ここから本文です。

人権口コミ講座 132

認知症の人やその家族の視点の重視

京都文教大学臨床心理学部教授 平尾 和之

 高齢者の5人に1人が認知症を患う時代を迎えるにあたって、認知症とともに生きていく社会の実現がテーマになっています。2015年に策定された国の認知症施策推進総合戦略「新オレンジプラン」では、認知症の人やその家族の視点を重視した点が画期的でした。昨年6月に策定された認知症施策推進大綱でも、この理念は引き継がれています。

 それまでの認知症施策は、ともすれば支援者の視点に偏りがちでした。認知症になると「何も分からなくなる」として、当事者である本人の視点が抜け落ちてしまいがちでした。しかし、当事者には個別性や多様性があり、年齢や性別、認知症の状態、環境や状況、何よりその方の人柄や生き方によって、困っておられることも、望まれることも、それぞれです。当事者の視点に立つことで、どのような支援が必要かが、おのずと見えてきます。

 京都府では2013年から認知症の本人や家族の視点を重視する「京都式オレンジプラン」を実施しています。その中では、認知症の本人と家族が望む「10のアイメッセージ」が目標として掲げられています。「私は周囲のすべての人が認知症について正しく理解してくれているので、人権や個性に十分な配慮がなされ、できることは見守られ、できないことは支えられて、活動的に過ごしている」など、「私は」で始まるメッセージです。

 宇治市は2015年に「認知症の人にやさしいまち・うじ」を実現することを宣言し、宇治市認知症アクションアライアンス「れもねいど」を展開しています。これは認知症にやさしい地域をつくるための、立場や世代を超えたつながりのことです。京都文教大学もこの活動に参加しています。2019年12月14日には認知症当事者のご夫妻による講演会を京都文教大学で開催し、認知症とともに生きる旅のご経験を語っていただきました。これまでの活動をまとめた『多様な私たちがともに暮らす地域』も、2020年1月に刊行されました。

 認知症にやさしいまちをつくっていく「共生」の取り組みは、私たち皆がお互いを尊重し支え合う社会の実現につながります。ご自身の身近で、ぜひアクションを起こしてみてください。

◎令和2年3月発行の「人権口コミ講座21」の内容を加筆・修正し、再掲載しています。

次のページへ

お問い合わせ

知事直轄組織広報課

京都市上京区下立売通新町西入薮ノ内町

ファックス:075-414-4075

koho@pref.kyoto.lg.jp

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

このページの情報は役に立ちましたか?

このページの情報は見つけやすかったですか?