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京都職人仕事百科 第37回

蝋色師(ろいろし)※ 談・立石 彰(67歳)

究極の道具は、自分の手

 漆器はピカピカと光って表面が鏡のようですが、そのピカピカに磨くのが私ら蝋色師の仕事です。漆工芸も昔から分業で、蝋色師は塗り漆最終の表面仕上げをします。

 漆を塗るのは塗師(ぬし)屋さんの仕事です。下地、中塗り、上塗りと重ねても、漆の輝きはまだありません。それが蝋色師に届いて、炭研(と)ぎ・摺(す)り漆・磨きの三段階で表面を整える。特に最後の磨きでは、道具は何も使わない、自分の手だけで磨きます。平らな面は手のひらで、入り組んだ細部は指先で。手に角粉(つのこ)(もとは鹿の角を蒸し焼きにした粉末=現在は代用品)をつけて、少量の植物油ですべりをよくして。

 「長年やってると指紋がなくなりませんか」と必ず聞かれます。が不思議に指紋は消えません。それどころか、指紋があるから磨きにいいともいわれますが、いつの時代からこうして磨きだしたのかはわかっていないそうです。

 ただ代わりのない自分の手ですからね。慣れないうちはタコができるし、摩擦熱で火傷(やけど)はしょっちゅう。それでも、手より磨いてるもののほうが大事ですから。まあ五、六年たてば、蝋色師の手になります。

漆と対話する

道具は自分の手

 「蝋色師は漆の機嫌をとるのが仕事」と親父がよう言うてました。手で磨くのが仕事ですが、蝋色師の仕事の神髄は、漆の磨き時の見極め。漆はほんま天真爛漫(らんまん)な性格で(笑)。なかなか乾かず磨き時が来ないのは漆が機嫌を損ねているから、逆に漆が頑張り過ぎると早く乾き過ぎる。湿度をもたせた室(むろ)に入れた漆のベストの磨き時を知るには、きょう、今晩、明日の温度、湿度、天候変化から予測するしかありません。漆に振り回されるうちは半人前、それが長年のうちに気候に寄り添った漆の行動を読み取れるようになってくる。毎日毎日の体感の積み重ねですから、盆や正月に休んだだけでも勘が鈍るのがわかります。

立石 彰さん

たていし・あきら
昭和17年京都市生まれ。15歳で立石漆工所初代である父に師事。京都市立堀川高校卒業。漆塗りの蝋色一筋50年以上。京仏壇伝統工芸士。京仏壇・京仏具優秀技術者会副会長。

※蝋色師の蝋は「

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