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第3回文教部会の開催結果

日時

平成30年11月14日(水曜日)午前10時00分から午前11時55分まで

場所

京都府職員福利厚生センター第2・3会議室

出席者

委員

郡嶌部会長、淺井委員、池坊委員、布部委員、原委員

ゲストスピーカー

木原浩貴氏(京都府地球温暖化防止活動推進センター事務局長)

事務局

松本企画理事、稲垣政策企画部副部長、石澤計画推進課長
中野環境部長、益田公営企業管理監、金谷環境部副部長、池田環境技術専門監、髙屋環境総務課長、西村エネルギー政策課長、北村北部地域エネルギー資源戦略担当課長、松山循環型社会推進課長、片山不法投棄等対策担当課長、藤岡自然環境保全課長、五十嵐環境管理課長、田尻地球温暖化対策課長、安田水環境対策課長
仲間森づくり推進課長
岸公園緑地担当課長

配布資料

議事内容

ゲストスピーチ

  • 国では平成30年4月に第5次環境基本計画が策定され、環境だけではなく経済、社会を全部まとめて幸せな世の中をつくっていくことが強く求められています。また、国際的な潮流として、1.SDGs(持続可能な開発目標)2.パリ協定が挙げられ、大きく考え方を変えていかなければならない時代の転換点を迎えていると思います。SDGsの中ではクリーンエネルギーと気候変動の問題が挙げられており、2015年に採択されたパリ協定では、今後数十年の間にCO2などの排出量をゼロにしなければならないとされています。人間が地球温暖化を引き起こしている可能性は95%以上であり、私たちがこの社会をどう見直し、変えていくかということが問われているところです。
  • 今後の気温について、現在程度の対策を続けた場合、気温は2100年までにおよそ4度上がると言われています。一方で最大限の対策をとった場合には、この気温上昇を産業革命から2度未満、上手くいけば1.5度程度で抑えられる可能性も残されています。この最大限の対策を講じて気温上昇をとめようと思うと、CO2などの排出量をゼロにしなければならないことが科学的に明らかになってきました。パリ協定により、事業運営は再生可能エネルギーだけで行うという企業や、2050年にはCO2排出量をゼロにするということを宣言している日本企業もあります。
  • 京都でも環境だけではなく、経済と社会両方につながるような事例が少しずつ出てきています。今でこそ日本全国の電気屋さんで省エネラベルが貼られていますが、16年前にはありませんでした。16年前、私も立ち上げメンバーとしてプロジェクトに参加し、京都の中のいくつかの電気屋さんと協力して、このようなラベルを貼ると省エネ性能の高い製品が選ばれて、結果的には光熱費の削減によって買った人も得をするということが実証されました。そして、京都府、京都市で条例化され日本全国に広がり、日本全国で統一の省エネラベルが誕生しました。
  • また、京都府農林水産部や企業と連携して、京都府南部の教員向けのバスツアーを組んだことがあります。舞鶴の漁師さんから獲れた魚が捨てられている現状を聞いていただき、それならば学校給食に取り入れようということで、実際に木津川市の学校でメニュー化が実現しました。こうした地産地消メニュー、例えば、舞鶴産カマスのフライを選んだことによって、それまでのカナダ産のキスのフライと比べて輸送にかかるCO2排出量が96%削減できたというようなことが実例としてあります。まさに、京都の山を、海を大事にしていくということがCO2排出量削減にもつながった事例です。
  • また、夏休みに温暖化防止に家族で取り組んでもらう「夏休み省エネチャレンジ」では、地球温暖化防止活動推進員などの積極的な活動により、今では19,000世帯が参加しています。教員が全員専門知識を持っているわけではないので、学校の取組においては、中間支援組織によって研修を受けた地域のボランティアたちが、出前授業をする仕組みになっています。こうした取組に関わっている京都の温暖化防止活動推進員は約300人いて、去年1年間に対外的に活動したものだけで2,440回になりました。その活動の波及効果は何万人にも上りますし、こういった方々が今、地域の活動を支えておられます。その方々をサポートする仕組みが少し脆弱だと思いますので、何らかの中間支援があれば良いではないでしょうか。
  • 低所得者の方こそ、年収に占めるエネルギーコストの割合が高くなっているということも分かっており、低所得者の暮らしを考えれば、どうすれば燃やしてしまうものにお金を使わない社会をつくれるかということが極めて重要になってきます。気候変動対策のイメージを見ると、世界全体では気候変動対策によって暮らしがよくなると思っている人が多いのに、日本人は逆に暮らしの質が低くなる、脅かされると思っていることが多い。これを転換し、より良い社会を目指そうということが共有されない限り、社会づくりにはつながっていきません。
  • 京都では持続可能な地域づくりにつながる魅力的な取組、小さな事例がいくつか生まれていますが、これらの取組には必ずこれらを支える裏方、後方支援をするような中間支援組織があります。この小さな成功事例を各地で実感できるように、意識的に各地に中間支援組織をつくっていくことが必要です。

