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第1回生活部会の開催結果

日時

平成30年10月15日(月曜日)午前10時00分から午前12時00分まで

場所

京都府庁旧本館会議室2-H

出席者

委員

松井部会長、伊豆田委員、伊藤委員、伊庭委員、櫛田委員、佐竹委員、鳥屋尾委員

ゲストスピーカー

中山健夫氏(京都大学大学院医学研究科副研究科長 健康情報学分野教授)

事務局

松本企画理事、石澤計画推進課長
松村健康福祉部長、渡邊保健医療対策監、山口高齢社会対策監、柴田健康福祉部副部長、千葉統括保健師長、他、関係各課長

配布資料

議事内容

ゲストスピーチ

  • 医療、健康、終末期の問題は、それぞれの立場の人たちがそれぞれの知恵を持ち寄って考えなければいけません。日本人は1年間に約100万人が亡くなっています。がんで亡くなる人が一番多く、2番目は心疾患、3番と4番目は脳卒中と肺炎です。今の医学は、治療と予防の両方が大きなテーマになっています。一次予防は、健康増進、予防摂取で病気にならないことや病気を食い止めることです。二次予防は、がん検診などによる早期発見、早期治療です。症状が出ないうちに病気を見つけ、早いうちに治療することが大事ですが、残念ながら日本はがん検診の受診率が非常に低いです。三次予防は、病気の進行防止、治療やリハビリテーションです。最終的に、私たちは終末期への心の備えをしていくことになり、終末を踏まえた治療をしています。以前から、高血圧、メタボ症候群など、免疫が悪いと病気になると言われ、1990年代後半は、喫煙、飲酒、食生活など体の中だけではなくその人の行動が病気によくないと言われ、生活習慣病という言葉が生まれました。研究が進んだことにより、生活習慣病は、睡眠不足やストレスなども要因になっていることがわかってきています。生活習慣病というと自分の習慣で決まると思われがちですが、周囲の環境も大事です。今、研究としてはゲノムや遺伝子へと進んでいますが、最近、非常に関心を持たれているのは、失業、教育レベル、貧困格差などの社会経済環境的要因です。健康な人が健康でない地域に住んでいると、その人まで健康でなくなってくる、何かあったときに助けてもらえないということがあります。地域での共助が大事だと思います。平均寿命と健康寿命の推移について、男性は平均寿命が80歳なのに健康寿命が70歳で、10年も違い、女性は12年も違います。つまり、不健康な状態、介護された状況でこれだけ生きるのです。また、要介護、要支援の認定者数は増えています。介護が必要になる病気は一番が脳卒中です。脳卒中になりやすいのは高血圧の人です。2番目は認知症です。女性は骨折、転倒も同じぐらい多いです。また、人生の最終段階、最後を迎えたい場所は自宅が多いです。今は、治療をしない、治療をやめるかもしれないという選択肢が出てくる時代になっています。百歳以上になったときに積極的に治療を受けたいと思われるでしょうか、ということです。これからは、元気な高齢者が増えていきます。高齢者は、思った以上に社会参加されているかもしれません。地域づくりの大切さとして、世界的には地域の人間関係や地域の愛着のことをソーシャルキャピタルといいます。ソーシャルキャピタルが乏しい地域では、誰かが倒れたとしても誰も助けに来てくれません。世界ではまちづくりのことも健康づくりの一つとして議論されており、京都でも進んでいくことが望ましいのではないかと思います。情報をうまく活用して、生活習慣を含む健康を決める力であるヘルスリテラシーを大事にしていただければと思います。

各委員からの主な意見

【20年後にありたい姿】
  • 京都府は、なるべく治療が少ない状態にしていくことを目指していると思いますが、予防と治療は相互に行き来します。戻ってもらう仕組みを作るべきだと思います。
  • 健康教育が非常に重要な概念で、いかに住民に普及させるかを計画に載せる必要があると思います。

