第11回府立病院あり方検討委員会の議事要旨
1 開催日時
平成7月12日(火曜日) 午後1時15分から3時まで
2 場所
京都平安会館
3 出席者
(1)検討委員
京都医療ひろば世話人代表 奥田 美智
京都新聞編集委員 川端 眞一
企画環境部経営戦略室企画推進役 高山 直彦
独立法人国立病院機構宇多野病院企画課長 棚橋 一博
京都府看護協会会長 西城 嘉子
京都府医師会副会長 森 洋一
※委員長は京都新聞編集委員 川端 眞一
(2)調査委員
渡邊、金井、鳩調査委員(NPO法人「公的病院を良くする会」)
4 傍聴者
3名
5 審議状況等
(1)府のリハビリテーション施策の展開の状況について、京都府から報告
(2)意見書のとりまとめ
これまでに出された委員意見をとりまとめた事務局案を審議、主に委員からの修正意見に基づき、字句修正の上、意見書としてとりまとめ
別紙
府立病院の今後のあり方について
平成17年7月
府立病院あり方検討委員会
1 経営理念・ビジョンの確立
(1)民間病院と競合・競争するような病院運営ではなく、「民にできることは民に、公でしかできないことを公で」を基本にすべきであるが、お互いに協調しながら、地域住民のためにということを基本的な視点とすべき。
(2)将来、めざす病院の方向性、理念を内外に、また、病院運営に関わるすべてのスタッフに明らかにしていくことが必要。公的な役割を果たし、患者に信頼される病院づくりに向け、特に、病院スタッフ間の意思疎通が十分に行われ、情報が共有される環境を整備していくことが重要。
(3)病院運営を支えるスタッフにとっても、魅力ある病院であることが必要。専門医や専門・認定看護師など、府の良質な医療を牽引する人材育成をめざし、職員が病院を誇りとし、社会的責任に基づいた自己実現の中での良き病院づくりを期待。
【洛南病院】
(1) 精神科救急医療等担うべき医療内容の明確化
- 洛南病院でしか担えない、京都府南部精神科救急医療システムの基幹病院としての役割をしっかりと果たし、関係機関との連携の中での円滑な運用に期待。
- 「心神喪失者等医療観察法」への対応については、全国的な法の運用動向を把握し、国の責任を明確にした上で京都府として対応を判断すべき。
- また、政策医療性の高い児童・思春期精神疾患、薬物中毒などについては、対象患者数等医療ニーズを十分把握し、他の医療機関との役割分担なども踏まえた上で、専門医の確保等基本的な条件整備も含めた検討が必要。
(2) 地域連携、地域理解促進
- 患者の人権尊重、積極的な社会復帰支援を、理念として掲げ、「こころのバリアフリー宣言」を推進する立場から今後とも地域連携を強化、推進すべき。
- 重症、不安定患者の重点的受け入れが逆に、地域から孤立した病院となりかねない懸念にも十分留意。民間病院・地域民生児童委員・福祉事務所・保健所等行政機関等と協働して「精神障害者」への偏見をなくし、「精神科病院」への理解を得ていくことが重要。
(3) 近い将来における全面改築
- 全国的な通院中心への流れの中で、将来減少すると考えられる患者数の動向を見越し、重症・不安定患者の重点的受入や病棟運営の効率化、手狭になった病室の拡張という諸点を考慮した全面改築の検討が必要。かなりの投資を必要とする全面改築検討に当たり、新たなサービス展開も含めた経営シミュレーション等が必要。
【与謝の海病院】
(1) 丹後医療圏の中核病院として役割の明確化
- 「地域の病院・診療所等と連携し、圏域全体の医療基盤充実を図る」「急性期対応を基本とし、高度医療を担う」「病院の資源・資産を活用、地域医療を支える」という病院の理念・役割に沿って、
(ア)地域医療連携室等の組織体制の確立
(イ)症例検討会の積極的開催
(ウ)開放型病床の設置
(エ)医療機器等の地域共同利用
(オ)電子カルテシステムによる地域医療ネットワーク等の取組を具体化、名実ともに、「地域医療支援病院」をめざすべき。
- 地域住民に必要な医療が十分に提供されることが重要である。また、地域医療機関・福祉施設等との連携状況を踏まえて、必要に応じ「亜急性期病床」の導入も検討すべき。
- 圏域の中核病院として、(ア)結核・SARS等感染症、(イ)災害派遣医療体制の整備など、医療情勢の変化に応じた、種々の課題に対応していくことが必要。
(2) 診療体制の見直し
- 圏域では不足していると考えられる医療については、他の医療機関との役割分担も十分踏まえた上で、例えば、より高次な救急医療体制の整備やがん診療等の充実の検討が必要。
