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京和ブロンズ株式会社(京都企業紹介)

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最高品質・低コストを両立するオンリーワンの青銅インゴットメーカー

(掲載日:平成29年8月10日、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)

 京和ブロンズ株式会社(外部リンク)(久御山町)の荒堀 勝 代表取締役、河井 領 専務取締役にお話をおうかがいしました。

京都唯一の老舗青銅インゴットメーカー

―まずは事業の概要から教えてください。

代表) 1968年に創業し、私は2代目です。従業員27名で、青銅インゴットの製造をしています。インゴットとは金属を不純物が極めて少ない状態にまで精錬し、お客様の望む成分値に調整したものをひとつの塊にしたもののことです。メーカーによって形は多少違いますが、直方体のものが多いです。金の延べ棒をイメージして頂けると分かりやすいかもしれません。私たちが製造している青銅インゴットは、鋳物の原料として使われます。鋳造することで、直方体のインゴットが器状になったり、筒状になったり、プロペラや歯車になったり、あるいは芸術品になったりと、使用者によって思い思いの形になるわけです。

―青銅ですか。

代表) 一般的に青銅というと、銅を主体に、錫・鉛・亜鉛を添加した合金のことを指します。主元素となる銅は電気・熱伝導率が高く、耐水性に優れ、鉄より錆びにくいという特徴を持ちます。錫・鉛・亜鉛を加えることで、適度な展延性と、鋳造に適した融点の低さを持つようになり、さらには流動性がよくなります。青銅は、他金属と比べて加工しやすく、低コストで製造できるため、武具・農耕具・楽器・装飾品として古代より使われ続けてきました。奈良の大仏や自由の女神像も青銅製です。加えて現代では、鉄より錆びにくい特性を活かして、水道の蛇口やメーターなどの水周り部品、ポンプやバルブなどの船舶部品、ギアなどの一般機械部品にも多く使われています。それぞれの部品によって、耐食性・耐摩耗性・加工性など求められる性質が違うため、当社ではお客様の使用用途に合わせて成分を調整した、約20種類の青銅インゴットを製造しております。

画像:身近なブロンズ製品(十円玉、水道蛇口、楽器、バルブなど。奈良の大仏もブロンズですよ)

―恥ずかしながら、初めてお出会いした業種でらっしゃるのですが、京都に他に同業者はいらっしゃるのですか?

代表) 京都では当社だけです。全国でも今は10社程しかありません。青銅より安い真鍮・アルミ・ステン・樹脂などの代替品に押されている面があり、この20年間で同業者は10分の1くらいに減少してしまいました。例えば、昔は青銅でできていたシャワーヘッドや水道の蛇口なども、多くが樹脂製品などに移行してきています。しかし強度や加工性の面から、まだまだ青銅でないと作れない製品が多々あります。そうした中、当社では安くて品質の高いインゴットを追求してまいりまして、お客様の支持を得てきました。安さと品質という一見すると両立しない2つの要素ですが、これこそが今の青銅に求められている役割なのです。また青銅はリサイクル性が高いため環境にも良い材質と言えます。汎用性が高く、地球に優しい青銅は、私たちが生活するのに欠かせない金属です。

リサイクル原料を活用して低価格・高品質を実現

―安くて高品質のインゴットということですが、どうやって製造するのですか?その難しさとは?

専務) 製造は金属スクラップの選別、配合、溶解の順に行います。難しさと言えばスクラップを使うことではないでしょうか。想像して頂けると思いますが、スクラップには水分・油分・泥・プラスチック・ビニールなどが混入しています。また目には見えませんが、酸化物や、青銅に不要となる金属(鉄・アルミ・シリコンなど)も混入しています。これらを除去することを精錬と言うのですが、当社は精錬力が高いため、不純物・酸化物が完全に除去された高品質インゴットを製造することができます。

―すごいですね。

専務) ありがとうございます。次に安さの秘訣ですが、そこは扱うスクラップの種類にあります。スクラップにもグレードがあり、グレードの低いスクラップには不純物が多く含まれています。しかしグレードの低いスクラップは安値で仕入れることができます。精錬に自信のある私たちは安いスクラップを使うことで仕入れコストを下げています。これらはインゴットの販売価格へ転嫁しています。

  
  

―なるほど。

専務) また低価格・高品質のインゴット製造に欠かせないのがスクラップの選別力と配合力です。青銅インゴットの原料になるスクラップは銅屑・砲金・切粉・真鍮・バルブ・ラジエターなど、名前だけで分けると数百種類のスクラップがあるのですが、それらを丁寧に分け、細かく配合することでも仕入れコストを下げています。そしてコストダウンと同時に不純物の混入を溶解前に防ぐこともできます。選別はヤスリや磁石、バーナーチェックなどの昔ながらの選別法と、X線を用いた最先端の選別法とを組み合わせて行います。近年は様々な新合金が開発されており、リサイクル原料の選別がより重要視されてきています。また当社では一日に50t近くのスクラップを選別する必要があるのですが、当社のベテラン選別作業者はスクラップを叩いた時の音を聞くだけで種類を当てることができます。精確さとスピードが求められる現場で、本当に頼もしい限りです。

