。そして、このカワヒバリガイの体内に寄生した腹口類幼虫が、カワヒバリガイとともに我が国に侵入し、宇治川で生活環を成立させ、定着し、増殖したと推察されます。琵琶湖では未だ腹口類吸虫は見つかってはいません。しかし、琵琶湖内には、カワヒバリガイをはじめオイカワやコウライモロコ等のコイ科魚類、ビワコオオナマズが生息しており、腹口類が定着するのに好適な条件が揃っています。スポロシストの寄生したカワヒバリガイやメタセルカリアの寄生したオイカワ等が琵琶湖に持ち込まれると、定着、増殖する可能性が大きくなります。この場合、どのような被害が発生するのか想像できません。
 外来魚介類では、我が国国内で増殖したブラックバス、ブルーギルやコクチバスが、在来の淡水生態系を破壊あるいは混乱させるとして有名です。滋賀県が今年から施行する琵琶湖での条例では、ブラックバス駆除のためリリースの禁止を定めています。これには遊漁者等からの異論も多く、マスコミでもよく取り上げられています。ブラックバスが琵琶湖で漁獲されるアユ、ニゴロブナやモロコ等の在来の重要な魚類の稚魚等を食べてしまうということが、問題視されているのです。
 今回のケースでは、外来種のカワヒバリガイが直接在来の魚種を駆逐あるいは食害しているわけではありません。カワヒバリガイに寄生する吸虫の幼虫が、オイカワ等在来の魚種に被害を与えたのです。人がカワヒバリガイを意図的に国内に持ち込もうとしたのではなく、偶然寄生虫に汚染されたカワヒバリガイがシジミ生貝等に付着して混入してきたのでしょう。しかし、在来魚の視点からすれば、これまで見たこともない寄生虫に突然襲われ、衰弱してしまったのであり、人の身勝手な経済活動が原因と写るのではないでしょうか。
 
 安易な外来魚類の密放流による直接的な生態系への影響ばかりが注目を集めています。しかし、外来魚介類により持ち込まれる寄生虫等の侵入という、人の経済活動や余暇活動とは別の視点からの外来魚介類の引起す問題にも、今後十分に注意していかなければならないと思います。そのような警鐘の意味を込めた研究事例を紹介しました。 
 
 なお、この研究事例紹介には、関西自然保護機構会誌23(1)(2001)に掲載された論文を多く引用しました。
 
 


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