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令和2年1月30日、府内で新型コロナの症例が初めて報告されました。
それから1年が経ち、ウイルスの特徴については
その一端が分かってきましたが、収まりきらない状況が続いています。
新型コロナ対応の現場では、どのようなことが起こっているのか。
府民の皆さまの健康と生命を守るため、全力で取り組んでいただいている
「最前線の声」を知っていただき、これ以上、医療を逼迫(ひっぱく)させないための
慎重な行動をお願いいたします。
京都府では、保健所、入院医療コントロールセンター、医療機関が連携しながら新型コロナ対応に当たっています。
注※新型コロナウイルス感染症対策を万全にした状態で取材・撮影を行いました。
(乙訓保健所および京都府立医科大学附属病院/令和2年12月16日、京都府入院医療コントロールセンター/令和2年12月18日)
―新型コロナ対応で保健所の役割が注目されています。
新型コロナ対応における保健所の基本的な業務は、相談対応や検査対応、受診先の調整、積極的疫学調査、自宅療養者の健康観察、患者の搬送、公費負担手続きなど多岐にわたります。
乙訓地域での、検査までのおおよその流れを説明します。まず熱が出たりして「どうしよう」となったら、事前に電話をした上で身近な診療所を受診いただき、なるべく診療所での検査をお願いしています。診療所で「CTなどの精密検査や入院が必要かもしれない」と判断されれば、病院(接触者外来)に紹介され、その病院で検査などが行われます。事情があって診療所で検査できない場合は、府医師会が運営している検査センターに依頼していただきます。それで陽性が出たら保健所に連絡が入ります。
電話対応に追われる職員の様子
―陽性患者が出たその後は。
保健師が陽性者に電話して、病状や接触者についてお話を伺います。「積極的疫学調査」と呼ばれるものですね。濃厚接触者などを特定するためには行動履歴を知る必要があるのですが、一度も会ったことのない相手にプライベートなことをお話しいただくのは相当に難しく、技術と経験を要します。現在の症状や持病などの聞き取りも大切で、その内容によって入院を急ぐかどうかを判断します。
―濃厚接触者が特定されたら。
濃厚接触者は確実かつ迅速に検査します。これを徹底しないと感染拡大は食い止められません。また、濃厚接触者ではなくても、比較的感染が拡大しやすい集団である場合は積極的に検査対象にしています。例えば、小学校のクラスや介護施設などがそうです。
唾液採取前の検体容器。PCR検査を迅速に実施するのも保健所の役割
―府民の皆さんに伝えたいことは。
乙訓保健所では、保健師はもちろん、薬剤師や獣医師、事務職員も含め、職種を問わず職員総出で新型コロナの対応に当たっています。長期にわたってスクランブル体制が続いていますので、きつくなっている部分も正直あります。医療体制の崩壊を防ぐためにも、保健所の役割をきちんと果たしていきたいと思っていますので、府民の皆さんには、引き続き会食を控えるなどの協力をお願いできればと思います。
―これまでの新型コロナに対する取り組みは。
当院では平成15年に発生したSARS(サーズ)対策で確保していた感染症専用病室で、新型コロナの対応をはじめました。これまで経験したことのない感染症でしたので、最初は手探りの状態でした。現場で次々と起こる課題を一つひとつ解決しながら、第一波・第二波を乗り越えてきました。例えば、患者の安全を確実に確保するための監視用モニターの増設、ECMOや人工呼吸器などの医療機器を同時に複数動かせるようにするための追加の電源工事などです。また、意識のない患者さんの状況を、病状をご心配されているご家族に携帯電話を通してお伝えするなど、コミュニケーションにも努めてきました。
ECMO導入後の重症患者を手術室から病室に搬送する様子
―患者さんを診てこられて思うことは。
コントロール不良の糖尿病、高血圧。こういった基礎疾患をもつ方、さらに高齢や肥満、喫煙者であることも重症化のリスクとなります。ご存じの通り、新型コロナに関しては現在のところ特効薬がありません。私が言えることは、「生活習慣病予防をしっかりとやってください」ということです。これはコロナ対策に特化したことではなく、すべての感染症において言えることなのです。
―医療の逼迫が懸念されています。
日常診療業務と並行して新型コロナの診療に当たっており、必然的に多くの業務が増えることとなります。大変なのは医師、看護師だけではありません、薬剤師、臨床検査技師、放射線技師、臨床工学技士、理学療法士、栄養士、事務系職員など、病院で働くすべての職員に多くの負担がかかっています。病床が増えても、最新の機器を導入しても、そこに人がいなければ医療はできません。感染者が増えれば、そこに医療が必要となりますが、医療従事者の数は限られています。目の前の命を助けるために、今後も私たちがやるべきことをやれるようにするためには、「感染者を減らすこと」は医療の逼迫を回避する最善の策なのです。
院内感染を防ぐためゾーニングは徹底。患者の容態はモニターを通じて確認している
―府民の皆さんに伝えたいことは。
換気、マスク、3密回避、そして手洗い。これを徹底していただく。新型コロナウイルスは、目、鼻、口から入ってきます。日頃から手を肩より上にもっていかないように意識して生活してください。手を洗ったらきちんと手を拭き乾かすことを忘れずに。濡れた手はウイルスが付着しやすくなっています。とにかく感染しない、させないことが何よりも大切です。
―京都府では全国に先駆け、設置されました。
入院調整などは保健所ごとに行うのですが、地域でバラバラに行ったのでは十分な効果が見込めないと判断。3月にはドクターを配置した入院医療コントロールセンターを立ち上げ、一人ひとりの病状や家庭の状況などを把握し、最適な入院先や療養先の調整を一元的に行っています。メンバーの中には、ダイヤモンド・プリンセス号の対策に当たったDMAT(災害派遣医療チーム)隊員もいて、その経験が早い段階から生かせたのは大きかったと思います。入院調整の方法は災害時の医療と同じなんです。流れとしては、まず保健所からコロナ患者の情報が入って、われわれが症状から1~5のレベルを割り出します。それで、例えば入院が必要だとなれば、病床の空き状況を確認し、スタッフの疲労感なども考慮しながら病院側に交渉。「受け入れ可能」となったら保健所に連絡して移送してもらいます。
患者の症状から「施設」を振り分けるため、日々調整を行っている
―コントロールセンターに対する医療現場の声は。
各病院からは「おかげさまで回っている」と言っていただいております。しかし、限られた情報での判断ということもあり、症状が軽いと思って軽症対応病院を紹介したらその後に悪化した、というケースもこれまでありました。今では保健所から送られてくる情報に少しでも疑問があれば詳しく聞くようにしています。
―府民の皆さんに伝えたいことは。
最近では家庭内での感染の率が高くなっています。感染を広げないためにも、ちょっとでも症状がある場合は、早めに身近な医療機関に電話をしてください。それから換気はすごく大切なので、寒くても時々は窓を開けるようにお願いします。
注※1月7日(木曜日)の京都新聞掲載内容を一部編集し、掲載しています。
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