○京都府食の安心・安全推進条例

平成17年12月27日

京都府条例第53号

京都府食の安心・安全推進条例をここに公布する。

京都府食の安心・安全推進条例

目次

前文

第1章 総則(第1条―第4条)

第2章 食の安心・安全の確保のための基本的な施策(第5条―第16条)

第3章 食品等の安全性の確保(第17条―第21条)

第4章 府民参画の推進(第22条―第24条)

第5章 京都府食の安心・安全審議会(第25条)

第6章 雑則(第26条)

第7章 罰則(第27条―第29条)

附則

食は、命と健康を支え、人が生きていく上で基本となるものである。健康を維持するために、食の安全性を確保することは不可欠であり、私たちは、その安全性を信頼し、安心感を得てはじめて、健やかな食生活を営むことができる。現在、食の安全性を脅かし、食の安心感を損なう事態が相次いで発生しているが、これらの事態に対処し、食の安心・安全を確保することは、私たち共通の願いである。

京都は、優れた農林水産物や多彩な加工食品の生産地であるとともに、国際的な観光都市を有する消費地としての顔を持ち、歴史と伝統に培われた世界に誇る食文化を継承し、育ててきた。今、私たちは、この京都において、食の安心・安全をより高い水準で確保するため、食に関する情報を共有し、互いに協力しながら、食の安心・安全の確保に関する施策及び取組を推進していかなければならない。

このような認識の下に、食の安心・安全の確保についての基本理念を明らかにするとともに、府、食品関連事業者及び府民がその責務又は役割を果たすことにより、食の安心・安全の確保に関する施策及び取組を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来の府民の健康の保護に寄与するため、この条例を制定する。

第1章 総則

(基本理念)

第1条 食の安心・安全の確保は、府民の健康の保護が最も重要であるという基本的認識の下で必要な措置が講じられることにより、行われなければならない。

 食の安心・安全の確保は、生産から消費に至る食品等の供給に係る行程の各段階に応じて必要な措置が適切に講じられることにより、行われなければならない。この場合において、「食品等」とは、食品(全ての飲食物(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号。以下「医薬品医療機器等法」という。)第2条第1項に規定する医薬品、同条第2項に規定する医薬部外品及び同条第9項に規定する再生医療等製品を除く。)をいう。以下同じ。)並びに添加物(食品衛生法(昭和22年法律第233号)第4条第2項に規定する添加物をいう。)、器具(同条第4項に規定する器具をいう。)、容器包装(同条第5項に規定する容器包装をいう。)及び食品の原料又は材料として使用される農林水産物をいう。

 食の安心・安全の確保は、科学的知見に基づき、食品による健康への悪影響を未然に防止する観点から必要な措置が講じられることにより、行われなければならない。

 食の安心・安全の確保は、府及び食品関連事業者における食の安心・安全の確保に関する積極的な情報の公開並びに府、食品関連事業者及び府民における情報の共有を図ることにより、行われなければならない。この場合において、「食品関連事業者」とは、食品安全基本法(平成15年法律第48号)第8条第1項に規定する食品関連事業者であって、府内に事務所、事業所その他の事業に係る施設又は場所を有するものをいう。

 食の安心・安全の確保は、このために必要な措置の実施に当たっては、府、食品関連事業者(前項に規定する食品関連事業者をいう。以下同じ。)及び府民が相互に理解し、協力することを旨として、行われなければならない。

 食の安心・安全の確保は、環境に及ぼす影響を配慮した上で必要な措置が講じられることにより、行われなければならない。

(平26条例42・一部改正)

(府の責務)

第2条 府は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、食の安心・安全の確保に関する総合的かつ計画的な施策を策定し、これを実施するものとする。

(食品関連事業者の責務)

第3条 食品関連事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、自らが食の安心・安全の確保について第一義的責任を有していることを認識し、食品による健康への悪影響を未然に防止するなど、食の安心・安全の確保に必要な措置を適切に講じなければならない。

