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第1回経済部会の開催結果

日時

平成30年10月9日(火曜日)午前10時00分から午後0時15分まで

場所

京都府庁1号館3階会議室

出席者

委員

牧部会長、柿迫委員、齋藤委員、徳岡委員、中川委員

ゲストスピーカー

小林加奈子氏(株式会社小林ふぁ~む代表取締役)
黒川雄大氏(京都移住コンシェルジュ)

事務局

松本企画理事、石澤計画推進課長
綾城農林水産部長、沼田農林水産部副部長、川戸農林水産部技監、清水農政課長、木村農産課長、木村林務課長、木村農村振興課担当課長

配布資料

議事内容

ゲストスピーチ

小林加奈子氏のスピーチ要旨

  • 大阪から福知山に移住し、農業を始め、トマトジュースを加工した商品を今年から販売しています。夏の間に樹の上で完熟したトマトを収穫するというこだわりを持って作っており、福知山市内だけでなく、大阪、神戸、名古屋でも好評を得ています。トマトの販売は夏限定となってしまうので、年間を通じて食べたいという声に応えきれない状況でした。夏の間、形が悪いものや割れてしまって販売ができないトマトがたくさんあったため、ジュースとして加工できないかと考えました。トマトジュースを商品化するに当たっては課題が3つありました。1つ目がトマトを安定して生産できるかどうか、2つ目が商品化するためのノウハウがないこと、3つ目が販路を開拓できるのかということ、この3つがとても心配でしたが、商品化や販路開拓に関して、ドッコイセ!bizさんや商工会さん、農業会議さんにアドバイスいただきながら、ラベルやパンフレット、トマトジュースのチラシ、ジュースのPR動画など全部手作りして、なんとか商品化することができました。東京ビックサイトであった東京ギフトショーにこのジュースを持って出店させてもらいました。トマトジュースなんてどこにでもあり相手にされないのかと思っていましたが、たくさんの方に興味を持っていただき、おいしくて値段も安くコストパフォーマンスも良いと言っていただき、全国チェーンのパン屋や海外のスーパーなどからも声をかけていただけたことから、小さな無名の農家であっても、きちんとしたもの、おいしいものを作れば認めてもらえる、十分商売としてやっていけるという自信となりました。課題はトマトの生産です。7月豪雨のときにハウスが水没し、1メートルほど水に浸かってトマトが全滅してしまいました。その後、もう一度苗を植え直しましたが暑さのために全く育たず、更にこの間の台風でまたもう一度水に浸かってしまい、今年はもうトマトは無理かなと考えています。来年ももちろんトマト作りを頑張りますが、新たな商品として、ドライトマトを使った商品も作っていきたいと考えています。今年1年に関しては災害があって大変でしたが、逆に色々考えられるようになり、今は前向きになっています。現在、6次産業化の総合化事業計画の認定もいただきたいなと思い、勉強している最中です。

黒川雄大氏のスピーチ要旨

  • 京都移住コンシェルジュとして田舎暮らしを実現するお手伝いをしています。相談に来られる方は、男性6割、女性4割程度で、単身の方から御夫婦、御家族と様々です。移住希望者は、定年後田舎でゆっくり暮らしたい方が多いイメージですが、大阪や東京の相談窓口では10代から50歳未満の割合が約8割となっています。移住希望時期については、2年以内が4割程度となっています。2年というと長いと思われますが、移住先を決めるためのセミナーや現地ツアーへの参加などに半年から1年使い、さらにそこから住居を決め、住居の修繕を行うと2年で決まれば早い方だというのが現状です。移住を希望する理由としては、今の生活よりもう少し自然に近い環境で暮らしたいという思いの方が大半です。若年層では完全に就農を目指しているのではなく、半農半Xという形で農業に携わりたいという層や、子育てを考えて移住を検討される方が多いです。55歳以上の田舎でゆっくりと暮らしたいと思っている層は、人里離れた隣家と少し距離のある家で過ごしたいという方が多くいます。また、移住に関する不安で多いのは、移住後の仕事のことです。若年層から50代まで、まだまだ働かなければならないところで、移住先に仕事があるのかという不安が多く寄せられます。続いて人間関係、メディアで出回っている情報がネガティブなものが多いため、そのイメージが先行してハードルが上がっているように感じています。不安に思う意見の多かった仕事に関しては、54歳までの全ての層で農業以外の仕事を求める方が最も多く、半農半Xでと明確にいう方もいらっしゃいますが、なかなか半農半XのXの部分のなりわいを創っていくことが難しく、思いの部分と実際できるのかというところでのギャップを感じている方も多い状況です。最後に住まいの関係ですが、移住される方が賃貸と分譲のどちらを選択されるかというと、圧倒的に賃貸を希望される方が多いです。これは、知らない地域に入るにあたり、いきなり住居を購入してしまうと貯金を減らすことを不安に思われるためです。田舎暮らしを希望しつつ、アパートやマンションの賃貸住宅の希望が多いと感じています。

