よくある質問・回答 陶工高等技術専門校
Q 1 陶磁器製造に必要な技術のうち、どの分野が校で学べるのですか?
- 陶磁器製造に関する技術分野としては、「原料:土」・「成形」・「釉薬」・「焼成」・「絵付」があり ます。「成形」には、ロクロ成形法とその他の成形法(ひねり・タタラ・石膏型・鋳込み・機械成 型など)があります。
ロクロ成形法には、陶土を使用する「土もの」と磁土を使用する「石もの」があります。これらの諸技法の組み合わせは無数にあり、そこに陶磁器制作の難しさ、奥深さがあり、逆にいえば新作品を創り出す無限の可能性があるのです。 - 「成形コース」では、最も基本的技能である陶土を使ったロクロ成形法をマスターすることができます。
技術の習得は、一度に多方面のものを求めても不可能で、一つ一つステップを踏んで確実にマスターしていくことが必要です。それだけやっても1年ではまだロクロ技術のごく基礎的段階なのです(体験したということで、できるということではありません。)。 - 「図案科」では、「絵付」分野に特化して訓練を行います。この分野には「下絵付」と「上絵付」 とがあり、ロクロ成形と同様、片方の技能をマスターするだけでも時間を要します。
特に京都の陶磁器業界ではこの分野の技術者の存在が不可欠であり、人材の育成が必要とされて いるため、当校では両方の技法を本格的に技術指導して業界の要望に応えています。 - 「原料:土」の選択や調合、複雑な「装飾法」、「釉薬」の組成分析や調合、各種の「焼成法」 などの分野は、就業後が本格的な勉強であり、それは一生続く過程です。
したがって、当校を出たあとは何でもできると考えたり、直ちに自立できると考えるのは正しく ありません。仕事の世界に入り込む手がかりを得た段階と心得てください。
Q 2 訓練時間の内訳はどんなものですか?
- 科によって若干異なりますが、大まかな時間配分は以下のとおりです。
学科(製陶法、図案法、美術工芸史など) 50時間
陶磁器製造実習 1,220時間
デザイン実習 40時間
視察研修、体育その他校内行事 110時間 計1,420時間
Q 3 「やきもの成形科成形コース」はどのような訓練をするのですか?
- 「成形コース」は、陶器のロクロ成形の技術を中心に訓練します。訓練時間の8割以上が実習で、確 実に製品が作れる腕を身に付けます。
基本を徹底的にマスターするため、各課題ごとに数的ノルマを設定し、反復練習によりサイズと 形態を揃えることと同時に速さと完成度を追求していきます。 - 最初は「土もみ」・「土取り」から始まり、年度の前半・中盤においては「基本課題」の小煎茶碗 ・丸底湯呑・角底湯呑・額皿・一輪生・筒花生を、年度の後半には「応用課題」として各自のデザ インに基づき、花器・煎茶器・番茶器・コーヒーセット・皿・鉢物・茶道具類などを制作します。
年度の終盤では訓練生の進路に応じた訓練を行います。特に就職先が内定している生徒について は就職先の製品と同様のものを制作し、即戦力となるよう備えます。 - ロクロ成形に必要な道具づくり、釉薬作業や焼成作業の基本も併せて訓練します。
- ひねり・石膏型・タタラ成形などの成形法や下絵付と上絵付などの装飾法についても「必修課題」 として訓練します。
- 学科としては、製陶法・図案法・美術工芸史・釉薬講義などがあり、併せて、陶磁器産地の見学 旅行、体育の時間もあります。
Q 4 「やきもの図案科」はどのような訓練をするのですか?
- 「図案科」は、陶磁器に毛筆で絵柄を描く技術を中心に訓練します。訓練時間の8割以上が実 習で、確実に製品に絵を描く腕を身に付けます。
基本を徹底的にマスターするため、各課題ごとに数的ノルマを設定し、反復練習により同じもの が多数描けることと同時に速さと完成度を追求していきます。 - また「絵付」には、素焼の素地に絵を描く「下絵付」と、釉薬をかけ本焼した素地に絵を描く「上 絵付」の別があります。
- 最初は紙の上に墨で模様を描く訓練から始まり、絵の具や筆の扱い方を覚えます。
年度の前半においては素焼きの小煎茶碗や湯呑・小鉢に下絵を描く訓練をし、年度の中盤は多色 の「和絵具」の使い方を覚え、本焼した茶碗、湯呑、抹茶碗の上に絵を描く訓練に取り組みます。
年度の後半になると、「下絵付」・「上絵付」の専門コースに分かれ、各自のデザインによって、 茶碗や鉢類、皿、花器、酒器、茶道具などに絵を描くことができます。
年度の終盤では訓練生の進路に応じた訓練を行い、特に就職先が内定している生徒については就 職先の製品と同様のものを制作し、即戦力となるよう備えます。 - 学科としては、製陶法・図案法・美術工芸史・釉薬講義などがあり、併せて、陶磁器産地の見学 旅行、体育の時間もあります。
Q 5 「成形科総合コース(二年制)」はどのような訓練をするのですか?
