文化財保護の現場から 歴史を未来へとつなぐ
文化財保護の現場から 歴史を未来へとつなぐ PDF版(1,160KB)
「過去を未来へとつなげる仕事です。建物だけでなく、資料もしっかり残していきます。」
京都府教育庁指導部文化財保護課 浅井健一(写真右)
「百年、二百年前の仕事が、ここに残っとる。それを見て、同じ仕事をする。こうして一つ一つの手仕事を何百年か後の職人に伝えるんです。」
建具職人 西川滋彦さん(写真左)
重要文化財 萬福寺
松隠堂(しょういんどう)客殿ほか3棟保存修理工事
黄檗山萬福寺は禅宗のひとつである黄檗宗の大本山。中国僧隠元(いんげん)によって寛文元年(1661)に創建されました。
松隠堂客殿は隠元が引退後に住んだところで、禅宗の方丈形式の建物。現在の建物は元禄7年(1694)に建て替えられたもので、すでに300年以上が経過しています。
築後三百年の歴史遺産を救う大修復工事
京都府では、明治30年(1897)に「古社寺保存法」が公布されてから現在まで、後世の人々に歴史と文化を引き継ぐために、国宝・重要文化財建造物の保存修理を実施してきました。京都府には数多くの歴史的木造建造物があり、これらは所有者をはじめとする地域の人々の手で守られてきました。しかし、雨や風、また日照りなどによって日々損傷し、大きく良質な木材を用いた大規模な建造物でも、百年から二百年に一度は、大修理を必要とします。萬福寺の松隠堂客殿は、築後三百年以上。折々に小規模な修理が行われてきましたが、地盤沈下、建物の傾斜や木材の曲がり、ねじれなどが進み、一刻も早い大規模修理が必要な状態でした。所有者の宗教法人萬福寺から委託を受けて工事がスタートしたのは、平成13年1月のことでした。
古いものを残すために新しい技術を
今回の修理では、軟弱な地盤を改良し、建物の骨組みを改めて強化する必要から、いったんすべての部材を解体して組み直す方法がとられました。工事と並行して、入念な調査を行います。建物の部材に残る痕跡や、寺院に保存されていた古文書を調査することで、創建当時の姿やその後の変遷を明らかにするのです。
文化財の修理では、建物のもつ情報を少しでも多く残すという観点から、材料はできるだけ再使用することが原則です。解体した材料の一つ一つを点検し、多少傷んだものでも構造的・機能的に支障のない限り、補修をしてもう一度使っています。もちろん構造計算などは最新の理論に基づいてコンピュータを用いて行いますし、耐震・防火などの安全面でも新しい技術が導入されていますが、基本は、材料も工法も古いものを残すことです。文化財保護とは、ただ建物を残すだけでなく、そこに込められた“情報”を未来に伝えることでもあるのです。
建具職人の西川さんは、今年67歳。文化財の修理に携わって40年以上。その間京都府が行った国宝・重要文化財建造物の修理には、すべてかかわった。「昔の職人は、いい仕事しとった。書いたもんは残っとらんけど、さわってみたら分かります。」
修理現場には、大工、左官、建具、金物など、あらゆる伝統技法が駆使されている
解体する部材は番付けをして丁寧に扱う
建物全体を覆う「素屋根(すやね)」は丸太で組む。優れた伝統工法の一つ
地盤沈下の防止と耐震補強のため、鉄筋コンクリートの基礎を造った
木材の接合部を補強する仕口ダンパー
松隠堂客殿
修理前
地盤沈下や建物の傾斜、木材の歪みが発生。
1.修理前の客殿。地盤沈下により最大で約9センチの高低差が発生。建物全体が傾斜していた
2.ヒバ材の柱の中には大きく歪んだものもあり、44本中7本は取り替えが必要だった
3.瓦屋根は大正時代に葺(ふ)き替えられたもの。その下から建立当初のこけら葺きが現れた
修理後
建立当時の姿に復原。桟瓦がこけら葺きに。
1.建立当時の姿がよみがえった客殿。耐震や防火の備えも万全だ
2.柱の歪んだ部分だけを取り去って、継木をした。最も手間のかかる工程
3.復原されたこけら葺きの屋根。銅板を挟み込んで、こけら板の腐朽を抑えている
京都府では、文化財建造物保存修理現場の公開を行っている。平成20年度には、この萬福寺のほか、知恩院集會堂、本願寺大師堂、島田神社本殿で行われ、2000人を超える府民でにぎわった
こころのふるさと京都 文化財京都基金
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文化環境総務課
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