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特集2 特別鼎談(ていだん)WITHコロナの時代、そして「人生100年時代」の健康づくりに向けて

新型コロナウイルス感染症の拡大は、私たちの生活様式を大きく変えました。
新たな健康課題が注目されるなか、これからの時代の健康づくりに必要なこととは。
京都府知事、京都府医師会長、京都府歯科医師会長の3人が胸襟(きょうきん)を開いて語り合いました。

※新型コロナウイルス感染症対策を万全にした状態で取材・撮影を行いました(10月11日)


京都府知事 西脇 隆俊
1955年生まれ。2018年、第51代の京都府知事に就任。府民目線の府政運営をモットーに現場主義を貫く。子育て環境日本一を掲げ、自ら現場に足を運ぶ。座右の銘は「雲外蒼天」。


京都府歯科医師会 会長 安岡 良介
1958年生まれ。府歯科医師理事・副会長を経て、2015年、府歯科医師会長に就任。子どもたちの歯磨き指導から「オーラルフレイル(口腔機能の衰え)」対策まで幅広く歯の健康を推進している。


京都府医師会 会長 松井 道宣
1957年生まれ。府医理事・副会長を経て、2017年、府医師会長に就任。麻酔科、集中治療科、外科を学び救急医療を専門とする。京都九条病院などを経営する医療法人同仁会理事長。

新型コロナウイルスに対する府の取り組みと医療の現場は

西脇 はじめに、新型コロナウイルス感染症に対して、医師会、歯科医師会の皆さまには、献身的に支えてくださり、心から感謝しております。京都府は多くの皆さまのご協力により、新型コロナウイルスの検査・医療体制、軽症者の宿泊施設の充実を図ることができました。一方で医療・歯科医療の現場では、どのようなことが起こり、どのような対策をしてこられたのかをまずはお聞きしたいです。

安岡 「スタンダードプリコーション」という言葉をご存じでしょうか。標準的な感染予防策のことで、手指の消毒やマスク、手袋の着用などがこれに当たります。細菌やウイルスによる感染を受けやすい環境にある歯科医療の現場では、もともとこうした予防策を徹底していました。コロナ禍では、それに加えて医院内の換気や消毒、予約の間隔を空けて待合室に人が混まないようにするなどの工夫をし、その結果、歯科治療によって医師や患者が感染したという報告は、現在のところありません。

松井 飛沫(ひまつ)を浴びやすい歯科医療のリスクは私も心配していました。ですが、感染症に対する経験の積み重ねが表れましたね。基本の予防策を徹底すれば感染はそう簡単に起こるものではないと歯科の先生に教えていただいたと思うんです。われわれの業界でも実は患者さんから感染したというのはあまり聞かないんです。

西脇 府では、3月下旬に医師をセンター長とした「入院医療コントロールセンター」の設置や、全国に先駆けて妊婦に対するPCR検査の実施を始めました。また、帰国者・接触者相談センターに電話がつながりにくいという状況を受け、医師会と連携した独自の検査センターも開設しました。試行錯誤でしたが、今は感染の特徴も見えてきて、より対象を絞った対策を行っています。

松井 関係者が集まってコントロールセンターをつくることで、「どの病院に、どういう症状の方が、何人入っているか」が分かるようになり、限られた病床をうまく回すことができたと思います。また、府内の指定医療機関の間で、治療方法と治療実績の情報を共有するネットワークも構築されています。これを活用すれば、経験がなく難しいと思っていた患者さんにも対応できるようになります。この情報共有が京都ではうまくいっていますので、これから波が来ても対応していけると思っています。

安岡 情報は大切ですね。歯科医師会でも、会報やホームページを通じた会員への情報提供を図ってきました。逆に現場の声を知るため、会員へのアンケート調査も6回実施しました。こうした取り組みと行政からの支援のおかげで、マスクや消毒液不足にも対応することができました。

西脇知事と安岡会長

過度な受診控えは健康上のリスクを高めてしまう

西脇 府の調査では、新型コロナウイルスの感染リスクを考えて、必要な健診を控えた方が本年5月には8割以上おられたという実態が明らかになりました。

松井 通常、企業や学校で健康診断を実施するのが4月か5月。この時期の受診率が壊滅的だったことは、感染への不安や対策を考えると仕方がなかったと思います。しかし、健康診断は本来、病気の早期発見、早期治療につなげるためのもの、健康を維持するためのものです。医療機関側も随分感染への対策が講じられて、安心・安全に健診していただける体制が整ってきています。

安岡 先日、小学校へ歯科健診に行った際にも、やはり虫歯の子どもが増えているように感じました。マスクを着用していることによって口呼吸になり、唾液の分泌が追いつかないため、口腔(こうくう)内の衛生管理がおろそかになっているケースもあると見ています。歯科の場合、健診だけでなく継続した治療が必要な方も多く、受診控えは病気の悪化・重症化に直結してしまいます。身体も歯も、痛みがないと自己判断が難しいので健診や治療の継続は自己判断せず、かかりつけ歯科医に相談していただきたいと思います。

