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京都職人仕事百科 第30回

美術工芸品保存桐箱製作 談・前田 友斎(81歳)

ひたすら桐と

ひたすら桐と

 桐の木は化け物みたいなもんで、買うた時は水分が多く、使いものになりません。原木のまま最低でも10年から15年、ときには30年近く置く。こうして乾燥させると、軽うて割れにくく、湿度や温度の変化にうまいこと適応してくれる。昔は湿度計も空調設備もあらしません。それでも桐箱ひとつで、高温多湿の日本の美術工芸品を守ってきた。

 私らが使うのは国産の桐だけです。それも京都あたりの桐では目が粗くて、いまは会津、南部の桐しか使えません。値段は問わない、太くてええ木が出れば、原木のまま買う。買う時は嫌でかなわんですわ。確率から言うと使いものになるのは3分の1、半分もいかんからね。切ってみると、中に亀裂があることも。何も知らんとやってれば事は簡単やけど、真面目にやると大変なんですよ。そやけど職人ちゅうんはまともにやりたいでしょ。言われたら、できるだけのことをやりますのんや。

木取りが命

木取りが命

 桐箱作りで一番大事なのは木取り。これは今でも私がやります。収まる美術品に釣り合う杢目(もくめ)と木筋をもつ木を選んで、箱全体を自然な杢目の流れにする。まず大切なふた、これは厚みがいる。次に残りの大きい3面と小口2面。これらをどの部分からどう切り出すかを決める。あとは、うちのやり方できちっと箱に仕立てていく。

 不思議なもんでね、桐のほかに使うのも全部、植物です。木釘は空木(うつぎ)、ヤスリは木賊(とくさ)、磨きは水蝋(いぼた)。桐は材質が柔らかいので、カンナもキリも道具類が一般のものとは違ったりする。その道具を作る職人が、次々とやめています。桐箱の寿命は長くて数百年と言われます。私らの仕事は、何百年も保管されて、やっと結果が出る仕事。職人技は電算レベルでは計れませんが、桐には嘘はつけません。

前田 友斎氏

前田 友斎(まえだ・ゆうさい)

 昭和2年京都市生まれ。祖父の代からの指物業に昭和20年より従事。軸物保存用の太巻(右写真・箱内)は昭和3年、父の考案による。昭和55年国選定保存技術保持者(美術工芸品保存桐箱製作)に認定される。これまで手掛けた国宝・重要文化財保存用の桐箱は千点以上。

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