  

全国で唯一の「反射炉」と、職人技による徹底した精錬

―そうなのですね。

専務) 選別と配合が終わると、いよいよ溶解工程です。スクラップを当社自慢の反射炉で溶解してインゴットを作ります。反射炉とは、明治日本の産業革命遺産として2015年7月に世界遺産登録された韮山反射炉が有名だと思いますが、江戸時代から続く溶解炉の一種です。熱を直接対象物に当てて溶解するのではなく、反射熱を対象物に当てて溶解する形式です。その最大の魅力は、精錬に最適ということでして、一般的に精錬の基本は、脱不純物・脱酸化物・脱ガスですが、反射炉は設計および性質上これら全てに適応しているのです。通常使われている電気炉と違って、酸化物も完全に除去できます。反射炉が精錬に最適であるということは溶解の教科書にも載っていることなのですが、その運用の難しさから、現在で大型の反射炉を使っているのは当社だけになってしまいました。

 

―炎が吹き上がり、そしてひときわ高い煙突など、なんと申しますか、すごく「男前」な設備ですね!

専務) 溶解者は1200度の炎と対峙して作業を行わなければなりません。熱すぎて息もできないような環境で、汗を流し続け、溶解者には本当に頭が下がります。彼らの技術と根性があるからこそ、当社の製品は高品質と評価され続けています。設備以上に溶解者が男前ですね。

―材料も様々でらっしゃるので、溶解する時間など様々なデータ・ノウハウを蓄積されてらしゃるのでしょうね。

専務) 反射炉での精錬は、他の溶解炉と比べるととても危険で難しいもので、誰もがマネできるというものではありません。一番の違いが、溶解作業のほとんどが手作業であるということ。反射炉は精錬に最適であるということで、実に多種多様なスクラップが使われるわけですが、スクラップの成分や形状、不純物の種類や混入量などによってベストな精錬法は変わります。それを瞬時に判断し、精錬していくことができるのは熟練の溶解者だけです。溶かす順番、炉内雰囲気、温度管理、溶解時間などは毎回違ってきます。特に精錬の肝とも言える撹拌には大きなこだわりがあり、当社では2人がかりで数百回もの撹拌を行うようにしております。回数に混ぜる軌道、タイミングなどを長年データとして蓄積させてきた当社ならではの撹拌方法が確立されています。機械操作ではなく、溶解者達が目と手と知識と経験を使った精錬を行うことで、成分が均一で不純物が完全に除去されたインゴットの製造を可能としています。

  

インペラーにも使える高品質!― 販売後まで徹底した品質管理で高い歩留率を実現

―なるほど。

専務) そして高品質インゴット製造に関わる最後のポイントが品質管理です。完全な製品をお客様のお手元に届けるために、当社ではJIS規格だけでなく様々な段階、様々な方法で品質検査を行っています。検査はスクラップが湯になった時点、凝固した時点、製品として出荷した後と3段階で行っております。蛍光X線分析・伸び引っ張り試験・顕微鏡分析・破面診断・当社鋳造部門による溶解テストなどを行います。溶解作業は手作業ですが、分析は最新鋭の設備と技術を駆使して行っています。また出荷したインゴットの一部は長期保存し、お客様から意見を頂いた時にはそのロットを再溶解・再分析など再チェックし、原因を究明する体制をとっています。当社ではこのように品質の保証とお客様のサポートをさせていただいています。

  

―「当社の鋳造部門」とおっしゃいましたが、インゴットの製造だけでなく、インゴットを原料にした鋳造もなさっているということですか?

専務) 株式会社荏原製作所様向けに、ポンプのインペラー(羽根車)を鋳造しています。インペラーは薄くて複雑な形状のものですので、粗悪なインゴットからでは鋳造するのが難しいため、「インペラーにも使える青銅インゴットか!」と、よく驚かれますね。製品を再溶解して歩留を調べるというのは、社内に鋳造部門を持つ当社ならではの取り組みだと思います。毎ロット必ず行うのですが、製品歩留率99.7%以上という高い結果を残しています。このような研究体制があるからこそ、成分構成の特許製品も開発することができたのだと思います。

―そうなのですね。では、最後に今後の抱負について、教えてください。

代表) 今の日本の製造業界には高付加価値製品を作ることが求められています。その需要に応えるためには私共素材メーカーが高付加価値素材を提供できなくてはなりません。今より更に質の高いインゴットを作るため、今年度は過去最高額の研究開発投資を行っています。

専務) もちろん品質だけでなく安さへの追求も忘れていません。また、社長からの命を受けた若手社員数名が中心となって、インゴット製造以外の事業にもチャレンジ中です。これについては発表できる日も近いと思いますので、ぜひご期待ください!

 

新たな取り組みが進んでいるとのこと、今後の展開がますます楽しみです。

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