西脇 口の中を清潔に保つことは、いろいろな病気の予防になるそうですね。

松井 新型コロナウイルスに対する抗体検査結果を見ても、最初に防衛の役割を果たすIgA抗体は唾液の中にあるため、口腔内環境を整えておくことが第一の防御になっているといえるでしょう。

西脇 先ほど健康診断の話がありましたが、京都は特定健診の比率も全国に比べて低く、がんの検診率に至っては、どの部位も全国で40位前後です。これはPOSTコロナに向けて元に戻すだけでは不十分だと考えています。最終的な目標は「健康寿命」を延ばしていくことですが、コロナ禍においては、健康維持のための運動機会も減っているそうで、これは課題ですね。

松井 よく「WITHコロナ」という言葉が使われていますが、それはコロナ禍においても必要なことは行おうという意味だと思うんです。屋外での散歩やジョギングでは、間隔さえ保っていれば新型コロナウイルスに感染する可能性は低いです。しっかりと基本の対策を徹底していれば、日常を取り戻すことはそう難しくないと考えています。

安岡 自粛生活が長期化すると、生活習慣そのものが乱れていきますからね。口の健康という観点から言えば、歯磨きと舌磨きを取り入れ、口腔内の細菌を減らし免疫力を高めることが大切です。

鼎談を行う3人の様子

人生100年時代を豊かに生きる健康づくり

西脇 京都府の総合計画では「安心できる健康・医療と人生100年時代」というのを目標に掲げていて、健康寿命を延ばそうとしているんですが、その辺りについてアドバイスを頂ければ。

松井 健康寿命で意識していくのは、やはり「要介護状態」にならないための予防です。予防とは、繰り返しになりますが、健診をして早く病気を見つけること、それから定期的に診療、治療を受けて重症化しないようにすることです。もし脳卒中や心筋梗塞などで活動に制限がかかるようになったときはリハビリなどが必要になってくるのですが、今回のコロナで妨げられているとなると、要介護に進む率が高くなることが懸念されます。これは早く元に戻したいところです。

安岡 要介護状態になるまでに身体の衰えが見られる状態を「※フレイル」といいますが、歯科とそのフレイルと関わりが深いのが「オーラルフレイル」です。滑舌の低下とか、わずかなむせとか。些細(ささい)なことなんですが、早い段階で対策を取れば、健康な状態に戻すこともできます。

オーラルフレイル対策

口の衰えをチェック!

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京都府歯科医師会監修 オーラルフレイルチェック(外部リンク)

健診:まずは現状を知ろう

学ぶ:健康長寿を目指そう

口腔体操:トレーニングしよう

※フレイル 日本老年医学会が2014年に提唱した概念で、「Frailty(虚弱)」の日本語訳。健康な状態と要介護状態の中間に位置し、身体的機能や認知機能の低下が見られる状態のことを指す。

西脇 京都府では、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるように、独自の「地域包括ケア構想」を策定しています。これまでの「病院完結型」から「地域完結型」の医療へ転換していくなか、医科・歯科の役割はどう変化していくと考えますか。

松井 医科も歯科も病気の人を診るだけではなく、病気になる前の人に関わっていく。それが、これから目指す地域包括ケアシステムだと思います。例えば新型コロナの第2波は、第1波と比べて重症者が少ないのは、感染者およびその周りの人たちの動きを適切に把握し、検査ができるようになってきたおかげでしょう。病気の治療だけがわれわれの役割ではないという時代になってきたなと思いますね。

安岡 地域包括ケアシステムの構築に当たっては、医師会・歯科医師会および多職種で連携し、一丸となって取り組んでいくことが基本的な構想の一つになっていると思います。知事にはぜひ、先頭に立って頑張っていただきたいですね。

西脇 多職種連携という言葉が出ましたが、今回のコロナのような危機が来たときには本当に総力戦で挑む必要があります。引き続き両会長にはご協力いただき、京都ならではの取り組みで府民の健康を守っていきたいと思います。

西脇 隆俊
今回のコロナのような危機には総力戦で挑む必要がある

安岡 良介
受診控えは病気の悪化重症化に直結してしまう

松井 道宣
要介護状態にならないための予防が大切

鼎談を終えて...

最初は未知だった新型コロナウイルスも、基本的な感染症対策が有効であることが分かってきました。感染症が気になって受診を控えている方も定期的な健診・検診を受けて、自分の健康状態をしっかりチェックしてほしいと思います。「WITHコロナの時代」そして「人生100年時代」の健康づくりに、京都府も独自の工夫を凝らし、オール京都で、取り組んでまいります。
西脇 隆俊

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