  • 人生100年と言われていますが、どうなっているのかイメージができていないと思います。20年後は70歳定年になっているかもしれませんが、30歳の自分があと40年働かないと退職金が出ないと思うと、健康に気を付けて40年働ける体をつくらないといけません。そのイメージをいかに早い年齢でできるかだと思います。60歳になってからあと10年後を考えても遅いので、若い人たちがいかに自分の20年後を想像して、健康のリテラシーや情報をとっていくかだと思います。風土改革をするときには、みんながきちんとイメージをもつような仕掛けをしないと動かないと思います。
  • すごくたくさんの施策が行われ、私たちに与えられているけれども、検診のように、うまく活用されていないというのが分かってきました。選択肢はあるので、選択する側の意識が大事だと思います。
  • 医療・健康づくり対策に、意思、希望、本人の自己決定という言葉が入るべきだと思います。互助・共助・公助、あるいは本人の意思が尊重されるという言葉が健康教育に関係し、自己決定を支援するというようなビジョンが必要ではないかと思います。
  • 障害者の施設で障害のある方々が自己選択をしていくことは、大変大事なことです。デイサービスや保育園がある共生施設のようなところで、就労している人たちが、たくさんの作業メニューの中から自分で作業を選び、作業をしている事例があります。目に見えない範囲やエリアの選択を迫られても想像もできないと思いますので、できるだけ小さなコミュニティ、エリアで捉えていくことを考えることが大事だと感じました。
【医療・健康づくり対策関係】
  • 病院に行くのに、南部地域は交通手段がたくさんありますが、北部地域は交通網が整っていません。北部には自衛隊があるので、ドクターヘリを活用してほしいと思います。何かあったときに、そこまで行く手段がない、救急車が走っても山を越えないといけない、過疎地なら過疎地なりの事情を考えた基盤があるほうが安心だと思います。
  • アンケート調査の結果、がんの検診受診率が低い理由が、お金ではなく、面倒くさいとか、見つかったらどうしようという不安であるといったことが割合的に高いとのことですが、見つかったら怖いというのはよく分かります。しかし、がんは早期発見すれば治ります。
  • がんと診断された瞬間に、もう私は働けないと思う方が7割と、すごく多いです。ところが、実際には、がんというのは必ずしも亡くなる病気ではなくて、治療を続けながら生き続けられる病気です。そうすると、仕事を再開することができますけれども、一旦、治療で間が空いたときに、受け入れている会社、企業、社会がどうあるかが大事です。
  • ステージ4段階のがんでも、治療しながら、体調の良いときに勤めてくれている方がいます。これはすごく大事なことで、病気であっても誰もが働き続けられて、それが当たり前になるといいなと思います。
  • 仕事には障害者枠というのがありますが、病気でもカムバック枠のようなものがあり、フルタイムは難しくても数時間なら働くことができるという人を集めると、仕事が分けられると思います。午前の人、午後の人、または、3人なら2時間半ずつなどの仕組みができれば高齢者も障害者もいろいろな方が働くことができると思います。高齢化、過疎化の町では非常に力強いと思います。
  • 日本人は、乳がん検診の受診率がすごく低いことが問題だと感じています。以前、会社でのアンケートで、自分で検診に行かない理由は、先ほどと同様に、見つかったときに怖いというのが一番でした。そうであれば、自分のリテラシーがいくら上がっても怖いので行かないとなります。そこで、二十歳の子の母親が40代くらいで、乳がんになりやすい世代ということもあり、家族からプレゼントされるという形で「二十歳になったら母親に乳がん検診に行ってね」という手紙を出すキャンペーンのようなものを行いました。自分の存在を大事にしてくれる家族がいるから検診に行こうということにつながることもあります。家族全員で健康になろうという声かけができるコミュニティをつくることが必要かもしれないと思いました。
  • 京都府の場合、胃がん、大腸がん、肺がんは、全国平均でワースト5に入っていますが、乳がんは改善しているので、キャンペーンのような活動は非常に大事だと思います。子どもも、親の病気を通して若いうちから健康を意識することがありますので、良い健康教育になると思います。
  • 高齢者は、役所からのはがきを持って検診に来られる方も多いので、ダイレクトメールも効果があるかもしれません。
  • 北部や山城などの小規模な自治体は、コミュニティのつながりが強く、がん検診の受診率が高いです。「みんなが行くので私も行こう」となります。京都市内や都市部なるとそのような関心がなく、情報も十分に行き渡らないということがあるのかもしれません。京都市の場合は二極分化していますが、京都市の業務でもあり、生活保護世帯の男性独り暮らしのような方に、京都府はどこまでお節介ができるかなと思っています。
