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技術資料『水辺の学校「大手川自然博物館」の取り組みについて』

このページの資料は、技術職員のスキルアップの一環として実施している土木建築部の技術職員による「土木工事管理研修」に使用した資料を元に作成しています。

主題:水辺の学校「大手川自然博物館」の取り組みについて

1 はじめに

宮津市を流れる大手川は平成16年10月20日の台風23号により甚大な被害を受けたことにより、同年12月に河川激甚災害対策特別緊急事業(以下、激特事業)の採択を受けました。

概ね5年間という短期集中的な事業を行う中で環境配慮、維持管理方針の検討はもちろん、将来的な河川管理、大手川沿川の整備には住民主動の主体的な参加が必要不可欠であると考え、改修工事と平行して住民参画の川づくりに取り組んでいます。

今回は住民主動で開催された総合学習である「水辺の学校『大手川自然博物館』」について報告します。

2 大手川の概要

大手川は、大江山山系普甲峠に端を発し、途中、今福川、滝馬川等を合わせながら北流し、宮津市中心市街地を経て宮津湾(日本海)に流入する、流域面積27.56平方キロメートル、流路延長約10キロメートルの二級河川です。

上流部はいわゆる渓流的な景観を持っており、ヤマメなどの渓流魚や、ヤマセミ・カワセミといった鳥も確認されています。

中流部には田園地帯が広がっており、川は大きく曲がりくねり、カーブの内側には砂が堆積する、いわゆる砂州というものが形成されています。

下流部は海水の影響があるいわゆる感潮区間になっています。川の両側には人家が建ち並び、河口部にはヨシ群落も確認されています。このように流路延長10キロメートルの間に川のすべての景観が現れる貴重な川です。

さらに、京都府の管理する二級河川の区間約4.5キロメートルの間に、落差工などの河川横断構造物が無いため海から遡上してくる魚が自由に川と海を行き来できるという大きな特徴があります。

大手川の流域図及び位置図
(大手川流域図と位置図)

2-1 大手川河川激甚災害対策特別緊急事業の概要

大手川は現況河川の流下能力が低く、昭和63年、平成10年、平成11年と続いて災害を受けてきました。このような状況から、大手川では平成10年度に広域基幹改修事業の採択の後、平成12年度に河川整備基本方針、平成13年度に河川整備計画を策定し、測量、設計、用地買収に取り組んできました。

しかし、平成16年10月の台風23号では、計画規模に匹敵する洪水が発生し、2名の尊い命が失われただけでなく、浸水家屋戸数が計2,400戸以上という甚大な被害を受けました。このため、大手川では平成16年度に「河川激甚災害対策特別緊急事業」の採択を受けて、改修事業を鋭意進めています。

大手川の二級河川全区間において30年に1度程度の降雨で発生する洪水に対して洪水の安全な流下を図り、既往最大の洪水に対処できる川づくりを平成22年(概ね5年間)を目標に実施しています。

表は、当日の雨量と水位の経過を表したものです。午後2時から5時の3時間で143ミリの雨が降ったことがわかります。
水位はKTR橋梁の上流にある京口観測所のものですが、午後6時に最高水位3.87メートルを記録しており、地盤からは約1.3メートル上まで水位があったことがわかります。

台風23号直後の航空写真
(写真:平成16年台風23号直後の航空写真)

平成16年台風23号の雨量と水位
(表-1:平成16年台風23号の雨量と水位)

3 大手川河川激甚災害対策特別緊急事業における主な取り組み

大手川では短期集中的な事業展開を行う中で、工事への協力のみならず将来的な川づくりまでをも地域で行っていくために次の項目に重きをおいて事業に取り組んでいます。

3-1 情報発信

住民参画の川づくりを進めるためには、地元関係者に対してきめ細やかな情報提供をしていく必要があります。

そこで、大手川に関する様々な情報を発信する手段として、出前語らいはもちろんのこと、毎月20日にA4両面印刷版の「大手川だより」を大手川沿川の関係者に発行しています。

更にインターネット版「大手川だより」も丹後土木事務所のホームページ内に掲載しています。インターネットのメリットを活かし、写真等でビジュアルな構成として、広く公表しています。

3-2 住民参画

ワークショップ

住民参画として3回のワークショップを開催し、計画段階からの住民参画による川づくりを鋭意進めています。
下流、中流、上流と工区ごとにテーマを設定し、ワークショップを行っています。 

