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魚礁を利用する魚たち
人工礁には様々な魚が蝟集しますが、特にクロソイ類やカサゴ類等の岩礁域等に生息する魚類の利用(生息)が多いのが特徴です。釣り・延べ縄漁業ではこれらの魚を総称して「モイオ」と呼んでいます。このモイオのうちクロソイ、カサゴ、イズカサゴ、キジハタ、アオハタの1出漁当たりの漁獲尾数を、標本日誌に記入された記録から整理し、代表的な海区で漁獲状況を比較してみました(図5)。
図5 モイオの海区別の漁獲状況
  今回用いた海区は、52海区(丹後海中央部)、137海区(丹後町中浜沖)、174海区(白石沖)です。いずれの海区も人工礁が多く配置されたり、天然礁が発達し、従前より釣り・延べ縄漁業の好漁場になっている海区です。52海区は昭和54年以降に配置された人工礁やそれ以前から多くの魚礁が投入されており、アマダイの漁獲を中心とした延べ縄漁業の漁場として発達してきました。137海区は平成7年から投入されている鋼製魚礁やその他の魚礁及び天然礁が点在する海域で、マダイ等の漁獲など釣り漁業を中心に、遊漁者の利用も多い海区になっています。174海区は天然礁である白石礁を中心に古くから漁場として発達してきた海区で、マダイ、ブリ類を始め多種な魚種が漁獲され、釣り、延べ縄ともによく利用され、遊漁者にも人気の海区となっています。各海区の総漁獲尾数を比較してみる137海区では30尾以上/出漁が釣獲されていました。137海区と比較した場合、174海区、52海区では釣獲尾数は少なく、1回の出漁での総釣獲尾数は10尾以下/出漁になっていました。釣獲されたモイオの種類は、52海区はアオハタ、137海区はカサゴ、クロソイ、キジハタ、174海区ではカサゴ、イズカサゴの釣獲尾数が他の種類より多くなっていました。52海区の海底は泥質分を多く含む海底であり、137海区は泥質分の少ない海底、174海区は岩礁域が拡がるといった海底であり、これらの海底に適したモイオが生息していることを裏付けていました。したがって、釣獲状況から、これらの特長を生かしたモイオの増殖環境の創出が考えられます。例えば、近年投入されだした木材と組合せた魚礁などモイオ類の生息に適した魚礁を投入し、資源の増大や培養等を図ることを視野に入れるなど、モイオの分布や海域などの特長を生かした魚礁の種類や配置について検討することも可能になってくるでしょう。
 次に、人工礁でのモイオの行動について調べました。調査では、新井崎沖に設置してある鋼製魚礁(8×8×8m A,B,C3基)にキジハタ(イネズ)を放流しました。放流したキジハタには事前に発信器を埋め込み、船舶に搭載した受信機によって昼夜行動を追跡しました。放流後24時間の行動は図6、7の様になっていました(図の中の丸数字は移動した順番と位置)。図6のキジハタ(全長27.5cm)は放流後は放流付近のBの魚礁に分布していましたが、その後はAの魚礁付近に移動し、A魚礁を中心に行動していました。放流点付近への移動は1回、また、C魚礁への移動は無いことから3基のうちでは「潮上み」に位置するA魚礁を利用しているようです。また、昼、夜間の移動距離や移動に要した時間 をみると、日没から夜半は150〜350m/1〜2時間程度と距離、時間とも長く、緩慢な行動からみて、休息時間帯ではないかと考えられました。しかし、夜半過ぎから夜明けにかけては50〜200m/30分〜1時間と活発な行動から、潮上みで「朝まづめ」まで活発に行動していたと思われます。いずれの行動も魚礁を中心としていました。
図7 キジハタの移動
図7のキジハタ(全長27.5cm)の行動も図6のキジハタとよく似た動きがみられました。放流後は放流したB魚礁付近に分布し、その後はA魚礁付近に移動し、近辺で小刻みな行動を繰り返していました。また、調査中にC魚礁に移動することはなく、A魚礁を中心とした「潮上み」に位置したA魚礁を中心とした行動でした。日没後の行動距離、時間は60〜70m/2〜4時間でした。その後、「朝まづめ」にかけては30分〜1時間/回と行動が活発化しました。一般に、魚類は朝、夕の「まづめ」が良く釣れると言われてきましたが、今回の「朝まづめ」にかけての活発な行動は、釣獲の関係からみて「索餌行動」であると思われます。
また、餌となる生物は「潮上み」の方が集まりやすいといわれており、魚礁域を「住みか」にしつつ、餌場としていると思われます。
 さらに、設置して置いた受信機は、図8にみられるように、放流してから2ヶ月後であってもキジハタの行動を受信しており、2ヶ月後も魚礁に居付く習性が確認されました。また、受信結果では、昼間は受信回数が多く、夜間は受信回数が減少することから、夜間には行動範囲が大きくなり(受信範囲外へ移動)、昼間は魚礁域周辺(受信できる範囲)に生息していることが分かりました。また、夜間から昼間に向かう「朝まづめ」を境に急速に魚礁域周辺に移動し、昼間から夜間に向かう「夕まづめ」を境に魚礁域から離れることも分かりました。したがって、キジハタは潮上みを中心に魚礁を有効に活用しながら生活をしていることが分かりました。また、魚礁への依存が非常に強い魚であることも証明されました。
図8 時間別の受信回数
 キジハタに代表されるこれらのモイオは産卵数(仔)が少なく、成長の遅い魚類です。そのため、魚礁への蝟集性が強いといって、魚礁での釣獲強度を強めていくと、資源状態が悪くなることが予想されます(海域によっては資源状態が非常に悪くなったと報告のある海域もあります)。そのため、今後は、釣獲量(数)、釣獲サイズや産卵時期の制限など資源の管理が必要になると思われます。適正な資源の利用にあたっては魚礁を利用している漁業者のみならず、遊漁者への働きかけや協力も不可欠になりますので、今後の魚礁の利用手段のあり方を漁業者、遊漁者共に考えていく時期に来ていると言えます。
 

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