委員からの主な意見

「農林水産業に関する意見」
  • ゲストスピーカーのお話では、トマトジュースの商品開発に関して、販路の開拓等に不安をもっていたが、商工会や農業会議などの支援機関を紹介して頂いたことで成功に繋がったということでした。このことから、支援ルートは既にあるが実際の作り手の方々にその存在が伝わっていないというのが課題かと思います。これから6次産業化を進めていく際に、情報提供という面でのプラットフォーム、そういうものが既にあるので、そこと農業者をうまく繋いでいくことが重要だと思います。
  • 農林水産業のICT化について、まずそれぞれの担い手が機械化によりどのようなことができるのかが分かっていない。また、提供側のIT関連企業もニーズがどこにあるのか把握されていない現状がある。様々な支援機関の方も頑張っていただいていますが、業界が縦割りなこともあり今まで交わることがなかったので、そこの情報共有について京都府の方で考えていく必要があるのではないか。
  • 国の事業で「ふるさと名物応援宣言」があり、先日和束町がお茶を宣言したところですが、ゲストスピーカーの方からお話のあったトマトなどはされていない状況です。この宣言があると国から情報発信や人材育成、補助金などの支援を受けることができます。京都府としてこういった国の情報をすばやく市町村に展開し、京都府全体の施策として推進していくことが必要ではないでしょうか。
  • ゲストスピーカーの方のお話もありましたが、異常気象が頻発している中で、農家が自然とどう共生していくのか、せっかく作った作物がダメになったり、トラクターが水に浸かってダメになったりと経営を圧迫する事態となっており、異常気象への対策を考えていくことが必要だと思います。
  • 農業のICT化について、京都府の農家は中山間地域がほとんどで、大規模農地に大型機械を導入してというような状況になく、過剰投資になり採算がとれない状態になりかねないので、なりわいとしてしっかり確立できるよう地域の特性に応じた形でのICT化を進めていく必要があると思います。
  • 森林の管理が大変遅れています。10年ごとの間伐が遅れていくと、木は肥大から徒長へ変わっていき、これを慌てて切ってしまうと見通しが良い山にはなりますが、雪や台風で倒れてしまいますので適切な割合で適切な時期に間伐を行うことが必要です。
  • 林業については作業形態が変わり高機能重機がどんどん山に道を付けて入っていますが、ここに激しい雨が降ると、作った林道に水が溜まり土砂を運びだし、治山堰堤が一杯になり土砂が流出しています。林道をどんどん作って木を切って出すという方策を見直さないと環境保全の観点から逆行した状態になります。新たな方策を地域も一緒になって相談し、考えていくことが必要です。
  • 京都府は「海の京都」「森の京都」「お茶の京都」として観光振興を行っていますが、やはり観光というのは大きな資源です。例えば漁業体験や地域の食文化など、その土地に元々あるものを掘り起こして観光につなげていけば経済の活性化につながり、そういった地域文化の発信はお年寄りの出番にもなるので、地域の活性化にもつながるものだと思います。こういった仕掛けを行政の方で考えていただく必要があると思います。
  • 農産物の輸出との関係で申し上げますと、世界ではオーガニックが非常に注目されており、世界の食品スーパーホールフーズもアマゾンに買収されました。これは、オーガニックがこれからも世界で売れていくということだと思います。これから日本は東京オリンピック・パラリンピックを迎え、そこに来られた方からは食材をオーガニックで揃えて欲しいというニーズがあるかもしれません。現状では京都府の農林水産物では調達できず、他府県からの調達となり、京野菜を食べたいというニーズにも応えられない状況となりかねません。全て無農薬が良いということではないですが、世界のニーズを的確に捉えた対応も考える必要があると思います。
  • 農業を営んでいる方の健康面からも無農薬というのは大切で、農薬による健康被害により子育てに支障をきたすことがあったり、新しい方が入り難いということもあるので、女性目線で未来に向けた取組も行政として考えていただきたいと思います。
