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京都創造者大賞2020

 京都創造者大賞2020

京都府の産業支援情報・京都府ものづくり振興課

(令和2年9月7日、ものづくり振興課 足利、吹田、星)

今こそ歴史を学べ-

新型コロナウイルス感染症による危機に終わりが見えない今こそ、偉大な先人たちが壮大なスケールで時代を切り拓いてこられた歴史の数々を学ばねばならないかもしれません。

京都創造者大賞(外部リンク)は、京都ブランドのイメージアップや京都の都市格向上に著しく貢献している方々をオール京都で称え、国内外に発信することを目的に2007年に創設し、京都府・京都市・京都商工会議所で構成する京都創造者大賞顕彰委員会が主催しています。
本年度の受賞団体は次の方々です。

京都創造者大賞
京都創造者賞

 

本年の受賞団体の皆様は、深い洞察力と鋭い感性により、危機に瀕しながらも困難に立ち向かってこられた、それぞれの歴史をお持ちの方々ばかりであり、今まさに私どもが学ぶ(まねぶ)べき貴重な題材です。

京都創造者大賞2020授賞式

公益財団法人冷泉家時雨亭文庫様(外部リンク)

藤原定家、古今和歌集。
学校の教科書でも習った記憶があられる方も多いのではないでしょうか。冷泉家は平安、鎌倉の「歌聖」と仰がれた藤原俊成、定家父子を祖先に持つ「和歌」の家系でらっしゃいます。
冷泉家に伝来する典籍類は、八百年の歳月を経て現在に伝えられ、国宝5件、重要文化財47件を始め、その数は数万点に及び、また重要文化財冷泉家住宅は、として完全な姿で現存する唯一の公家屋敷であり、和歌会、年中行事を今に伝えておられます。

これだけを聞くと、雲の上のお話で、自分のような凡人とはとてもかけ離れた世界のことに思えるかもしれません。もちろんその通りとも思いますが、一方で、そんな単純なことではなく、それこそ私どもには計り知れぬ御苦労もあられたことも、インターネットや書物で紹介されている様々なエピソードを拝読しますと分かってとても興味深いです。
今では美しい庭もかつては荒れてらっしゃったこと、税金が大変でらっしゃったこと、いよいよ手放す覚悟もなさりかけた時に府の文化財保護課が重要文化財指定のための調査を依頼してきたこと、それに同行していた朝日新聞が大きく記事にされたことで状況は一変し国も動き財団法人化へ動いたことなど、劇的なヒストリーの一端を垣間見ることができます。
室町時代には上冷泉家、下冷泉家に拡大し、戦国時代の荒波も乗り越えながら、現在地には1606年に。江戸時代の大火で焼失、再建後、明治初期には現在の京都御苑にあった公家町の公家の屋敷が、下冷泉家の屋敷も含めて、東京移住命令により全て取り壊された一方、今出川以北にあった上冷泉家の屋敷は取り壊しを免れ京都に住み続けられ、それが「完全な姿で現存する現存する唯一の公家屋敷」にも繋がっています。

教科書で習う歴史上の人物がそのまま登場し、私たちの身近な京都の町で繰り広げられたドラマと、和歌という優れた文化の形成に思いを馳せることで、「人間の可能性」に勇気が持てる気がいたします。

 

琵琶湖疏水沿線魅力創造協議会様

今も京都に琵琶湖の水を供給し続けている琵琶湖疏水。
幕末の京で志士としても活動の経歴を持つ第3代京都府知事、北垣国道は、明治維新後、東京遷都のため活力をなくした京都の復興のため、これまでの幾度か計画されたことがある疏水の建設に踏み切りました。田畑の灌漑、上下水道、精米水車、水運等のほか、御所や東本願寺等の防火、そして、世界で二番目となる水力発電による工業の振興を目的とするもので、この電力によって、京都・伏見間で日本初となる電気鉄道も開業しました。インクライン(傾斜鉄道)は、水力発電が主目的であることから、生じた産物でもあったわけです。
東京の工部大学校を卒業したばかりの田邉朔郎を土木技師に招聘し、周辺府県からも反対を受けるなど計画に賛否両論がうずまく中で、議会は市民に税金をかけてでも計画を進めると決定し、明治18(1885)年に着工。れんがや材木も直営で生産し、人夫の教育も含め、外国人技師の手を借りることなく、トンネルの開削など日本初の大工事に挑まれました。
発電や工業振興、水道等だけでなく、南禅寺水路閣、哲学の道をはじめ、京都に多くの水辺の憩いを生み出し、人々の暮らしや心にこれほどまでに浸透するものとなっています。