ワークショップ

概要

大手川の護岸を考える!ワークショップ 下流の大手橋から中橋区間は旧宮津城の外堀に位置している。この区間を対象に、「宮津の歴史と自然を生かした安全で、心やすらぐ水辺づくり」を目標として、景観に配慮した護岸構造の検討や遊歩道の整備について意見を出し合い検討した。
大手川『自然と親しむ空間を作ろう』ワークショップ 大手川の中流において、蛇行区間の改修により河川敷に余裕のある箇所の有効利用として、生き物にも配慮した川とふれあえる空間の整備について意見を出し合い検討した。
「調べて、学んで、創ろう!上宮津の親水空間」ワークショップ 大手川の上流部において、「地域で創り、育てる川づくり」を目標に、川に親しめる空間整備を検討する。(現在、開催中)

総合学習

大手川沿いにある宮津小学校上宮津小学校の生徒を対象にリバーウォッチングならびに総合学習を毎年行っています。

清掃活動

去る10月28日(日曜日)に「大手川クリーンアップ大作戦」と題した住民主動の清掃活動が大手川全川で行われました。

3-3 環境への配慮

大手川では『大手川環境配慮指針(案)』を策定し、それに基づき工事、維持管理を行っていきます。具体の方針は以下のとおりです。

健全な水循環および物質循環を維持する

  • 護岸には透水性のある空石積みや植生マットを採用する。

長年形成された自然環境をできるだけ生かす

  • 平面線形を考慮して現状の河畔林や淵を保全する。
  • 現地の発生土を覆土に活用し、在来植生の自然回復を図る。

重要な生息環境を保全する

  • アユが産卵する可能性のある瀬やカワセミの営巣場となりうるような崖地形を保全する。

歴史・文化の感じられる景観を形成する

  • 既存の石垣を活用し、城下町の堀としての景観を形成する。

3-4 維持管理の方針

大手川では、河川の治水環境機能を維持する管理方針として「浚渫」から「除草」まで幅広い内容について具体の方針を『大手川環境配慮指針(案)』の中で示しています。

特にワークショップを開催した区間を中心に、地域住民との協働による維持管理手法の確立を目指しています。

4 水辺の学校「大手川自然博物館」への経緯と準備

4-1 経緯

宮津美しさ探検隊(活動エリア 宮津市全般)」の「大手川を題材とした市民参加型のイベントを開催したい!」という思いにより、関係機関に呼びかけたところ「上宮津21夢会議(活動エリア 大手川上流域)」と「京都府丹後土木事務所(河川管理者)」、宮津市教育委員会(教育窓口)」が集まり、実行委員会を立ち上げました。

以前よりこれらの住民団体とは大手川激特事業採択以降にワークショップ等により交流を持っており、府としても大手川激特事業へより一層の住民の意識が向く良い機会であるので積極的に参加しました。

4-2 目的

市民、地域活動団体、学校、行政が住民主動のもとに協働し、未来を担う子供から大人まで参加できる“川づくりイベント”を開催することにより、生き物の住み場所としての川の役割や川沿いに暮らす人々と川の結びつきを、地域の皆さん一緒に学んで考えようという目的を実行委員会で決めました。

4-3 実施概要

概要としては宮津小学校、上宮津小学校の4年生を対象とした学習会と体験学習からなる総合学習と魚類や鳥類などの大手川の生き物を題材とした一般展示会を今回行うもので、実行委員会のメンバーの具体的な活動内容は以下のとおりです。

  • 宮津美しさ探検隊は事務局の窓口となり、勉強会ならびに展示会の会場選定と装飾、機材の準備、協力していただける人材探し及び地元への協力案内。
  • 上宮津21夢会議は本企画に協力していただける人材、特に勉強会の際に「大手川の思い出」を語っていただける講師探し及び地元への協力案内。
  • 宮津市教育委員会は学校と実行委員会との連絡調整と総合学習時に協力していただける人材探し。
  • 丹後土木事務所は体験学習に適した場所の選定、機材を貸し出してもらえる機関への協力依頼、総合学習ならびに展示会に協力していただける人材探しと展示場に使用する激特事業に関するパネル、魚類に関するパネルなどの資料提供及び広報、丹後土木事務所ホームページでの案内。

なお、今回の予算は事務局より申請した財団法人リバーフロント整備センターの「川に学ぶ」活動助成事業(※注1)の助成金を活用しました。

(※注1)
本助成事業は、河川・海岸の水辺空間に関して、市民の人々の関心を高め、「川に学ぶ」社会の実現を促進するため、市民団体などが河川・海岸の水辺でおこなう自然体験や環境教育の活動などに対し、その費用を助成するもの。

4-4 具体的な日程調整

総合学習授業として計画したので宮津市教育委員会を窓口とし、各学校との調整を行った結果、7月17日(火曜日)に決定し、一般展示は翌18日から22日までの5日間としました。

4-5 調査箇所の選定

参加者の人数と企画内容、安全性などを考慮して今回は湊橋付近、松原橋付近、鮎川合流点付近、大橋付近の4箇所で水質調査、底生生物調査、魚類調査などを行いました。(場所については次の調査ポイントを参照してください。)