  • 高齢者はスマホ使いこなしつつあるので、長野県松本市では、高齢者がアイパッドを利用しており、手元に情報を流しています。京都府は人権関連で地域懇談会があり、京都市以外の地域では字単位、小字単位で集まって勉強会をする習慣があります。1年に一回でもそのぐらいの単位で勉強する仕組みを考えると、府民の意識も変わり、検診を受診しようと思うのではないでしょうか。呼びかけても来てくれないのであれば、出かける教育、押しかけていくという形の健康教育があっても良いと思います。
  • デンマークの事例では、高齢者サロンなどのパソコン教室は、全台埋まっている状態で、高齢者も普通にタブレットを使い、このような勉強をしたいとカフェで談笑しています。また、どこにでもリハビリの施設が用意されていて高齢者がリハビリをしており、健康になりたい、動けるようになりたい、リハビリによってより良い生活を送りたいとなど、自分が健康であり続けるための意識が高く、積極的にわからないことも学びに来ていました。このような意識を醸成していく取組も重要だと思いました。
  • 単に病気の予防ではなく、自律、自分の体を自分でコントロールするということも含めた健康教育が必要だと思います。
  • 京都府の中部地域は、昔ながらのチューターが残っているところを利用して、無理やり来てねと押しかけることも必要だと思います。80歳以上は来なければならないというぐらいの枷をすると来てくれる人は多いと思いますし、健康教育に関してはそれぐらいしても良いと思います。
  • 先日、高齢者と子どもたちのサロンを一緒に開催した際に、民生委員さんが積極的で、結果としてその地域の対象の子どもたちが全員来て、高齢者もみんなで賑わいました。民生委員さんたちが1家庭に3回は訪問するということで、それぐらいお節介ながら行くと、「行っておいで」となり、行ってみると面白いから次は勝手に集まるようになっていきます。最初は、これでもかというぐらい訪問することが大事だと思います。
  • 健康寿命に自分が貢献していると感じられること、自分が社会に貢献できていることを実感できる社会が理想だと思います。オランダの事例で、子供が巣立ったけれども料理を振る舞いたいと思っている母親のニーズを汲み取り、一方で母親のご飯を食べたいけれども、母親が仕事をしていて手作りのご飯が食べられないと子どもたちがいて、両者、つまりマイナスとマイナスをくっつける取組を、村と村単位でされているそうです。マイナス同士のマッチングのように、高齢者と誰かをくっつけられる視点があると面白いかなと思います。
  • 健康寿命という考えが定着しましたが、健康寿命には介護になった者はカウントされません。そのような引き算ではなく、例えば寝たきりだったとしても、その人が生み出せる価値があるかもしれません。別のものと合わせると足し算の指標になると思います。
  • 高齢者が仕事を続けられるということは非常に大事だと思います。高齢者は、ちょっとしたお手伝いやボランティアのような労働力、安い労働力、善意で作業をするなど、能力に見合った評価がされていないことが多いと思います。ボランティア報酬をもらうことで元気になっている方もいるので、その人の能力に見合う報酬をいただける仕事ができる社会が大事だと思います。北部は高齢者が増えます。高齢者が生き生きとお金を稼げるような地域であるとありがたいと思います。
  • 北部地域は、定年後などに地元へ帰って仕事を探して親の面倒を見ようという人が増えましたが、その人に見合うだけ報酬がある仕事がないのが心配です。大きな会社で国際的にバリバリ働いていたような人が親元に帰ったときに、その人の能力に見合った評価を出せるように働くことができれば、町も元気になって高齢者も安心して年老いていけると思います。
  • 高齢者の単身世帯ということが問題になっていますが、一人暮らしの高齢者だけではなく、昼間だけ一人という高齢者もたくさんおられます。昼間単身の高齢者は、昼間にボランティア活動や色々な作業があると安心する方もおられるので、見えない高齢者の支援も必要ではないかと思います。
  • 同じマンション内の住人と親しくなるというための手段として、高齢者向けの会があることを高齢者の子の世代に知らせて、「それならうちの親を呼んで来るわ」と、情報が届くと思います。しかし、一人でずっと部屋にいる高齢者にはなかなか情報が届かないという問題があると思います。
  • 大都会の問題として、高齢者の中には世話が必要なのに受けない人たちと、世話する側の人たちのバランスが厳しくなると思います。働く人がいても、家庭に一人高齢者がいて働きながら世話をして子ども育てていくというのは大変だと思います。一対一で対応することも難しいので、地域で、社会でとなるのだと思いますし、それを目指すしかないと思います。
【地域包括ケア関係】
  • どのようにコミュニティに価値をつくっていくかということに尽き、「コミュニティ支援サポート情報支援センター」のような拠点が必要だと思います。介護や福祉の分野・担当だけの連携では、利用者の心の支え、クオリティ・オブ・ライフは離れます。コミュニティを資源と捉えた考え方でサポートする必要があると思います。
