京都職人仕事百科 第32回
ふじづる細工 談・岩崎 敏枝(74歳)
山の匠からものづくりへ

地元では「ふじづる細工」とか「かずら細工」と言うてます。かずら籠(かご)とか、かずら橋と言われる「かずら」は特定の植物のことではなくて、植物のつるのこと。私らの材料はつづらふじ、藤、葛(くず)などで、東北地方で人気のあけびのつるはあまりありません。こうして山里では昔から、身近にあるつるを使って暮らしの道具を編んできたんです。
私は50代になって、山仕事をするようになりました。チェーンソーを自分で使い始めたら、仕事が面白うなってね。植物のつるは山林作業のやっかいものです。山仕事で一番困るのは地面近くを横にはう細いつるで、長いものは20メートルにもなります。このやっかいものを有効利用したのは昔の人の知恵ですね。編み方を覚えてる方がおられて、グループを作って教わるようになりました。
山の知恵を編む

つるの細工は生ものでね。藤や葛は採(と)ってすぐに編まないと硬くなってしまう。つづらふじは採って干しておくと、水に戻して使うことができますが、これも湿っている間に編まないと折れてしまう。それと、つるを採るには時期があって、秋彼岸(ひがん)から春彼岸までの半年です。木の芽を吹いてからのつるはカビや虫が入りますが、採る時期さえ間違わなければ、細工ものは頑丈で長持ち。特につづらふじは柔らかくて丈夫、太さも一定で細工にとても適しています。
このつづらふじの加工が、京都府内では他にないのだそうです。地元で教室を開いていると、こんな編み方もできる、こんなものを作ってほしいとの注文もあって、ものづくりにもっと積極的に生かせないかとの声をいただきます。自分らで細々と続けてきた細工ですが、ここにきて天然素材や山の知恵に魅力があると言うてもらえる。目の前がいきいきしてくるようで力がわきます。
- なぜ、ふじづる細工を?
伝承の技を習うことで山林でのやっかいものを有効利用できる、いい方法だと思った。 - 今、困っていることは?
つづらふじは多くないので、メンバーの高齢化とともに材料調達に苦労。 - ものづくりの楽しみは?
編み方や素材の使い方など、工夫次第で新しい可能性が広がるところ。

- 岩崎 敏枝(いわさき・としえ)
- 昭和9年舞鶴市生まれ。二男一女を育て、夫と二人暮らし。平成5年舞鶴市で女性林業グループ「あすなろ会」を結成し、ふじづる加工を開始。現在同会会長として府内ではふじづる加工の先駆的存在。平成20年度「京都府山の匠」(京都府農山漁村伝承優秀技能)認定。