4-6 講師および器材の確保

体験学習では生物などの専門的な知識が必要なため、早い段階で調査地点毎に講師を確保する必要がありました。そこで事務局から京都府の「出前語らい」制度へ応募し、専門職員の協力を要請しました。

また、器材については今回が初回ということもあり、器材は全く揃っていなかったので各方面へ器材の貸与を依頼しました。(表-3 協力機関一覧参照)貸与で補えない器材については新規購入しました。

今回器材を貸与していただいた機関以外にも「子供の水辺サポートセンター」(※注2)などでの貸し出しが可能です。

(※注2)文部科学省・国土交通省・環境省の 3省連携(農林水産省も協力)により平成11年度より進められている『「子どもの水辺」再発見プロジェクト』の推進・支援組織として平成14年7月に財団法人河川環境管理財団内に設立されたセンターで、子どもたちの水辺体験活動の充実を図るために、情報提供、各種講習会等の開催、資機材の貸し出しなど、地域で活動する学校の先生や市民団体の皆様の活動を支援している団体。 

内容

協力機関

水質・底生生物調査講師 環境管理室水質担当(※注3)、丹後保健所(出前語らい)
魚類調査講師 水産事務所(出前語らい)、丹後魚っ知館、日本技術開発株式会社(※注4)
器材など 丹後保健所、海洋センター、宮津市役所など

 (※注3)環境管理室水質担当を通じて全国水生生物調査に申込みをしました。本調査は川にすむ生き物を採集し、その種類を調べることで、水質(水のよごれの程度)を判定するものです。
(※注4)日本技術開発株式会社は調査箇所付近において「調べて、学んで、創ろう!上宮津の親水空間」ワークショップなどの業務委託の請負業者で今回の企画に協力してもらいました。

4-7 会場の選定と確保

勉強会には総勢120名程度の児童が一箇所で学習するために広い会場が必要となったため「みやづ歴史の館」の大会議場を会場として利用しました。

また、展示場は一般の人が多く訪れる「みやづシーサイドマートMipple(ミップル)」の催事場を選び、7月18日から7月22日までの5日間展示することにしました。

みやづ歴史の館 ミップル
勉強会に使用した「みやづ歴史の館」(写真左)と展示会場に使用した商業施設「ミップル」(写真右)

4-8 関係者への概要説明及び参加要請

企画内容や日程が決まれば、学校などの関係機関に概要を説明しておくとともに関係自治会などを通じて地域の方々へ参加要請を行いました。出来るだけ地域の方の協力も必要だと思ったため、各調査地点近くにお住まいの方に依頼し、参加していただきました。

4-9 住民や関係機関へのPR

記者発表、関係機関の広報や丹後土木事務所のホームページでのPRを行いました。

5 水辺の学校「大手川自然博物館」の実施

5-1 勉強会

勉強会の内容は「大手川の思い出」(上宮津夢会議 車田氏)、「大手川の生き物たち」(宮津市立府中小学校 東山先生(※注5))、「生き物にやさしい川づくり」(京都府丹後土木事務所 安田主任)で午前中の約1時間かけて講義をしていただきました。
(※注5)東山先生は大手川整備計画策定委員会委員で、大手川のアドバイザー的に様々な企画に協力参加していただいております。

5-2 体験学習

湊橋付近、松原橋付近、鮎川合流点付近、大橋付近の4箇所で実施しました。

(調査ポイント1)

湊橋付近:大手川の河口に位置する第一橋梁で、ここには海水魚やカニがたくさんいます。水深は約3メートル程度あり、子供が川に直接入ることは出来ないので講師の投網による魚類調査とし、児童は淡水と海水の比重実験、ヨシについてのクイズとカニ釣りを実施しました。

  • 魚類調査(講師:宮津市立府中小学校 東山先生)
  • 水質調査(講師:丹後土木事務所企画調整室 大滝室長)
  • カニ釣り体験(講師:丹後土木事務所災害対策室 平田担当係長)


講師による比重の説明(写真左)と講師の投網による魚類調査(写真右)

(調査ポイント2)

松原橋付近:現在の大手川の感潮区間の最上流地点で海水魚と淡水魚が混在している地点です。ここより上流では一部、深い箇所もありますが子供が川へ入ることが出来るので児童によるタモ網での魚類調査と、パックテストを用いた水質調査を行いました。

  • 水質調査(講師:丹後土木事務所災害対策室 東井室長)
  • 魚類調査(講師:丹後魚っ知館 山田氏、木村氏)

魚類調査 捕獲した魚
魚類調査(写真左)と捕獲した魚(写真右)

