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株式会社最上インクス(京都企業紹介)

知恵の経営元気印経営革新チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。

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熱交換市場やバーチャル活用サービスの創造など未来型ビジネスへ

(2023年5月16日更新、ものづくり振興課 足利・藤田)

フィンすだち

 株式会社最上インクス(本社:京都市右京区)の鈴木滋朗代表取締役様にお話をおうかがいしました。

メーカーになる

原材料、エネルギーの高騰など環境が大きく変わる中で「日本の製造業が生き残るためには、未来型ビジネスを目指すしかないし、我々もやり方を変えるしかない」という鈴木代表。

同社自身も大きな変革期を迎えておられるようです。その1つが「メーカーになる」ということ。と言っても、狙ってではなく、紆余曲折の上に辿り着かれたものです。

想定外のニーズから生まれた「後付けフィン」で「熱交換市場の創出」

当初、フィン事業は赤字が続き、毎月各部門別に業績を見える化している同社社内からも存続を疑問視する声が上がっていたそう。
社長や担当部門の社員さんらが心折れながらも、粘り強く開発を続けているうちに「ある時、気付いたんです。想定していなかった顧客から声がかかっているということに。」とのこと。機器の放熱や、自動車の排気ガスの熱の再利用のほか、様々なプラントの配管の熱の再利用の声が数多く届くように。それは想定外の顧客であり、プラントのマナーがわからず怒られることもしばしばあったそう。しかし、そうした苦労の中で見出されたのが「後付けフィン」という自社商品。

フィン フィン

 従来の「開発」「製造」というプロセスの前後に「企画」「販売」というプロセスが加わりますが、積み重ねてきたフィン事業のノウハウがあるため効率的に、かつ、メーカーとなることで収益性は高くと、京都府・京都産業21「京都エコノミック・ガーデニング支援強化事業」の趣旨(生産性向上と付加価値向上の同時実現)にぴったりな取組でもありました。

かっこいいフィン

こうして、「顧客の創造」というドラッガーの教えのとおり、プラントでの「熱交換」という新しい市場が目の前に広がってきたのです。

 チラシ

BtoCにも進出—すだちおろし金「CITOROS(シトロス)」でフードロス対策に貢献

BtoBから、さらにBtoCに触手を伸ばしたのが、すだちおろし金「CITOROS(シトロス)」。

すだち シトロス

柑橘類の皮は湿り気を帯びており、通常のおろし金で柑橘類をおろそうとすると、皮が潰れて刃にこびりつき、目詰まりを起こして・・・。しかし、CITOROSは、表皮だけを薄くこそぎ取るようにおろすことにより、潰れずにパラパラの果皮をおろすことができる独自形状の刃を有しています。
レシピ開発もされ、顧客に体験価値を提供することがキモとなっています。そして、すだちの皮も有効に使うことができ、フードロス対策としても評価が高いのです。

特徴

バーチャル活用サービス

「メーカーになる」に加えて、もう1つは「バーチャル活用サービス」です。
例えば、熱交換市場を前に同社が取り組んでいるのは、自社商品に加えて、CAEを用いた解析サービスです。こうしたバーチャルものづくりは、試作開発で培ってこられたノウハウが大いにいかされているのです。
あるいは、遠隔地にも工場をお持ちの同社。人手不足が日本の構造的課題となる中、工場間をバーチャルでつなぐといったことも視野に入っているのです。

 

試作の大規模専業、オンリーワンのフィンなど「薄板金属加工のものづくりモール」

(掲載日:平成28年8月3日、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)

 平成19年度元気印、22年度知恵の経営の、株式会社最上インクス(本社:京都市右京区)の鈴木滋朗代表取締役様にお話をおうかがいしました。

「試作」の大規模専業企業

「京都試作ネット」(外部リンク)を立ち上げられるなど、京都産業に多大な貢献をされてらっしゃる御社ですが、今回は御社ご自身の事業概要について、改めて教えてください。ホームページでも公表されてらっしゃるとおり、100名規模で売上約20億円に達せられています。売上割合はいかがですか?

鈴木) 企画、開発、試作、量産まで事業展開をしていまして、売上の約半分が試作、残りが量産によるものです。「プレス屋」なのですが、私自身は「プレス屋」と呼ばれるのが嫌と申しますか、単に「加工」だけで成り立っていくとは考えておりませんで、いかに「付加価値」を作っていくかということを追求しています。

コネクタ、電子部品、車載部品など多岐に亘って試作をされていますが、試作部門についての御社の特長は?

鈴木) 1個の試作から量産試作加工までをどこよりも早く提供することをモットーに試作の短納期対応をしておりまして、まず第1に、数十人規模の人員体制、試作専用の設備を整え、これだけの規模で試作を「専業」で受ける企業が大変珍しいです。月産400点の試作を行っていまして、試作部門には試作専用プレス機「町家プレス」を多数整備しています。これは、「京都に残る“町家”でも使えるように」という意味を込めて当社で開発した小型のプレス機で、高精度の加工ができます。また、簡易金型(カセット金型)も駆使して、速く低コストで対応でき、高いレベルのQCDを実現しています。また、金型を専属で作る部門も備えています。

画像:プレス機、エキセンの中間ゾーンを完全カバー。小型、低価格、高精度の試作専用プレス機

「試作」は量産受注と最先端分野発見への「入り口」

なるほど。

鈴木) それ故、第2に、量産品と同等水準、同等品質の試作ができるというのも特長です。これまでの世の中の試作は、主に企画段階での「形状」確認が主目的でありましたが、当社は量産品と同等品質で作れますので、「性能」を評価するための試作品づくりとして重宝されています。また逆に、1品だけだからと手間をかけてる羽状以上に優れたものを作る、いわゆる「チャンピオン試作」ではなく、普通に量産の製造プロセスに見合った試作ができますので、後の「量産」までも引き受けることができるということです。

試作をなさっていて、難しいこと、良いことはどういったことですか?

