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京都職人仕事百科 第28回

絵師(舞台美術) 荒木 かおり(51歳)

親子三代、都をどりを描く

絵師(舞台美術) 荒木 かおり

 「都をどりは、さながら絵巻をひもとく世界。絵巻物を動かすような舞台を」とは明治5(1872)年、都をどり第1回の背景画を描いた義祖父・野村芳光の言葉です。今では都をどり初演時のことをご存じの方も少なくなりました。義祖父から父、娘と、舞台を描いて私で3代目。初代がどういう思いでいたのか、明治の創始精神を伝えるのも役目かと思います。

 をどりの美術は当初より絵師の野村芳国・芳光が担当。作詞は有職故実(ゆうそくこじつ)の研究者、猪熊浅麿(大正3〜戦前)・兼繁(戦後〜昭和54)両先生が担当され、特に戦後には吉井勇・谷崎潤一郎両先生も作詞に加わるなど、舞台芸術のプロではなく、文人画人が舞台を支えたところに祇園甲部の誇りがあり、その伝統は今も続いています。

京都独特の舞台芸術

 背景画は日本画の古典技法、とりわけ水干(すいひ)絵の具(乳鉢(にゅうばち)で摺(す)り、膠(にかわ)液で溶いて使う日本画絵の具)で描き続けるのは、都をどりだけのこだわりです。一般の舞台では乾きやすいアクリル絵の具が主流ですから、絵の具の違いを感じていただければうれしいですね。

 祇園祭が過ぎると、翌年の制作打ち合わせに入ります。2回目の打ち合わせで小道具帳(背景画の縮小原図)に彩色して持参。次は大道具さんとの打ち合わせ。11月末には「大寄(おおよ)り」と呼ばれる台本読み合わせ。年が明けると制作大詰め、といった流れです。4月が本番ですから一年の大半、都をどりに関わっていることになります。

 背景画の題材は春夏秋冬の京の風物。題材は作詞の内容に従います。画の時代考証も舞台美術の仕事で、時代考証に厳しい目が向けられるのは京都の伝統です。

 歌舞練場で筆をもつスタッフは7名。舞台背景は主役を引き立てるための装置ですから、芸舞妓さんの舞いがより美しく映えるように描く。大道具さん、絵師、照明さん、皆の思いがひとつになって生まれる舞台芸術です。

荒木 かおり

荒木 かおり

 昭和33年京都市生まれ。京都教育大美術科日本画専攻卒、同専攻科修了。父・故川面稜一を継いで川面美術研究所所長。二条城、桂離宮等での模写制作、社寺文化財修復・彩色復原と京四花街のをどり舞台美術を担当、所員約30名を束ねる。

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