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京都まちとみどり写真コンクール平成28年度第32回講評

[総評] 審査委員長 草木勝 (京都写真家協会副会長)

 今回の応募者数は、208名と前年に続き200名以上の応募がありました。応募総数484点の中にはとても完成度が高く、審査員もなかなか優劣をつけられなかった作品もありました。残念ながら、内容が当コンテストの趣旨に合わないため、選外にしなければならなかった作品も少なくなかったことを御報告します。とても惜しい気がしました。ぜひ次回は、コンテストの趣旨を御理解いただき再挑戦していただくようお願いします。
 それにしても、写真を拝見した後で応募者の年齢を確認していて、驚かされることが何度もありました。お年を召されても若々しい視点で写真撮影に取り組んでいらっしゃる方々の作品からは、深い感銘を受けました。さらに今回は小学生を含む25歳以下の参加者数が増え、応募者の年齢幅が広がりました。
 今後は従来の写真のスタイルにこだわらない、新しい表現にも挑戦する作品の応募を期待しています。近年のデジタル技術の進歩により、我々を取り巻く映像環境は日々変化しています。例えばスマートフォンの普及は誰もがいつでもカメラを持ち歩いているという社会状況を生み出しました。その結果、今まではめったに目に触れることもなかった珍しい風景や貴重な瞬間が写真に撮られて発信されています。そこには確実に新しいものの見方や認識が生まれているはずです。写真表現も時代とともに変化していくものだと思っています。

京都府知事賞 「浄道の秋」 王鞍 謙一

 最初に拝見した時の印象は、ずいぶんしっかり構成された写真だと思いました。美しい秋の古刹に僧服の列がバランスよく配置され、まるで構図のお手本のような写真です。しかしよく見ると決してカメラをじっと構えて撮れるような写真ではないことがわかります。先頭の僧が向きを変えた瞬間にシャッターが切られ、画面の反対側にいる若い女性はスケッチの途中なのでしょうか、手を止めて僧たちの方向を見ています。俗世を離れて修行中の若いお坊さんと、今の時間を心地よく楽しんでいるように見える若い女性、想像力も刺激されます。

京都市長賞 「街間の秋」 土井 一矢

 モール街の中にある吹き抜けスペースでしょうか。ファッショナブルな店舗やモダンな屋外エレベーターと紅葉した樹木が美しく調和しています。本コンテストの趣旨をよく理解されて表現されています。画面には幼い子供のおぼつかない歩行を慈しむように見守る父親や、仲睦ましそうなカップル、ひとりで黙々と食事をする若い女性が見えます。人々も風景の中でそれぞれのドラマの中を生きているようです。写真の中の人物はどんなに小さく写っていても、写真の意味を支配して、風景を背景に変えてしまう力があります。

特別賞(長岡京市長賞) 「かたらい」  筧 喜三子

 御本人も書かれていますが、本来は紅葉で有名な光明寺の晩秋より、むしろ木の葉が色づき始めた初秋に風情を感じられた撮影者の感性に感服します。逆光できれいに発色した木々を背景に、まさにおふたりの静かな語らいが聞こえてくるようです。ふたりの距離感や足元をしっかり見つめて歩む姿に、思わず息を飲むといった派手さはありませんが、静かな味わいのある写真になっています。私の記憶ではここの石段はかなり長いものだったと思います。もしもう少し画面の下が写っていれば、ふたりが登ってきた石段で写真に余韻が出たと思います

(公財)京都府公園公社理事長賞 「SLもVに向かって」  山口 恒夫

 応募票を拝見すると、作者は総合運動公園で場違いのSLと遭遇され驚かれたようです。写真もその意外さを表現するようにV字型の木の幹が大胆に画面を横切っています。木の葉や枝も蒸気機関車を遮るように撮られています。それでも蒸気機関車の存在感と大胆な構図の効果でとても力強い写真になりました。周囲の状況を見ると機関車は本来の役目を終えてこの公園に静かに展示されているのがわかります。どこか謎めいた状況や撮影方法が写真を興味深いものにしています。

(公財)京都市都市緑化協会理事長賞 「憩いの場所」 岩崎 三之利

 滴るような新緑の森から水面に突き出るように建てられたあずま屋は市民の憩いの場所になっているようです。あまり風のない日だったのでしょう、水面に支柱が反射して風景を絵画のように見せています。もう少し水面が広く写っていた方が、効果が強かったのではないでしょうか。画面がほとんど緑のモノトーンなのも良い結果に繋がりました。惜しいのは写っている人物の姿勢が曖昧なので、その存在が気になり、美しい風景に意識を集中できないことです。

(一社)京都造園建設業協会長賞 「夏の香り」 山下 文行

 半逆光の並木道と、いかにも夏らしい軽装の女性が、爽やかな初夏の気分を表現しています。女性のしっかりとした足取りから、うだるような盛夏の熱気は決して感じられません。むしろ爽やかな風が木陰を縫って吹いて来そうな気もします。きれいな背景も被写体の女性も申し分なく、作者の意図はよく表現されています。欲を言えばさらにここで予想外の小さな何かが起これば写真をより完成度が高いものにするはずなのですが。人物があまりにも真ん中に配置されているので、画面が安定しすぎてむしろ弱点になっています。