 食品関連事業者は、自らの事業活動に係る食品等(第1条第2項に規定する食品等をいう。以下同じ。)の特性に応じた食の安心・安全の確保に係る知識と理解を深めなければならない。

 食品関連事業者は、自らの事業活動に係る食品等に関する正確かつ適切な情報を提供しなければならない。

(府民の役割)

第4条 府民は、食の安心・安全の確保に関する知識と理解を深め、食品の選択に際し合理的に行動できるよう努めるものとする。

 府民は、食の安心・安全の確保に関する施策に対して意見を表明するよう努めることにより、食の安心・安全の確保に積極的な役割を果たすものとする。

第2章 食の安心・安全の確保のための基本的な施策

(食の安心・安全行動計画)

第5条 知事は、食の安心・安全の確保に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための行動計画(以下「食の安心・安全行動計画」という。)を定めるものとする。

 食の安心・安全行動計画は、食の安心・安全の確保に関する施策の目標及び内容について定めるものとする。

 知事は、食の安心・安全行動計画を定めるに当たっては、府民及び食品関連事業者の意見を反映させるために必要な措置を講じるとともに、第25条第1項に規定する京都府食の安心・安全審議会(第6項及び次章において「審議会」という。)の意見を聴かなければならない。

 知事は、食の安心・安全行動計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

 前2項の規定は、食の安心・安全行動計画の変更について準用する。

 知事は、毎年、食の安心・安全行動計画に基づく食の安心・安全の確保に関する施策の実施状況を取りまとめるとともに、当該実施状況について審議会の評価を得た上で、当該実施状況及び評価の内容を公表するものとする。

(安全性向上への支援)

第6条 府は、食品関連事業者による食品等の安全性に対する取組を促進するため、食品等の品質管理の水準を向上させるための方式の導入に対する支援その他の必要な施策を実施するものとする。

(情報の記録、提供等への支援)

第7条 府は、食品関連事業者による食品等に関する情報の適切な記録、積極的な提供等の取組を促進するため、技術的支援その他の必要な施策を実施するものとする。

(適正な事業活動への支援)

第8条 府は、食品関連事業者が関係法令を誠実に遵守し、事業活動その他の取組を通じて府民の信頼を一層高めるよう、適正な事業活動に係る啓発その他の必要な施策を実施するものとする。

(適正な食品等の表示の確保)

第9条 府は、適正な食品等の表示を確保するため、府民との連携による監視、食品関連事業者に対する指導、食品等の表示に係る制度の普及啓発その他の必要な施策を実施するものとする。

(知識の普及)

第10条 府は、食の安心・安全の確保に関する知識を普及するため、府民に対し、食品等の安全性、食品等の供給に係る行程等に関する学習機会の提供その他の必要な施策を実施するものとする。

(相互理解及び連携の促進)

第11条 府は、府民及び食品関連事業者が相互に理解を深め、食の安心・安全の確保に関する連携した取組が促進されるよう、交流機会の提供その他の必要な施策を実施するものとする。

(調査研究の推進)

第12条 府は、食の安心・安全の確保に関する調査研究を推進するとともに、その成果の普及啓発を行うものとする。

(情報の収集及び提供)

第13条 府は、食品等の安全性に関する最新の情報その他の科学的知見に基づく食の安心・安全の確保に関する情報の収集、整理、分析等を行い、府民及び食品関連事業者に対し、積極的な情報の提供を行うものとする。

(人材の育成)

第14条 府は、食の安心・安全の確保に関する専門的かつ実践的な知識を有する人材を育成するため、講習会等の開催その他の必要な施策を実施するものとする。

(危機管理体制の整備)

第15条 府は、食の安心・安全の確保に重大な影響を及ぼす事態を未然に防止し、又は当該事態が生じた場合に迅速かつ適切に対処するため、関係機関との連携の強化等必要な体制の整備を図るものとする。

(財政上の措置)

第16条 府は、食の安心・安全の確保に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講じるものとする。