- また、医師等不足の状況を踏まえ、医療圏の中での医療資源配分最適化という視点に立って、他の医療機関はもとより、府、市町村等行政機関が協議していく枠組みを整備していくことも必要。
- 提供医療の内容も、将来にわたる府北部地域の医師の安定確保という点からも、府立医大の協力も得ながら、与謝の海病院ならではの特色を持たせ、また、地域の医療スタッフにも開かれた、実践的で魅力的な教育・研修の場としていくことが必要。
2 良質な医療の提供
(1)医療安全の確保
(ア)個々の医師、看護師等の技術の向上
(イ)医療スタッフ全員の情報共有、相互チェックによるチーム医療の確立
(ウ)提供医療の標準化・クリティカルパスの導入
(エ)事故防止原因の解析を踏まえた、より安全な手順の確立
(オ)専任の医療安全管理者設置等の取組も必要。
- 第三者の視点を重視、病院機能評価を通じた点検はもとより、患者のプライバシーに万全の留意を払いつつ、事故原因の究明等にあたり、外部の第三者の評価
- 意見を採り入れるなどのシステムを整備すべき。
(2)患者本位の医療
- 病院外の第三者の参画も得た体制を整備するなど、患者からの苦情や意見を真摯に受けとめ、即座に対応ができるようにしていくことが必要。
- 患者・家族のニーズについて、定期的にアンケートを行うなど、積極的に把握、内外にも明らかにするなど開かれた取組が必要。職員の発意・工夫が職員に、フィードバックされるような仕組みを検討していくことが必要。
- 患者サービスの向上に向けては、他病院における先駆的取組についてアンテナをはり、これを取り入れていくよう、患者団体、患者相談等に応じている市民団体等からも情報を入手し、例えば、地域住民による病院モニター制度、持ち帰り自由の(患者向け)クリティカルパスの作成など新たな取組を積極的に展開していくことを期待。
- 個人情報に係る守秘義務の保持等について一定の研修を講じた上で、外来案内、誘導、介助などのボランティアを受け入れていくことや地域内の学校等と協力、連携し、コンサートを開くなど、地域との結びつきを強めていくことを積極的に推進することが必要。
- 患者への説明については、日常的なインフォームドコンセントの充実が重要。
- 個人情報保護法の趣旨を踏まえた、厳重な情報管理を行うとともに、患者からの情報開示の要求に対しては、遺族からの開示請求を含め提供するよう積極的な対応が必要。
(3)療養環境の向上
- 院内表示の見直しなど、患者の視点に立って、細やかな工夫・改善を、できることから速やかに講じていくことが必要。
- 洛南病院においては、民間病院で受け入れ困難な重症患者を受け入れていることから個室の増設が必要。全面改築後20年を経過する中、患者一人当たりの病室面積も狭く、患者の動線上も制約があり、思い切った全面改築等の検討が必要。
(4)医療の質の向上
- 医療の質を客観的に評価するため、他病院でも一部導入されているような「院内感染率」「予期しない再入院率」などの評価指標を明定し、医療の質の向上を明確な目標として位置づけ、また、科学的根拠に基づく評価指標も取り入れることが必要。
- 患者の信頼を確保するため、歴史ある府立病院が医療の標準化を促す役割を率先実行することを期待。
(5)病院機能評価等の導入
- 患者ニーズを踏まえた質の高い医療を提供するために、また、職員の意欲、主体的取組を促すために、病院機能評価やピアレビュー等外部評価が有効、先行事例について情報収集を行い、院内アセスメントを行うなど積極的に取り組むことを期待。
3 経営の改善
(1)目標の設定
- 公立病院の役割を踏まえ、両病院それぞれの基本的な使命を踏まえた上で、「経済性と公共性」の調和を図りながら経営改善を進めていくことが必要。
- 病院がこれまで進めてきた個別の取組を、今後、より戦略的で組織的な取組として総合化していけるよう、中長期的な医業収支の目標設定を行うとともに、部門別にも可能な限り、状況を分析、目標設定を行い、目標達成度の確認が定期的に行えるようしていくことが必要。
- 目標設定に当たっては、病床規模や役割の類似する病院との定点比較が有効であり、経営に関わる数多くの職員が他病院との比較を通じ、認識を共有しながら進めることが有効。
- また、いわゆる赤字についても、府民に対する説明責任の観点から、政策医療的な不採算部分と改善すべき不採算部分を明示していくことが必要。