水運については、昭和26年を最後に姿を消していましたが、平成25年に京都市長、大津市長の参加による船下り試乗会を行ったことを契機に、復活に向けた検討が始まりました。水深の浅さ、流れの速さなど多くの課題がありましたが、様々な試行事業を重ねて、平成29年、琵琶湖疏水沿線魅力創造協議会が新たに発足し、平成30年からは、本格的な運航がスタートしました。

丹後ちりめん創業300年事業実行委員会様(外部リンク)

1300年。
歴史の長さでは前二者をも上回る丹後のシルク生地。奈良時代、聖武天皇に献上され、正倉院御物として保存されています。現在、丹後織物工業組合に所属する組合員数は約680人と言われるが、日本の着物の約7割が丹後の生地でできており、圧倒的なシェアを誇ります。

中でも「丹後ちりめん」は、生地表面にシボと呼ばれる細かい凹凸を有する後染め織物の総称で、300年の歴史があります。江戸時代に西陣で「お召ちりめん」が誕生した後、丹後の織物は「田舎絹」と呼ばれ、売れ行きが低迷したそうです。ちょうど飢饉も重なり、大変な危機であったそうですが、その危機を乗り越えようと西陣からちりめん織りの技術を持ち帰ったのがきっかけで、独特のシボを持ったちりめんの生産に成功し、瞬く間に丹後一円に広まりました。

シボがあることで、シワになりにくく、しなやかで柔軟性があり、凹凸の乱反射によって染め上がりの色合いが豊かで深みのある色を醸し出すことができ、絹の風合いを一層発揮します。
製法は、撚りのない経糸と、1メートルあたり3,000回前後の強い撚りをかけた生糸を交互に織り込み生地にした後、精練によって生糸の汚れやタンパク質を取り除くことにより、緯糸の撚りが戻ろうとする力で生地全面に細かく美しいシボが生まれます。

生地だけでなく、着物の完成品まで一貫生産されており、日本の和装を牽引するだけでなく、近年は仏メゾンとのコラボによるパリコレ発表、世界最高峰のインテリア&デザイン展示会MAISON&OBJETへの出展や、従来のイメージの枠にとどまらない「TANGO OPEN」による新たなブランディング等を積極的に手掛けていらっしゃいます。

株式会社クロスエフェクト様

きっかけは、国立循環器病研究センターからの相談でした。
赤ん坊の100人に1人が先天性小児心疾患を患っています。その手術は人工心肺装置を使用して行うため、手術時間は90分程度に制限されていると言います。しかし、いざ切開してみると、異形になり過ぎていて、1回の手術では終えることができないというケースも多く発生しているなど、医師の悲痛な現状があります。

光造形(3Dプリンティング)等で作製したマスターモデルを基に、シリコーン製のゴム型を作製し、その型に真空状態でウレタン系樹脂を流して樹脂製品を複製する「真空注型」工法により、世界最速の成形加工技術を有する同社。さらに、京都試作ネット第3代代表として、京都をSHISAKU産業のリーディングエリアへと牽引してこられました。
しかし、そんな同社をもってしても、技術的に困難な上に、開発資金の問題もある中で、突き動かしたのは、人の命を救うという意義を前にした使命感。
厳しく困難な開発を重ね、世界初となる内腔も完璧に再現した軟質心臓モデルを作り出されました。CTデータからの正確な情報により作成され、軟質素材かつ内腔表現しているオンリーワン製品で、切る・縫う・曲げる・捻じる等の動きが可能となっており、複雑な心臓内部構造の理解に寄与するものです。

現在も、新型コロナウイルス感染症により、エアロゾルが発生するような診療場面等で使用が推奨されるN95マスクが全世界的に不足する中、相当の独自マスクの開発に挑戦中です。

 

お問い合わせ

商工労働観光部ものづくり振興課

京都市上京区下立売通新町西入薮ノ内町

ファックス:075-414-4842

monozukuri@pref.kyoto.lg.jp