第3章 食品等の安全性の確保

(農林水産物に係る措置)

第17条 食品関連事業者(農林水産物を生産し、又は採取する者に限る。)は、生産し、又は採取した農林水産物が次の各号のいずれかに該当する場合は、当該農林水産物を出荷し、又は販売してはならない。

(1) 農薬取締法(昭和23年法律第82号)第11条の規定により使用が禁止された農薬又は医薬品医療機器等法第83条の3の規定により使用が禁止された医薬品若しくは再生医療等製品(以下「禁止農薬等」という。)が使用された農林水産物(当該食品関連事業者以外の者が使用した禁止農薬等が付着、混入等をしたものを含む。)である場合

(2) 農薬取締法第12条第1項又は医薬品医療機器等法第83条の4第1項に規定する基準(以下「農薬等使用基準」という。)に違反して農薬又は動物用医薬品若しくは動物用再生医療等製品が使用された農林水産物(当該食品関連事業者以外の者が使用した農薬又は動物用医薬品若しくは動物用再生医療等製品が付着、混入等をしたことにより、農薬等使用基準を満たさなくなったものを含む。)である場合

(平26条例42・一部改正)

(遺伝子組換え食用作物に係る措置)

第18条 遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(平成15年法律第97号)第4条第1項の規定により承認を受けた第一種使用規程に係る遺伝子組換え食用作物(同法第2条第2項に規定する遺伝子組換え生物等のうち、作物その他の植物(以下「作物等」という。)であって、食用に供されるために栽培されるもの(食用には供されないが、食用に供されるために栽培される作物等との間で交雑又は混入が生じるおそれのあるものを含む。)をいう。以下同じ。)を栽培しようとする者(以下「栽培者」という。)は、あらかじめ、交雑が生じるおそれが高い範囲として知事が定める範囲内において一般食用作物(食用に供されるために栽培される作物等であって、遺伝子組換え食用作物でないものをいう。以下同じ。)を栽培する者その他規則で定める者に対し、説明会の開催その他の方法により当該遺伝子組換え食用作物の栽培の内容を周知させなければならない。

 栽培者は、遺伝子組換え食用作物の一般食用作物との交雑及び一般食用作物への混入を防止する措置(以下「交雑混入防止措置」という。)を講じなければならない。

 栽培者は、規則で定めるところにより、交雑混入防止措置の内容のほか、遺伝子組換え食用作物の栽培場所その他の規則で定める事項を知事に報告しなければならない。

 府は、食品等に対する信頼性を確保するため、遺伝子組換え食用作物の栽培の内容に係る情報の提供、栽培者による交雑混入防止措置に係る技術的支援その他の必要な施策を実施するものとする。

(安全性調査)

第19条 知事は、食品による健康への悪影響を未然に防止するため、当該悪影響が生じるがい然性及びその重大性の観点から必要があると認めるときは、法令又は他の条例に定める措置を講じる場合を除き、食品等に含まれることにより健康に悪影響を及ぼすおそれがある要因について、必要な調査を行うことができる。

 知事は、食の安心・安全の確保を図るため必要があると認めるときは、前項の規定による調査の経過及び結果を明らかにするものとする。

 知事は、第1項の規定による調査の実施に当たっては、あらかじめ、審議会の意見を聴かなければならない。ただし、健康への悪影響を未然に防止するため緊急を要するときは、この限りでない。

 知事は、前項ただし書の規定により審議会の意見を聴かないで調査を実施したときは、その内容を審議会に報告しなければならない。

(報告の徴収及び立入検査)

第20条 知事は、この条例の施行に必要な限度において、食品関連事業者又は食品関連事業者により構成する団体その他の関係者に対し、必要な報告を求め、又はその職員に、事業所その他の事業活動に関係のある場所に立ち入り、食品等、生産資材、施設、設備、帳簿書類その他の物件を検査させ、関係者に質問させ、若しくは試験の用に供するために必要な限度において、食品等、生産資材その他の物件の提出を求めることができる。