- 「総合コース」は新たに設置された二年制のコースで、一年目には成形コースと同様の陶土を中心とした基礎技術と知識を習得し、二年目には、オリジナルデザイン商品の企画・造形・研究・開発を意識して追求し、陶磁器製作のトータルな技術がマスターできることを狙っています。
- 訓練は、まず「磁器土」を使ったロクロ成形に取り組み、汲出し碗、角底湯呑、皿、鉢、花器、 茶碗や茶器を作っていき、次第に大きな物やセット物に取り組んでいきます。
また、「必修課題」として、ひねり・タタラ・石膏型鋳込み成形・下絵付・上絵付など幅広い分野の製品作りを訓練します。また、釉薬の調合やガス炉などの焼成についても、専門的な部分の訓練を行います。 - 学科としては、製陶法、造形デザイン法、釉薬開発など、より高度な講義をします。また、陶磁器産地の見学旅行、体育の時間もあります。
Q 6 芸術系大学の陶芸コースと、どこが違いますか?
- 多くの大学では、教育・教養的視点から、陶芸の概論的知識と実技の初歩を幅広く学びます。幅広い美的センスを養う助けにもなります。ただ、造る作品はオブジェ的なものが多く、各人の個性 を生かした教育が行われています。
したがって、大学では実際に陶磁器製造事業所で必要なものづくりの技術・技能を身に付けることは困難です。 - 当校では、実際に製品が作れる技術・技能を養成することに主眼を置き、実習主体のカリキュラ ムを組み立て、濃密な指導体制の下、反復継続訓練によって就業できる技能を身に付けます。
- したがって、大学で陶芸を学んだ人が、就職できる腕を身に付けるため当校に入校することは決 して珍しくありません。
ただし、大学で陶芸を勉強した人が入校選考に有利とはいえず、選考は平等に行います。また、 芸大卒業者が必ずしも入校後も特別に訓練進度が速いということもありません。それだけ大学での 教育と当校での訓練は別物だと考えてください。
Q 7 類似の陶芸教育施設と比較して、どんな点が特徴ですか?
- 次のような点が当校の特徴です
- 京都府という行政が責任を持って運営に当たっていること
- 授業料が低額であること。
- 実際の就業に必要な技術・技能、働く態度を身に付ける公共の職業訓練施設であること。
- 60年の歴史を重ねて蓄積された訓練ノウハウを持ち、最も短期間で効率的な技能付与が可能であること。
- 生徒10名に対し1名の割合で正規職員の指導員を配置し、個別指導を基本とした濃密な指導 を実施していること。
- 伸びる生徒にはその技術力を一層伸ばす指導を行いますが、技術力不足を感じる生徒に対しては底上げ指導を強化し、生徒全員の修得レベルの差を極力少なくし、粒をそろえた育成水準を 確保していること。
- 京都の陶磁器業界の従事者の大半が当校修了生であり、業界との結び付きが強く、それを基に就職指導や斡旋をしていること。
- 同目的、同年代の生徒が切磋琢磨しながら訓練し、生涯の結びつきができるとともに、厳しい訓練の中にも楽しさが得られること。
Q 8 どのような人が入校の対象になりますか?
- 応募資格は高卒程度となっていますが、18歳以上であれば中学卒業者でも可能です。
当校は、「京焼・清水焼」の後継者養成施設として、京都府が設置した公的な職業能力開発施設 です。したがって京都の陶磁器業界に就業することを目的とし、それが現実に可能な方を対象とし ています。趣味や教養のための「手習い施設」ではありません。
Q 9 入校資格に年齢の制限はありますか?
- 「入校の条件」においては年齢制限は設けていません。
- 陶磁器製造技術の習得は、腕に「技」を身に付ける訓練ですので、一般的に年齢が増すほど難 しくなります。その点は手先を使う工芸部門やスポーツの世界とよく似ています。
- 製陶事業所への就職も、年齢が増すほど難しくなるのが現実です。さらに一人前になるには、当校修了後5~10年間の実務経験(就業期間)が必要で、それまでの間は十分な賃金は期待できま せん。
- これらのことを考えると、陶磁器業界への就業を前提とした職業訓練は、若くかつ親の援助も期 待できるうちに始めることが望ましいと言えるでしょう。具体的には20代前半までがもっとも望 ましく、30代も半ばを超えると身体的にも就職条件という点でも厳しくなります。
- 当校の目的は、実際に就業してもらうことですから、入校選考では、訓練結果が確実に身に付く か、そして就業が可能かどうかが大きな判断要因となります。
Q10 入校選考はどのような方法で行われますか?
- 「成形科」と「図案科」の場合、入校選考は「学科(国語・数学)」・「デッサン実技」・「面接」によっ て行い、職業訓練を受ける必要性、仕事に就ける可能性、訓練に耐え能力を伸ばせる可能性を総合的に判定します。
- 「学科」は中学で習う高校受験程度の国語と数学です。(試験問題の程度を知ってもらうため出題傾向の資料を作成していますので、参考にして下さい。)
- 「デッサン実技」は、1時間程の時間で「簡単な物の形」を描いてもらいます。これは視覚を通 して物を正確に表現できる力を判断するためのもので、事前に十分予習をすることを勧めます。
- 「面接」は、個別に、当校を志望した動機や将来の考えなどを聞きます。
Q11 入校に際し、陶磁器を作る技術力や予備知識は必要ですか?
