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鞘翅(コウチュウ)目 クワガタムシ科

オオクワガタ

Dorcus hopei binodulusus Waterhouse, 1874
京都府カテゴリー

絶滅寸前種

2002年版 絶滅寸前種 2002年版を参照する
環境省カテゴリー 絶滅危惧Ⅱ類(VU)
オオクワガタ

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選定理由

国内では北海道南部から九州の広い範囲に分布するが、本州中部ではいわゆる里山の雑木林(かつての薪炭林)を主な生息地としているため、開発による生息地の消滅が深刻である。加えて、今日の過剰なクワガタブームのまさに中核をなす種として、商業目的の大量採集の影響をもろに受け、各地でその個体数が激減している。さらに、外国産の別亜種や他地域の個体群との交雑による遺伝子汚染も新たな脅威となりつつあるなど日本産クワガタムシの中で、最も危機的な状況にある種と見なされる。

形態

原色日本甲虫図鑑(Ⅱ)(保育社 1985)PL. 63、No. 1、日本産コガネムシ上科標準図鑑(学研 2012)PL. 15,、No. 1-18. PL. 16、No. 1-8を参照。日本産クワガタムシの中で最大の種で、体長(大顎を含む)はオスで30.0~75.0mm、メスで30.0~45.0mmに達する。メスとも黒色で小型個体ほど光沢が強く、上翅上の点刻列が明瞭になる。オスの大顎は全体に弧を描くように湾曲し、中央のやや前よりに斜め上に斜め前方に向く内歯がある。中~大型個体ではさらにその先端に小さな歯を備える。

◎近似種との区別 コクワガタと比べると、雌雄とも体が幅広く肢や大顎も太く短いこと、また、オスでは小型個体でも大顎中央の内歯が明確であることで区別できる。ヒラタクワガタとは、オスの大顎が強く弧を描き、中央の内歯より先端部に鋸歯状の小歯群を備えないこと、頭部の前縁部の大顎の付け根付近に2対の小さな突起を備えることで区別できる。小型のオスやメスが上翅上に明瞭な点刻列を備えることも本種の大きな特徴である。

分布

日本では、北海道(渡島半島南部)、本州、四国、九州に広く分布する。国外ではヒマラヤ~東アジアにかけて別亜種が分布している。研究者によっては東南アジアを含むアジア全域に分布する群をすべて同種とする見解もある。北海道や東北地方ではブナ林に、また九州南部では照葉樹林にも生息するが、本州中部では平地~低山地のクヌギやコナラを中心とした雑木林を主な生息地としているほか、河川敷のヤナギやエノキ林にも発生が見られる。

◎府内の分布区域 ほぼ全域に分布しているが、特に、かつて薪炭用に利用された幹が太くて背丈の低い「台場クヌギ」が多く見られる京都市北東部や亀岡市周辺に記録が多い。

生態的特性

成虫は5~9月に出現するが、日中は樹液の出る木の洞に隠れていて夜間に樹液を訪れることが多く、条件のよい餌場は縄張りを張る大型オスによって占有されている場合が多い。灯火にも飛来するが、小型のオスやメスがほとんどであり、大型のオスは縄張りに居留まる傾向が強い。秋に羽化した新成虫はそのまま蛹室内で越冬するが、成虫の寿命は長く、飼育下では5年生きた記録があり、野外でも再越冬した個体が確認されている。幼虫はクヌギなどの巨大な白色腐朽の倒木や立ち枯れのやや乾燥した部分に生息する。

生息地の現状

主な生息地が、里山の雑木林(かつての薪炭林)であるため、開発による生息地の消滅が深刻である。加えて洞に隠れる性質のある本種に対して、花火や殺虫剤などを使用した悪質な採集が行われた結果、餌場であったクヌギの樹液などが回復不可能なほどの被害を受けている例も数多く報告されている。さらに生息地の破壊につながる材割り採集も頻繁に行われており、開発の波を逃れ、わずかに残った生息地の荒廃も著しい。

生存に対する脅威

上記の要因に加え、最近では国内の他地域産の個体群や外国産の別亜種や近縁種が日本に持ち込まれるようになり、逃亡や放虫された個体との交雑による遺伝子汚染が新たな脅威となりつつある。

必要な保全対策

里山林環境の保全が第一ではあるが、加えて、上述のような商業目的の過剰な採集に対処した保全策が急務である。さらに遺伝子汚染の原因となる外国産の別亜種や、国内の他地域産の個体群の逃亡の防止はもちろん、意図的な放虫は絶対にしないよう積極的な啓発活動をする必要がある。

文献 荒谷(2000abc、2001)、井上(1988)、京都昆虫研究会(1991)

執筆者 荒谷邦雄(改稿:水野弘造)

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