京都府市長会会長賞 「茶畑の朝」 田村 宏

 一目見てきれいな写真だと思いました。早朝の太陽によってできた長い影が美しい構図を作っています。逆光に照らされて遠景の流れ橋もきれいに浮かび上がりました。木津川には、わずかに朝もやのようなものも見えます。しかしながらどこか不自然な印象が残りました。作者は画像処理に力を入れておられるように推察します。それは決して否定すべきではないし、新しい写真の傾向を示しているかもしれません。それならばより非現実的な写真に仕上げるか、あるいはむしろあまり加工しないで自然の美しさを表現されたらもっと評価できると思います。

京都府町村会長賞 「あっぱれ田んぼ」  海道 肇一

 すっきりした画面構成でまるで報道写真のようなスキのない写真です。子供達に田植えを体験させるイベントがあったのでしょうか。少年が田んぼの土で汚れるのも気にせず、真剣に田植えに取り組むその様子が姿勢や表情からよくわかります。ピントを浅くして見る者の意識を被写体に集中させることにも成功しています。ただ見るものに何かもの足りなさを感じさせるのも事実です。必要以外のものをなるべく排除するのは写真の原則ですが、この場合、イベントの様子がもう少しわかると見る者の興味も増すと思います。 

京都新聞賞 「想いはめぐる」 吉田 和子

 雨上がりの苔の緑がとても綺麗です。顎の下に手を置いて何か考え事をしているようなお地蔵さんと遠くからこちらを優しく見ているようなふたりのお地蔵さん。その間に、これまで降っていた雨の雫を垂らしている枝が写真に空間と時間の奥行きを与えています。手前のお地蔵さんの口元にはわずかに微笑みも見えます。

KBS京都賞 「佳き日」 深井 征子

 なんとも微笑ましい写真です。写っている誰もが、結婚するふたりを心から祝福している雰囲気がよく出ています。先頭から順番にポーズがわずかずつ変化して、まるで分解写真のような面白い効果も出ています。なんといっても一番右のおじいちゃんのお茶目なVサインが最高です。

エフエム京都賞 「雨上りの午後」 三宅 憲二

 もし乳母車に赤ちゃんが乗っているなら、三人のお子様を連れてのお散歩でしょうか。余計なお世話ですが大変ですね、と声をかけそうになります。お母さんは、健康的に明るく笑っています。手前の女の子の少し大きめなゴム長がとても可愛いです。雨上がりの山や森を背景して、さわやかな家族写真になっています。

NHK京都放送局賞 「緑に囲まれて」 芝原 康夫

 そろそろ身近な自然に興味を持ち始めた娘さんと、ちょっとスマートフォンに心を奪われているお母さん。これだけ樹木や植物に囲まれているのになぜか都会的な写真に見えるのはお母さんのファッションのせいでしょうか。少し暗めの背景に現代風母子像がドラマチックに表現されています。

奨励賞 「ママが夢中になる景色」 宇都宮杏香

 画題を見るまではお子さんがお母さんを撮った写真とは気がつきませんでした。なるほど、今では珍しくなった茅葺屋根の民家を熱心に撮っているお母さんを娘さんが撮影されたのですね。この写真がスマートフォンで撮られたことも応募票を見て知りました。

奨励賞 「流れ」  左近允 桐梨

 新緑の街路樹、英文字表記の多い店舗、通過する車と人々、それから高瀬川の流れ。様々な構成要素が混在している都市としての京都を表現できています。作者はそれに「時間」も意識したと書かれています。それを表現するには川の流れをもう少し見せたい。車もぶれている方がいい。人物4人もすれ違いざまに運悪く重なってしまいました。 

優秀賞 「風 渡る」 今西 唯夫

 写っているのはまさに風ですね。突風に吹き飛ばされそうになった帽子を思わず手で押さえた女の子は、目の前のカメラを気にする余裕もありません。予期せぬ出来事に素早く反応できた作者はよほど写真を撮り慣れた方なのでしょう。わずかに右に下がったフレーミングがむしろ写真に動きを与えています。

優秀賞 「たわわと仲良し」 北川 茂博

 お揃いの茶摘み衣装を着た幼児たちがひょうきんなキャラクターと楽しそうに茶摘みをしています。子供たちの表情が生き生きしていて前景の茶畑や背景の森の緑に絣の紺色がよく調和しています。あまり夢中になったので可愛い茜だすきが肩から落ちてしまいました。写真的には大事な赤色だったのでちょっと惜しい。

 審査委員長から初心者の方へ

 できるだけたくさんの写真を鑑賞してください。撮った写真はなるべくたくさんの人に見せてください。どんな分野でもひとりでこっそり技を磨いて、上手になってから人に評価してもらおうというのはあまりいい上達法ではありません。兼好法師も徒然草の中でそう書いています。

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