各委員からの主な意見

  • 経済学では、市場の失敗、すなわち市場で全てが問題解決できるわけではないと言われています。また、政治の失敗、行政の失敗、さらにはボランティア組織の失敗も課題になると思います。
  • ボランティア組織の失敗については、一つには自分たちはお手伝いをしているだけだとの意識で、専門性を持たない可能性があること。また、採算性の面で、行政にとってはボランティア団体への委託によってコストダウンを図れたとしても、サービスの質の低下が起こってしまうこと。そうではなくて、委託料に見合うだけのことを、質を落とさずに行う形を目指した自立的な組織として、中間支援組織を立ち上げなければならない。そういう面から言うと、京都府地球温暖化防止活動推進センターは、京都府がかなり力を入れて、自立的な組織として育ってきたので、中間支援組織のあり方としては日本の中では一番成功した事例ではないかと思っています。
  • 課題があっても、行政も予算と実行面での問題があるので、それらを何とかつなぐことができれば、非常に理想的な政策ができるのではないかと。そうすると、行政もある程度全体をマネジメントしつつ、政策のパフォーマンスを見ながら、より実効性のある政策を実現できるのではないかという気がします。
  • 現場に入って一緒につくり上げる人材は絶対に必要だと思います。公平さや慎重さは行政の良いところだと思いますが、行政の場合、合意ができて初めて政策ができる以上、やりたくてもなかなかできないということがあるのだろうと思います。行政としてもやりたいことを中間支援組織も一緒になって現場でつくり、共通認識を広げ、また行政がやりやすい仕組みをつくる。そういった間をつないでいくことが中間支援組織のやりがい、存在意義でもあると感じています。
  • かなり前に福岡で水不足になり、それ以降、福岡ではボランティアの方々や自主組織が雨水利用を進めてきたという事例があります。水不足に備えて、日頃から雨水利用というのは考えていかなければならない問題だと思います。
  • 基本的には検討シートの方向で良いと思います。例えば今の環境問題では、オイルフィー、つまり石油の供給量よりも需要量のほうが増えてしまった2006年を基本としています。価格がかなり上がり、その後、オバマ政権がシェールオイルを使ったために少しは緩和をされましたが、石油産出のないヨーロッパでは、2005年から2006年には「トランジション・タウン・ムーヴメント」という形で、石油がないことに備えたまちづくり(スマートシティ化)が始まりました。
  • それから、中国で日本からのリサイクル用プラスチックゴミの受け入れがなくなったことなど、世界的にはやはり脱石油に向かっています。石油からできたプラスチックをどうするか。基本的に温暖化の問題というのは脱石油の問題で、暮らしのレベルを落とさずに石油がない生活をしていく、いわゆるライフタイルや経済政策の変更などを考える必要があります。日本の場合には、石油産業というのは大きな産業の役割を果たしておりますので、それを否定するわけではないですが、その中で使い捨てからやめていこう、脱石油文明をどう構築したらいいかというような時代に入ってきた。そのような認識が非常に重要だと思います。
  • それから、コストをかけないと温暖化などの問題が止まらないということがあるため、社会的弱者が置き去りになりがちであり、そういった社会的弱者に対する配慮が、この検討シートの中では視点として抜けています。
  • 例えば、否決になりましたが、アメリカ合衆国ワシントン州で、世界で初めて州単位のカーボンタックスについての住民投票が行われました。その使い道として、あるインディアンの部族が暮らす太平洋岸地域が海面上昇によって沈んではならないということで、その支援のための資金、あるいは、2020年に閉鎖が決まっている石炭発電所の労働者に対する支援などが想定されています。環境に良いことをしようとしても、経済的な利益を失ってしまう人がいるので、その人たちに対する対応や社会的弱者に対する手助けが必要であろうという気がします。
  • 保津川では、亀岡の住民組織や船頭さんたちを中心に、ごみ拾いなどの河川管理がかなり活発に行われています。京都府の中には、そういった活動の芽がありますので、そういう人たちをどう行政が見つけて支援するかによっては、身近なところで環境問題に取り組んでもらう環境が整いやすい地域だと思います。