鈴木) 厳しい点ということでは、専業で大規模な体制を組んでいますから、大量に受注しなければならないということです。そのため、展示会には意識的によく出ていますし、ホームページも常に情報を更新するように努めています。その際に難しいのは、一押しの技術・モノを表現・展示できないということです。当社が提案して試作開発した技術・モノであっても、顧客企業様からの受注という形である以上、仕方がない部分です。一方、良い点は、やはり、様々な「機会」を得られるということです。試作って、世の中の最先端の開発の相談案件も多く、今後どういったものにビジネスチャンスがあるのか見つけられるのです。

  

第2の柱「フィン事業」―オンリーワンのフォールディングフィン、最高水準の広幅&高アスペクト比フィン

その1つが放熱フィンですか。3代目社長に就任されてから立ち上げられた事業ですよね。フィンって、そんなにたくさんのところで使われているものなのですか?

鈴木) 例えば、自動車の世界では排気ガスの一部を再度吸気させるEGR(排気再循環)という手法がありますが、そのEGRクーラーですとか、家電ではプロジェクターですとか、通信分野では基地局でとか、多くの分野で用途があるのです。

 
(左から、コルゲートフィン、オフセットフィン、ウェービングフィン)

御社のフィンの特長は?

鈴木) 一般にフィンは切削加工で作られています。しかし、軽量化を追求して薄くしていくと、どうしても折れやすくなるなど課題があります。そこで、板金の手法で薄いものができないかということで、独自の技術・方法やそのための機械も開発をしてきました。軽量化はもちろん、多彩な形状にも対応できます。例えば、業界最高水準の広幅&高アスペクト比(ピッチ:高さ)薄板フィン、他ではできない山が折り畳まれた(くっついた)形状により、取付面積を多く確保でき高効率で放熱ができる「フォールディングフィン」などもあります。高さやピッチを自在に変える形状も実現しました。

  

素晴らしい。この新規事業の立ち上げで苦労されたのはどういったことですか?

鈴木) お客様はフィンがほしいのではなく、熱をどう逃がすかということに関心があるので、「フィンの形状がどうのこうの」という説明をしても響かないわけです。熱効率などエネルギーの専門知識を持って、相談対応するところから始めなくてはなりません。そうした専門知識のある人材を外部から招へいし、体制を整えてきました。今では熱交換器開発の解析・分析でフィーをいただけるようになりましたし、放熱フィンは量産部門で大きなシェアを占めるに至っています。社員のみんなが頑張ってくれたおかげです。

図:廃棄ガスと外気流入の方向 

「サービス」を生み出す

今後の展望はいかがでしょうか。

鈴木) 「ものづくり」の新しいカタチをどうやって作るかということを常に考えています。創業者である初代社長が量産事業を始め、2代目社長が試作事業をカタチにし、3代目である私はどうしていくかということです。就任して「薄板金属加工のものづくりモール」というコンセプトを掲げて日々取り組んでいますが、「製造プロセスの差別化」をどうするか、加工だけでなく開発、デザインなど「商品の差別化」をどうするか、これらにより「サービスの差別化」をどうするかということの決断をしていかねばなりません。


(「薄板金属加工のものづくりモール」イメージ)

海外展開などはいかがでしょうか。

鈴木) 海外は重要なマーケットです。日本の展示会に海外からの来場者が伸びないのが気になっているところですが、積極的に展開していきたいです。景気に左右されず、事業を継続していくための「元気」、つまり新しいことを生み出していく意欲やノウハウを持ち続ける会社を目指していきたいです。

写真:本社、スマートセンター、スマートセンター入り口

とても謙虚な人柄にも魅了されました。同社の今後の展開に目が離せません!

 

京都ビジネス交流フェア2016出展

(掲載日 平成28年2月19日)

薄板金属加工のものづくりモール

19年度元気印、22年度知恵の経営最上インクス(外部リンク)様。平成28年2月18日(木曜日)、19日(金曜日)パルスプラザで開催の「京都ビジネス交流フェア2016」に出展。

言わずと知れた「京都試作ネット(外部リンク)」のリーダー企業の一つ。
金属、樹脂、組立など幅広い加工、企画・開発、試作、量産の全ステップを網羅。レーザー・ワイヤー等だけでなく独自の「簡易金型(型・組立型)システム」を駆使することで1品から量産化試作までにも全て対応。民生・車載コネクタ、スイッチ、モーター、産業機器、電池、医療など幅広い分野に月産400点以上の試作実績。
特にその実力を顕著に示すのがフィン。業界最高水準の広幅&高アスペクト比を実現!

お問い合わせ

商工労働観光部ものづくり振興課

京都市上京区下立売通新町西入薮ノ内町

ファックス:075-414-4842

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