 前項の規定により立入検査を行う職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。

 第1項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

(措置勧告)

第21条 知事は、第19条第1項の規定による調査の結果、食品による健康への悪影響を未然に防止するため必要があると認めるときは、法令又は他の条例に定める措置を講じる場合を除き、食品関連事業者又は食品関連事業者により構成される団体その他の関係者に対し、健康への悪影響の防止に必要な措置を講じるべきことを勧告するとともに、その旨を公表することができる。

 知事は、前項の規定による勧告をしようとするときは、当該勧告に係る食品関連事業者又は食品関連事業者により構成される団体その他の関係者に対し、あらかじめ、その旨を通知し、釈明及び証拠の提出の機会を与えるものとする。ただし、公益上緊急を要するときは、この限りでない。

 第19条第3項及び第4項の規定は、第1項の規定による勧告について準用する。

 第1項及び第2項の規定は、第17条又は第18条第1項から第3項までの規定に違反している者について準用する。

 知事は、第1項(前項において準用する場合を含む。)の規定により勧告を受けた者が、正当な理由がなくて当該勧告に係る措置を講じなかった場合において、食品による健康への重大な悪影響の発生が切迫していると認めるときは、その者に対し、当該勧告に係る措置を講じるべきことを命じることができる。

第4章 府民参画の推進

(施策に対する意見の反映)

第22条 府は、食の安心・安全の確保に関する施策に府民及び食品関連事業者の意見を反映させるため、府民、食品関連事業者及び府が意見の交換をする機会の提供その他の必要な措置を講じるものとする。

(施策の提案)

第23条 府民及び食品関連事業者は、食の安心・安全の確保に関する施策の策定、改善又は廃止について、知事に提案することができる。

 知事は、前項の規定による提案が行われたときは、必要な検討を行い、当該提案をした者にその結果を通知するものとする。

 前2項に定めるもののほか、第1項の規定による提案に関し必要な事項は、規則で定める。

(危害情報の申出)

第24条 府民は、食品等の安全性若しくは食品等の表示に対する信頼が損なわれる事態が発生し、又はそのおそれがあると認めるときは、当該事態に適切に対処するよう知事に申し出ることができる。

 知事は、前項の規定による申出があった場合において、当該申出の内容に相当の理由があると認めるときは、速やかに、関係法令に基づく必要な措置を講じるものとする。

第5章 京都府食の安心・安全審議会

(京都府食の安心・安全審議会)

第25条 この条例の規定による知事の諮問のほか、食の安心・安全の確保に関する施策の策定及び実施に関する重要事項の調査審議並びに食の安心・安全行動計画の実施状況についての評価を行わせるため、京都府食の安心・安全審議会(以下「審議会」という。)を置く。

 審議会は、前項の規定による調査審議及び評価のほか、食の安心・安全の確保に関する事項について、知事に建議することができる。

 審議会は、委員15人以内で組織する。

 審議会において専門の事項を調査審議するために必要があるときは、前項の規定にかかわらず、専門委員を置くことができる。

 委員及び専門委員は、学識経験を有する者その他適当と思われる者のうちから、知事が任命する。

 委員の任期は、2年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。

 前各項に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。

第6章 雑則

(規則への委任)

第26条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。

第7章 罰則

(罰則)

第27条 第21条第5項の規定による命令に違反した者は、50万円以下の罰金に処する。

第28条 第20条第1項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、30万円以下の罰金に処する。

(両罰規定)

第29条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関し、前2条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。

この条例は、平成18年4月1日から施行する。

(平成26年条例第42号)

 この条例は、平成26年11月25日から施行する。

京都府食の安心・安全推進条例

平成17年12月27日 条例第53号

(平成26年11月25日施行)

体系情報
第8編 農林水産/第9章 食の安心・安全
沿革情報
平成17年12月27日 条例第53号
平成26年9月30日 条例第42号