  • 生物多様性の維持について、生け花には江戸時代に描かれている作品図があり、その作品図で使われている草木の種類を見ますと、今の時代で見ると絶滅したものや絶滅危惧種に該当するものが多く、やはり生物多様性が失われていく、変わってきているということが文化の正しい伝承や継承にも大きな影響を及ぼしていると実感しています。
  • そのような中で伝統文化の世界でも、自分たちの立場でできることはないかということで、例えばもう10年ぐらい前になりますが、本来捨ててしまう作品の残りの枝や、割り箸を使って生け花作品をつくりました。そうしますと、ごみ問題というのを、また芸術とか文化という視点から通常とは違った関心を持ってもらえるのではないかと。
  • それから、近年では在来種と生け花というのを掛け合わせまして、鴨川を散策して何が外来種で、何が在来種なのか、そういうことをまず知ってもらって、そしてその中で外来種のものだけを摘んで生け花をしていくという取組もしました。
  • そういう地道な取組をしておりますが、その一方で組織や企業は、環境に対する問題意識を持っていても、常に目新しいことをしなくてはいけないというジレンマもあって、イベントをしてもそれが一過性、単発のものになってしまって、継続していきにくい事情もあると思います。
  • 行政には、例えば金銭的な支援だけではなくて、自分たちがそれぞれの組織が考えているアイディアをもっと違う形で膨らませることができないか、あるいは、同じような取組をしている組織、団体をうまく結び付けて、さらに広がる、展開するような接点をいただければと思います。そういう支援によって、個人や各団体でしていることが、より波及効果を持つのではないでしょうか。
  • また、ゲストスピーチを聞いて、数字は非常に説得力があると感じました。例えばプラスチックストローの問題をニュースでは知っていても、数字を知ることによって緊急性があることなのか、どれだけそれが健康に関係しているのかなど、よりリアルに実感できると思います。できるだけ数字で伝えていただいて、子どもだけではなくて、大人への教育の徹底がさらに求められるのではないかと感じます。
  • ドイツでは環境情報法があり、推測、推定ではない情報を収集するようになっています。日本では、生産などのプラスの情報に比べて、マイナスの側面を持つ環境の情報については重要視されていないので、情報あるいは現実のデータでもって、事実を語らせるという努力が必要です。
  • 財政的な問題はあるかもしれませんが、例えば各学校が、あるいは教員が、環境白書を手にとれるような状況になると、利用の仕方が少し変わってくると思います。簡易版で良いので、身近なところにあれば、そこを起点にして、もう少し深いところを知りたければ白書に戻れば良い。子どもたちや保護者、学校現場に利用いただけるような工夫が必要ではないでしょうか。
  • 行政の環境白書は、データに加えて行政の見解だけが掲載されていますが、企業の環境報告書では必ず、第三者の意見が掲載されます。今年の京都府環境白書で、生物多様性について書かせていただいたのは初の試みだと思いますし、環境白書に対する評価、あるいは京都府の環境政策の取組の評価がもう少し第三者的にされるようになれば、データ的にもさらにしっかりしてくるだろうと思います。
  • 環境白書などで、詳細なデータを毎年、同じような基準で把握しているのは、継続性の観点から非常に大事なことだと思います。一方で、一般の方がその情報を手に入れるのは難しいので、それを補完するためにも、以前は白書が出ると記者が読んで、面白いところがあれば記事にしていました。今、記者も忙しく、手が回らない状況もあるので、白書が完成したら、今年の特徴やトピックスをA4用紙1枚ぐらいにまとめて記者発表されると良いと思います。
  • 例えば洪水の問題にしても、前まではパソコンを売っていた企業が、今はビッグデータを使って、何時間後にあるいは何分後にどこまでどのぐらいの水量が来るかがわかるようなソフトを売り始めています。そういう面からいうと、京都の産業界はハード面での技術は持っているわけですから、それをソフトでつなげていくような環境ビジネスの促進が産業振興にもつながるような気がします。
  • 余り技術に頼り過ぎてしまうと、リバウンドが起こるので注意が必要ですが、企業側は、そこをビジネスチャンスに変えていく取組が必要だろうと思います。