  • 農林水産業の各分野を縦割りで考えるのではなく、横に連携したものが必要ではないかと思います。農業で作った食材と森のキノコや木の実の資源、それからジビエ、そして丹後の海で獲れたもの、これら京都の各地域のものを組み合わせて料理として提案し、更にそれを地域の木材で作った器で食べるというような、そんな京都各地の農林水産業が横に連携したものが必要ではないかと思います。
  • 宇治茶の輸出に向けて、新たな需要を開拓するためハラル認証を得て、新しいところで事業を開始している方がいますが、加工の過程も複雑で大変だと聞いています。東京オリンピック・パラリンピックに向けてもそうですが新たな事業開拓では、宇治茶は健康という意味でも世界的に注目を浴びているものです。そういったターゲットを絞った形での施策も必要ではないかと思います。
「食の安心・安全について」
  • 日本の労働人口が減ってくると、夫婦共働きをしないと日本の企業を支えられないということもありますが、お母さんが働くと一家団欒で食事をとるのが難しくなります。そこで地域の飲食店などで地元の方や家族が一緒に御飯を食べられるコミュニケーションの場を提供し、そこで地域の食材や京都の伝統野菜を使えば、食育にも繋がります。店舗や事業者を公募し支援していくなどの仕組みを作ることが必要と思っています。また、そうすることで働くお母さんの負担軽減に繋がり、就労支援にもなるので、ぜひ検討していただきたいと思います。
  • 地域にたくさん存在する公民館を活用して料理を提供することも考えられるのではないでしょうか。地域のお年寄りの中には、昔の料理を作りたいというようなニーズもありますので、そういった方と煮炊きするためのガス、水道が通っている公民館を活用することで食育だけではなく、地域の活性化にもつながる仕組みが考えられるのではないでしょうか。
「移住対策について」
  • ゲストスピーカーの方のお話を伺って、これだけ若い人の関心があればそれを地域がしっかりサポートして後継として育てていくことが大切だと思います。ただ、古民家を購入して改修するにも相当な費用が必要であり、また付属する倉や小屋などの資産も管理していく必要があり、移住希望者に古民家を紹介するのは良いが購入された方が大変なことにならないよう支援していく必要があると思います。
  • 移住者の中には、古民家を購入し改修するのではなく、新たに家を建てても費用が変わらないので、新築を選択される方もいるが、その際には地元の景観に合った建物として、地元の風土に合った木をしっかり使ってもらう必要があると思っています。林業の振興を考えると地元木材をもっと使ってもらう必要があるので、京都府でも現在実施している補助金などで支援していく必要があると思います。
  • 移住相談窓口などを設置し、移住を進めるのは良いが、将来この地域をどうしていくのかという将来像をしっかりと作ったうえで、ぜひ来てくださいという働きかけをしないと、無責任ではないかと思っています。移住を希望される方は、なかなかそこまで考えられないと思いますので、地域の立場、あるいはそれを支える行政の立場から、ある程度の将来像を示すべきだと思います。将来像を示すにあたっては、市町村間連携あるいは集落間連携、定住自立支援というような連携の取組を京都府として考えるべきではないかと思います。
  • 移住を促進する施策として地域おこし協力隊を増やしていくことが早い道筋ではないかと思います。地域おこし協力隊の方は最大3年間その地域のことを勉強し、そこで移住者の促進や地域の産業などを紹介するような仕事をされていて、その間に地域の方ともコミュニケーションがとれているので、定住しやすい環境にあるのではないかと思います。そういった地域おこし協力隊の方がそのまま定住していただくと、地域のコミュニケーションも活性化していくので、地域住民の方も喜ばれる良い手段ではないかと思います。
「その他」
  • 数値目標は、収穫量とか売上げを何%増やしますという目標になるのが従来のものだろうと思いますが、現実にこれからの20年を考えたとき、「全て増やす」という目標で本当にいいのか、ここまでは仕方がないとか、あるいはここを下回ると地域が消えるなど、極めて厳しいレベルを想定すべきではないかと思います。単純に何%増やしますでは、これからの総合計画として現実的ではないと思いますのでお考えいただきたいと思います。

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