(2)各病院が果たすべき役割・機能を活かした医業収益の拡大
- 洛南病院においては、精神科急性期医療を担う病院が取得できる「精神科救急入院料」の導入が急務。
- 与謝の海病院においては、紹介、逆紹介など病病連携、病診連携を強化していく中で、急性期病院としての特徴を明確にし、「急性期入院加算」等の新たな診療報酬獲得(約1億円)をめざすべき。
また、地域医療機関との役割分担を円滑に進める上でも、初診料等の特定療養費の徴収や医療機器の地域共同利用を検討していくことが必要 - 診療報酬制度改定の動向等を早期に把握、病院の備える機能・ポテンシャルが適正に評価されるようコストパフォーマンスを踏まえて必要な投資を行うことも重要。
- 労災・交通事故等の診療単価や個室料金など比較的、低額に抑制されているものについても、他病院との均衡にも配慮し、適正な診療報酬の獲得をめざすべき。
(3)業務委託等の推進
- コスト削減の観点から、すべての部門を直営の可否という観点から点検し、業務委託等を推進することが必要。特に、過去、包括外部監査等でも繰り返し指摘のある現業等の間接部門については、外部委託を積極的に推進すべき。
- 種々の領域にわたる病院の経営改善の活動を具体的に推進し、短期ローテーション人事の短所の補完及び経営スタッフの資質向上に向け、他の公的病院との交流や、外部の専門家の招聘も検討すべき。
(4)将来を展望した経営改善の取組
- 将来、導入拡大が予想されるDPC(医療費包括支払い制度)の適用拡大等情勢変化を先取り、現在から、例えば、部門別原価計算の導入検討や後発医薬品の採用拡大、電子カルテシステムを活用したクリティカルパスの積極的利用など必要な対策を講じていくことが適当。
4 今後の府立病院改革のあり方
(1)府民に必要な、良い病院づくりを進める上では、職員の意欲の向上が不可欠であり、このため、今後の病院のあり方について確たる理念を築き、職員が広い視野を持ち、使命感をもって業務に取り組む環境づくりを進めることが重要。
(2)患者本位に根ざし、患者、家族にとって質の高い、安全安心な医療を継続して提供できる仕組(経営品質向上の取組)の確立が必要。
スタッフのやりがいと技術を高め、病院内の改革エネルギーを具体的な行動に向けることにより、医療の質のみならず経営効率も向上。
職員の意欲や能力、業績を適切に評価していく評価制度の確立が必要。
与謝の海病院においては、電子カルテの安定運用に向け職員の習熟度向上のみならず、業務省力効果、情報共有効果、患者満足度向上効果など病院運営のリエンジニアリングという視点から、幅広くその効果を点検、地域開放も含めた地域連携のツールとして戦略的活用を期待。
(5)府立医科大学附属病院は、洛南病院や与謝の海病院と共に府民の健康を支える財産。洛南病院及び与謝の海病院は、21世紀の京都の医療を支える拠点としての府立医科大学との連携を取りながら、各々の病院の独自性を十分に認識した上で、今後のあり方を検討することが必要。
- 患者満足度の向上、外部評価の導入など、医療の質の向上に向けた取組が府立各病院の十分な情報連絡、情報共有のもとで進められることが必要。また、南部精神科救急医療システムにおける身体合併症精神疾患への対応等個別課題についても継続的に協議できる枠組み整備が必要。
- 医療不足における医師確保支援という府立医科大学附属病院の役割が今後も十分に果たされることが肝要。府立医科大学附属病院の支援のもとで、府丹後地域の医療を支える与謝の海病院の使命が果たされるよう、遠隔診断や遠隔カンファレンス等の方策も含めた連携のあり方を検討すべき。
(6)院長権限を強化し、現場の責任者のリーダーシップによる現場ニーズを踏まえた迅速な対応が可能な運営システムへの変換が必要。
地方独立法人化や地方公営企業全部適用への移行については、何のために、経営形態を変えるのか、病院現場に委ねる権限や責任の内容を個別具体的に明らかにした検討が必要。
単に、医業収支の改善ということだけにとらわれ、府立病院の使命が損なわれることのないよう、「改革の成果」をどう規定するのか、府民にも明らかにした検討を期待。
(7)以上の提言を踏まえ、具体的で実効性のある計画が策定されることを要望。
計画策定に当たっては目標を明確に設定し、改革の成果が外部からも評価できるようにしていくことが重要。
病院が取り組む改善事項について、各々の優先度や工程を明らかにし、継続的に改善を進めることが必要。