  • 伝統産業は環境に対する意識もない時代から続いており、一昔前であれば友禅流しや窯の煙などもそのままでしたが、近年は技術革新等で変わってきています。また、輸送にかかるCO2排出量の問題ですが、もともとはほぼ国産の原材料で乗り切ってきたところ、今は漆の95%はベトナム産、麻はバングラディシュ産など外国からの輸入に頼っている状態です。林業が衰退していて良い木材が入手できなかったり、陶土の産地周辺に商業施設ができて土が掘れなくなったりなどの理由がありますが、伝統産業が環境に貢献するためにはそのような問題への対処が必要になってきます。
  • 京都府では次世代の電気自動車の普及率が急速に高まってきています。また、公共交通では、混雑するとその分のCO2が排出されるので、京都市内の観光客をどれだけ府域に誘導するかも重要です。
  • 学校で環境に関して子どもたちが知る、あるいは学ぶ時間というのは今、総合学習(総合的な研究の時間)になりますが、基本的にはどの学校でも同じようなものが一般的にされているだけで、身近な問題として京都はどうなのかといった話はほとんど子どもたちにも、学校にも入ってきません。子どもたちに、どうすればもっと次世代自動車の普及台数が増えるかというようなことを考えさせることが本来の環境教育のあり方だと思うのですが、その前にまずどのようにわかりやすく子どもたちに伝えるのか、それを指導する教員にどのように教材として選んでもらうのか、何かインセンティブをつけながら、行政主導型で促進していくことが必要だと思います。そうなれば、中間支援組織も非常に発信しやすくなるのではないでしょうか。
  • 伝統産業においても、時代に合わせて環境問題に取り組み、非常に苦労されている。そういう実態も子どもたちに伝えることで、ものの大切さや知恵も出てくるような気がします。必ずしも京都の良いところばかりではなくて、こういった問題がまだ解決されていない、その中でどのようなライフスタイルが選択できるのかという問いかけが子どもたちに必要ではないでしょうか。
  • 京都府でも毎年環境フェスティバルが開催されていますが、他府県の取組と差別化しながら展開していくことが必要だと思います。
  • 伊根町の太鼓山に風力発電施設がありますが、資料には余り紹介がありません。再生可能エネルギーでエネルギーが賄える世の中は非常に良いと思いますが、他府県では専門性や理解等が乏しく失敗した事例もあります。再生可能エネルギーに対する減免措置など、何か制度的なインセンティブを与える方が実際に風力発電を行うよりずっと現実的なので、事業者にとって良い方向付け、誘導に知恵を絞っていただければと思います。
  • 「森の京都」であることを考えれば、バイオマス発電がもっと活躍ができるだろうという気がします。それから、食品ロスの問題ですが、基本的には使えるものは使う、どうしても使えないものについては、例えばメタン発酵などを考える必要があるのではないでしょうか。
  • アメリカのシアトルでは、一般家庭から出た食品の食べ残りを「コンポスタブル」として分別しており、マリナーズ球場でも食品ロスや食器は全てコンポスタブルに分別しています。そういった閉鎖的な空間、例えば、京都スタジアム(仮称)を食品ロスを減らす実証実験の場所として使ってみて、コンポスタブルがよいのか、メタンガス発酵がよいのか、検討する余地があるような気がします。
  • 日本では、可燃ごみと不燃ごみとリサイクルと大型ごみという分け方になりますが、生ごみもコンポスタブルに変えていけば、焼却場を減らすことができる可能性もありますし、現状、かなり外国との取組の差が出てきているような気がします。
  • いわゆる低炭素ではなくて脱炭素、3Rではなくて上流の2R対策、それから緩和策、適合政策を考えていく。この適合政策になってくると、ある意味で予防的な措置にもなってきますし、将来的なビジネスチャンス、あるいは府民の安心・安全を守るための取組になってくるだろうと思います。今までの計画と同じ言葉を使いながらも、少し観点が上流対応、防止的、事前的な対応というような形で変わってきているところを強調しながら政策を進めていただけたらと思います。
  • さらに、企業が環境問題を自らの問題として考えるよう、「RE100」や「SBT」宣言をした企業数日本一を目指すなど、もう少し企業の取組を促してはどうでしょうか。それから、社会的弱者についての配慮、特に京都の場合、中小企業や伝統産業が多いので、環境問題までなかなか取組が難しい、そういう中でも努力している面を強調しつつ、環境政策と産業政策を結び付けるような支援が必要ではないでしょうか。

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