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青年海外緑と文化の大使レポート(ネパール)

大野 典子(出身:城陽市)平成23年度3次隊(職種:保健師)

 2012年1月からネパールに派遣され、早9ヵ月が経過しました。現在、ネパール第2の都市ポカラ市の市役所に配属され、市内を毎日巡回するモバイルクリニックに同行しています。子供の予防接種、妊婦健診、家族計画の3つの事業を実施しており、日本の保健医療とのあまりの違いに、戸惑い苦戦しつつの毎日です。ただ人は好意的で、誰もがナマステと声をかけてくれ、人懐っこい笑顔と人情味あふれる人柄が多く、すぐに友達になれます。


 
姉妹都市の駒ヶ根市から寄贈された救急車で市内を巡回し、妊婦エコーで妊婦健診中のネパール人スタッフ。 



日本と清潔の観念が全く違う。クリニック会場では、薬液、注射針、ゴミが散乱する状態で接種している。


 [ネパールの事情]
 ネパールは、亜熱帯の平原と標高8000m以上のヒマラヤ山脈が存在する自然豊かな国で、30以上の民族が暮らす多民族国家です。北海道の約1.8倍の面積に人口約2,952万人(2008年)が暮らしています。言語は、ネパール語が公用語で、宗教はヒンドゥー教が多数を占め、仏教と調和しています。

  国内産業は発展しておらず、70%以上が農業に従事しており、失業率も42%(2008年)と高く、街中でも日中何もしていない男性の姿をよく見かけます。一方女性は家事労働や農業に従事し、女性の地位は依然低く、子供も男子を重宝する風習があります。15歳以上の識字率は48.6%(2001年)で、男性が62.7%に対し女性は34.9%と低いです。クリニックでも、自分の名前を書けない母親によく出会います。常に電気不足で毎日計画停電があり、電気も暖房もない冬季の寒さは厳しいです。

 食事は、時間帯が大きく違い、朝と夜にダルバートという豆のスープにご飯、野菜の炒め物のセットを毎日食べています。おかわり自由のダルバートを、手で上手に食べるネパール人は、日本人から見たらすごい量を食べます。昼にカジャという軽食(揚げ物が多い)、そして砂糖たっぷりのチアというミルクティーを飲む習慣があります。基本的に、塩分、油分、糖分を沢山摂取する食生活です。

[肥満者が急増中]
 車やバイクがなかった時代は歩くしかなかったネパール人も、今ではバイク所有者が増え、バスも便利なので、都会ではほとんど歩かない生活スタイルになっているようです。そのため肥満者が増加し、大きなお腹の人が多いです。子供たちもコーラやファンタなどの甘い清涼飲料水を頻繁に飲むので、今後肥満対策はこの国の大きな課題となるでしょう。

 

[健康カリキュラムを実施]

 

 女性グループに血管モデルで高血圧の指導中。
 

 これまでに、女性グループを対象に身長・体重・BMIを測定し健康についてのカリキュラムを6回197名に実施しました。高血圧が糖尿病や脳梗塞に影響する話などは真剣に聞いていて、関心がある様子です。結果は、肥満傾向と重度肥満で55%と半数以上を占め、痩せは2%と少なく、正常は43%でした。肥満は大人だけでなく子供にも大きな問題なので、このような肥満について意識を高める講座を今後も実施し、家族全体の食生活指導につなげていきたいです。

表:市内女性グループへの健康カリキュラム実施結果(対象者197名) 2012年

 

  平均年齢 平均体重 平均身長 平均BMI 平均血圧(収縮期) 平均血圧(拡張期) やせ 正常 肥満傾向 重度肥満
1回目 40.9 60.7 153.7 25.7

117.1

73.5

1 9 4 3
2回目 40.7 60.4 151.4 26.4

120.0

75.5

0 8 9 4
3回目 41.5 59.2 153.5 25.1

117.9

76.8

0 10 7 2
4回目 40.9 57.5 149.9 25.6

122.0

77.3

0 15 20 4
5回目 42.0 59.9 150.4 26.5

121.8

76.8

1 15 12 9
6回目 44.7 54.7 150.0 24.3

115.1

71.1

1 23 26 2
合計 41.8 58.7 151.5 25.6

119.0

75.2

3 80 78 24


[着任しての感想]
 ネパール人は、初めて会う人でも「歳は?」「収入はいくら?」「結婚しているのか?」と遠慮なく聞いてきます。また、日本人はお金持ちだと思われているので、モノやお金をよく要求されますし、日本へのビザを書いてくれと言われることもしばしば。当初はそんな会話に戸惑いましたが、今は、そんな会話も全く悪気がなく挨拶替わりだと解っていますし、努力しない国民性も理由があってのことだと気付きました。日本よりお金も電気も仕事もなくても、なぜかみんな明るく楽しそうに暮らしています。それは、幸せに多くを求めず、おしゃべりをいっぱいして笑って暮らしているからだと感じました。小さな事にも幸せを感じられ、家族の絆が深いネパールは、今の日本が失いかけている人間の幸せの根っこがあります。今後もそんなネパールの人たちの健康づくりに、少しでもお手伝いができるような活動をしたいです。

 

  環境教育隊員の先輩と毎月共同作成し、ポカラ市役所の玄関に貼っている環境と健康の啓発ポスター。今月は「手洗い」と、「リサイクル」について。左は、今回改良作成したネパール語版の妊娠カレンダー。

 

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