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人権口コミ講座 130

児童虐待防止法等の改正を踏まえて

公益財団法人
世界人権問題研究センター プロジェクトチーム3リーダー
大阪府立大学大学院人間社会システム科学研究科教授  山野 則子

 さまざまな児童虐待事件を背景に、改正児童虐待防止法と改正児童福祉法が、昨年6月に参院本会議で全会一致で可決・成立し、一部を除いては今年4月に施行された。改正のポイントは、(1)被害者である子どもたちの権利を守ること、(2)児童相談所の体制を強化すること、(3)関係機関間の連携を強化することであった。
 子どもの権利については、すでに2016年児童福祉法一部改正において、「児童の権利に関する条約の精神にのっとり」「その最善の利益が優先して考慮され」と規定された。今回の改正で、さらに親などの親権者がしつけにあたって子どもに体罰を加えることの禁止が明文化された。
 この実現は、周りの大人、特に子どもに関わる専門家である保健師や教師、保育士などは、さまざまな大人への配慮は横において、まず主語を「子ども」で考えることができるかにかかってくる。しかし「子ども」を主語で考えると可能なはずの通告が、親の大変さが分かる、また親の逆恨みを意識したときに自分たち専門家が守られる体制が整っていないなどから、なされないことが生じている。
 そして、子どもの権利を第一に考えるべきであることとは「別に」、親にとって厳しい社会であることを認知しなければならない。親は失敗しながらだんだん親になっていくものであるが、子育て中の親は近所で日常的に悪戦苦闘している他の子育てを見る機会がない。うまくできなくて当たり前という意識が親自身にも周りにも生じにくい。
 つまり、社会が当たり前に子どもを主語に考える視点になることと、子育ての孤立の課題を他人ごとではなく認識し向き合うことが、児童虐待の予防になる。児童相談所に送られてからではなく、もっと早い段階で身近な地域で、そして保育所や学校やあらゆる所で、温かい目線を親に向けていれば、深みに陥る前に親も早期に「しんどい」と言える。誰もが温かい声を掛けることができ、親を非難するのではなく「しんどい」を受け止められる社会を形成することが課題である。フィンランドでは、子育てを国の責任とし、子どもは社会の子どもという認識が醸成されている。日本は、切れ目のない支援としてフィンランドの施策を取り入れようとしているが、施策だけ真似てもうまく進まない。その実現のために、根本的に子どもの権利条約を認識し、子育てに関する価値観や認識が変わるような方向付けが必要だろう。

◎ 令和2年3月発行の「人権口コミ講座21」の内容を加筆・修正し、再掲載しています。

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