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京都職人・仕事百科 第13回

まな板づくり  吉田 弘さん(京都・白木屋 69歳)

たかがまな板、されど、まな板

吉田 弘さん

 私のつくるまな板は、ひとつひとつ寸法が違うのが特徴です。「木取り」いうて、一枚の大きな板から何枚かのまな板をとりますが、これが一番重要な仕事。板の性質や木目を読み、どの部分を、どの向きに、どの寸法に切り取るか。まな板は一枚一枚の手仕事ですから、木の性質に見合ったサイズを優先させると、おのずと寸法はさまざまに。箱詰めしやすいサイズとか運搬しやすいようになんて私らは考えませんから。
 まな板に使う木は、ねこ柳、榧、柳、朴、いちょうの五種類。ねこ柳は上等ですが、家庭なら50年使えます。榧は碁盤に使われる高級木材で、まな板に使ったのは私が初めてかも。朴はまな板として非常に歴史が古く、黒っぽい木質に殺菌作用があると言い伝えられています。柳やいちょうも、昔からおなじみの素材。私は檜は使いません。素材として良くも悪くもなく普通だと思ってるので。木は地元の丹波・丹後・但馬産が主です。

白木はウソをつかない

「木取り」した後も、こうして10年、20年と乾燥を続ける。「まな板」に仕上げるのはそれからだ

 よいまな板は、使うて肩が凝りません。「受け・あたりがよく音がいい」「包丁が引きやすい」「板は軟らかいのに包丁跡がつかない」「黒ずみが少ない」など、木のまな板ならではの特徴があります。15年、20年たてば表面の削り直しもできます。こんなふうにまな板だけで商売してるのは、全国で私くらいかもしれません。
 しかし、たかがまな板でも、一人前になるまで五十年と思てます。木を扱うというのはそれほどむずかしい。でも白木は絶対ウソをつきませんから。漆器のように塗りもせず、一切ごまかしがきかない相手。それだけに、使う人の気持ちと木の性質を一生懸命考えれば、打てば響くように反応が返ってきます。使ってくれるお客さんは九割九分が家庭の台所用です。いいものをつくったら喜んでもらえる、本物のよさを買ってもらえる、それを実感できるのですから幸せなことです。

吉田 弘さん

吉田 弘(よしだ・ひろし)
 昭和13年網野町生まれ。昭和41年、妻の実家の家具づくりを継いで指物師の道へ。昭和45年頃からまな板づくりに情熱を注ぎ、白木製品製造として「京都・白木屋」を名乗る。昭和50年代より伝統のまな板づくり一本に絞り、福知山市に工房を設けている。

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