(調査ポイント3)

鮎川合流点付近:松原橋付近と同様な手法で魚類調査、水質調査を行うと共に底生生物調査を行いました。
※ 底生生物調査とは河川環境にどのような底生生物が存在するか調べることにより水質の判定を行う調査です。

  • 水質・底生生物調査(講師:丹後保健所 光岡主事)
  • 魚類調査(講師:水産事務所 井谷主任)

パックテストによる水質調査 採取した底生生物
パックテストによる水質調査(写真左)と採取した底生生物(写真右)

(調査ポイント4)

大橋付近:大手川の上流域で支川今福川との合流点下流に位置します。ここでは魚類調査、水質調査と底生生物調査を行いました。

  • 水質・底生生物調査(講師:丹後保健所 西田主事)
  • 魚類調査(講師:日本技術開発株式会社)

流速調査 透視度計による濁度の調査
流速調査(写真左)と透視度計による濁度の調査(写真右)

5-3 展示

体験学習で捕獲した魚類やカニ、底生生物などを直ぐに展示会場へ運び調査地点毎に用意されている水槽へ入れました。実際に展示した物は以下のとおりです。

  • 各調査地点の水槽とその付近に生息する魚の解説パネル
  • 底生生物と観察用顕微鏡
  • 調査状況の写真
  • 調査に使用した漁具
  • 大手川沿川に生息する鳥類の説明
  • 河口に繁茂しているヨシ(プランターに入れて)
  • 激特事業の概要と各工区の進捗状況を示したパネル並びにパンフレット
  • ダンプトラック全面に付けている「頑張ってます!大手川改修工事」エプロン(実物)
  • 工事で使用したコンクリートのテストピースとその解説

展示時間中は事務局員として丹後土木事務所災害対策室の職員も2交代で常駐し、来客対応や展示物の管理を行いました。

展示会場入り口 水槽を見る来場者

展示会場全景 土木事務所のPRパネル

使用した漁具の展示 底生生物の展示(顕微鏡での観察)

5-4 展示結果

今回の展示は7月18日(水曜日)から22日(日曜日)11時から19時(22日は15時まで)の展示を終えて入場者総数は延べ751名でした。

会場で行ったアンケートでは「大手川にこれだけ多くの魚がいることを再確認した。」などアユをはじめとし多くの魚が大手川にいることに驚くという意見がありました。

展示会場では来客対応だけではなく、展示内容を維持するために、エアポンプの管理や水槽の水替えはもちろん、弱って死んだ魚の撤去・補充を行いつつ5日間展示するために努力をしました。

6 水辺の学校「大手川自然博物館」を終えて(成果と反省点)

今回の水辺の学校「大手川自然博物館」実行委員会は、「宮津美しさ探検隊」、「上宮津21夢会議」、「京都府丹後土木事務所」、「宮津市教育委員会」の4者が集まってできた団体です。専門的な知識が十分でないので各方面の専門家による支援があって無事、開催できた企画でした。

今回の取組みにより、水産事務所、海洋センター、丹後保健所、丹後魚っ知館など人材や器材を協力しあえるネットワークが出来たことが非常に大きな成果だと思います。これは1つの部署ではできないことが、様々な方の協力によって大きな可能性に繋がることを意味しおり、今後、この様な企画を継続的に開催することができる貴重な財産になりました。

今回の企画では近くに水産事務所や海洋センター、丹後魚っ知館など魚類に関する専門機関により指導を得ることができました。このような機関が近くにないエリアでも「自然観察指導員」(※注5)などの専門知識を有する人材に協力を依頼することをお勧めします。

また、反省点は、役割分担が均等にならず、特定の人に多くの負担が生じたことです。次回からは今回の経験を活かし、役割分担を詳細に振り分け、できるだけ多くの人間が関わることが望ましいと思いました。

(※注5)財団法人日本自然保護協会の養成講習会を受講された方で地域に根ざした自然観察会を開き、自然を自ら守り、自然を守る仲間をつくるボランティアリーダー。

7 おわりに

現在、大手川では工事が複数行われていることもあり、地域住民の注目も集めています。ワークショップ、総合学習、清掃活動と住民参画の機会が積極に企画され始めており、「みんなで美しくしよう!」「みんなで育てよう!」という動きが平成16年の台風23号によって徐々に生まれてきています。

この流れを絶やすことなく繋いでいくために土木事務所として何が出来るか、どのように協働していくか、今後も地域住民と密に対話をしながら事業を進めていきたいと思います。


(平成19年7月19日付けの京都新聞(中丹・丹後版)朝刊に今回の取り組みが掲載されました。 

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お問い合わせ先

丹後土木事務所 災害対策室 ダイヤルイン電話 0772-22-3243