  • 共生社会の実現が地域包括にも関わると思います。高齢者の包括的なケアに児童や障害の子どもなども関わり、総合的に地域でサポートするネットワークの形成が必要だと思います。子ども食堂や高齢者サロン、認知症カフェを統合して同じところでやるという共生も進んだら良いと考えます。
  • コミュニティのヘルパーのような人が必要だと思います。今までのヒューマンスキルのように、普通は助けるだろうということがなくなってきていて、コミュニティヘルパーと二人三脚で地域をつないでいくような考え方も、必要な時代だと思いました。
  • 若い人は、社会参加が大切なこととわかっているようですが、希薄になり、具体的な行動につながっていません。具体的な形につなげる施策が必要だと思います。計画があるとそれに向かって進んでいくと思いますが、それでは足りない部分もあると思います。
  • コミュニティヘルパーよりももっと手前の介護の支援を受ける段階の前で、例えば退職後の生活のコンサルタントのような仕組みがつくられていくと、情報をもらったことでどのように生きていくか、逆にどのように死ぬのか、あるいは放っていてくほしいということも含めて、何かできると思います。
  • 地域と協働でつくり出すような、連携を深めていけるような事業をしたほうが良いと思います。自分自身が関わっていると、自分自身も主体者であると捉えます。小さな連携からでも良いので、みんなが主体者であるというような関係性をつくっていける連携を図ると良いのではないかと思います。
  • まさに、地域包括ケアシステムがそうだと思います。誰もが住みよいまちで、ずっと尊厳を持って暮らしていけるというまちづくりです。つくってもらった町に住みに来るというような感覚があり、自分たちで町をつくっていこうという感覚は少ないと思います。
  • コミュニティ資源のデータ化と、それを評価する企業のようなものがあれば良いと思います。都心よりも過疎地域のほうが、コミュニティ資源が多いので、案外、過疎地域に引っ越して住みたいとなるのではないでしょうか。
  • 介護者に対してICTをどう利用するかは大きな問題だと思います。長野県松本市の健康教育が有名で、公民館活動や社会教育とタイアップして、健康寿命を伸ばしている実践がありますので、ぜひ学んでほしいです。
  • ICTやAIを生活の中で有効活用すると、医療・介護の連携も効果的、効率的にできるのではないかと思います。10年前のデンマークでは、国を挙げて研究されていました。現場での必要な情報共有、介護の効率化やさらなる連携強化のためにICTの有効活用はもっと進んで良いと思います。
  • ICTは必須だと思いますが、IDが共通化されていません。レセプトの情報でも、後期高齢者になると違ったり、健診の情報も、母子手帳の情報が欲しくても縦割りのためつながっていなかったりと、どんな人がどうなるのか、どこで食い止め、どこで助けたら良いのか全く分かりません。マイナンバーを医療で使うかどうかが一番ポイントになるわけですが、ようやくそのような議論が動きつつあるかなと思いますので、横断的に使えるようにしていただきたいと思います。
  • 人権的な視点ですが、個人情報は、人に対して権力を行使するような立場ではない方が利用するのは問題ないと思いますが、権力機関になると、よかれと思ってどんどん情報を集めた場合に、個人情報の保護をどう担保するのかと思います。
  • 個人情報も、今は保護した上で活用する、活用ができないための保護は先進国としては恥ずかしいことではないかと感じております。そのときの自発性の担保については、一つは「これはやります。あなたが嫌だったらやめてください。」のような形が考えられます。個人情報保護法には例外規定が書いてあり、人の命に関わるときや他の法令で定めているときは本人の個別同意なくして第三者提供も良いですし、目的外利用も良いということが書いてあります。
  • カナダのトロントでは、地域サポート部分まで個人情報が配布されていて、切れ目のない支援のようなことをやっていました。
  • IDの共通化で私たちが危惧するのは、全ての情報を誰かが管理して、こういう病気にはこの治療、この人はこの薬みたいに画一的になっていくというのが心配だと思います。AIは2045年に人間の知恵を上回るということなので、そこまで考えながら進んでいかないと、ICTやAI至上主義になると心配です。ただ、効果的に使える可能性は高いと思います。
  • おそらく介護事業者の中に外国人が増えてくると思います。彼らの定住化も増えていくと思うので、その視点を考えてほしいです。
  • 色々な考え方があると思いますが、結婚、出産、子育てというライフステージが前提となっているように思います。フランスなどでは、母子家庭でも未婚でも、産みたい、育てたいと思っている人たちを支援することで、一気に人口が増えている事例があります。

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