- 特に必要ありません。初心者でも興味や情熱があれば、自信を持って応募してください。
入校選考では、その時点での保有知識・技術より、将来陶磁器製造従事者としてどこまで技術力 を伸ばせるかという潜在的可能性を評価します。 - 訓練は個別指導に近いやり方で、ステップを追って着実に基礎から学べるシステムになっていま すが、陶磁器を作る技術力や予備知識があれば、より効率的にマスターできるのは事実です。
Q12 「成形科」を修了後、「図案科」へ入校できますか?
またその逆はできますか?
- 「ロクロ技術」と「絵付技術」は、そのいずれもが、一生をかけて「プロレベル」を目指さなけ ればならないほど、技術習得に時間を要する奥の深い仕事であり、京都の陶磁器業界では、それぞ れが分業体制をとって仕事をしています。
- したがって、当校修了後は、いずれかの技術をもとに就業してもらうこととなり、連続して相互 の訓練を受けることは認めていません。
- しかし、就業後何年かした後、その職種への適性がないと判断される場合や、その職種で失業し た場合、その他まれには仕事の事情で両方の技術を習得する必要に迫られることも考えられます。
そのような場合は異なる科への入校を認める場合もありますので、必ず事前に相談して下さい。
ただし、その場合も、希望する科を受験して合格する必要があります。
Q13 競争率はどうですか?
- ここ数年、「成形科」は定員の2~3倍程度で、「図案科」は定員の1.5 ~2 倍程度です。
(21年度生競争率:「成形科」2倍、「図案科」2倍)
Q14 二次募集はありますか。
- 22年度入校生については、年二回に分けて募集します。(前期が21年10月30日、後期が22年1月21日)
- 定員に達しなかった場合は追加募集をする可能性がありますが、詳細は校の方に問合わせてください。
Q15 入校生はどのような構成ですか?
- 性別は、全般的には「成形科」は男性が多く、「図案科」は女性が多い傾向にありますが、最近は年度により大きく変動しています。
- 年齢は、20代が大半で、次いで10代、30代となり、40歳以上の入校実績は極めて少なくなります。なお、平均年齢は25歳前後です。
- 学歴は、短大卒以上が約6割を占め、残りの大半が高卒です。中卒者もまれにいます。
- 出身地は、年度により異なりますが、約半数が府内の出身者です。
Q16 授業料などの費用はどうなっていますか?
- 入校選考料は2,200円です。
- 22年度入校生から入校料が5,650円、授業料は年間118,800円となっています。
ただし、22年、23年度入校生で入校前1年以上、京都府内に住所のある方は免除されます。 - 他に、訓練に必要とされる教科書、教材及び個人が専属的に使用する用具代、研修旅行経費な どに、約8~10万円程度が必要となります。(科・コースによって金額は多少異なります。)
Q17 職業訓練を受けている期間中は雇用保険が受給延長されるのですか?
- 雇用保険の受給資格がある人や受給中の人は、職業訓練を受けている期間、雇用保険が受給延長 される制度があります。
ただし、就職するためにはその訓練が必要であると、職業安定所(ハローワーク)が認めた人に 限り適用になります。 - したがって、受給延長を希望する人は、当校に入校願書を出す前に、住所地最寄りの職業安定所 で相談してください。職業安定所の相談を経て、職安経由で願書を提出し(本人直接の提出を指示 されることもあります。)、入校した場合に適用となります。
(職業安定所に無断で入校選考を受け、合格した後で相談に行っても適用されないことがあります ので注意してください。)
Q18 訓練中のアルバイトは可能ですか?
- 訓練は4時35分に終わりますから、土日はもちろん、平日もアルバイトは可能です。
ただし、毎日の訓練は肉体的にも精神的にも厳しいものがあり、生活上どうしても必要なアルバ イト以外はお勧めできません。
できれば親の支援、一定の蓄えのもとに訓練を受けることを勧めます。 - なお、無利子の奨学金貸付制度(月額25,000円程度)もありますので、詳細は相談してください(所得基準があり、また要件を満たしていても貸付を受けられない場合があります。)。
Q19 修了後の進路はどうですか?
- 様々な進路があるので、それぞれについて説明します。
1 製陶事業所への就職
当校修了後、一般的には「京焼・清水焼」の製陶事業所に就職し、当校の基本目的はそこにあ ります。就職希望者は校の就職斡旋でほぼ就職してきましたが、最近は不況の影響で求人が減少 し、予断を許さない状況です。就職は校でも斡旋しますが、各人の縁故で就職する場合もかなり あります。希望どおりの求人がなければ自己開拓努力が求められる状況です。
2 陶芸家への弟子入り
師事したい陶芸作家に弟子入りする人もあります。作家を目指す人が多く選択する道ですが、報酬等の就業条件は厳しいのが一般的です。
また、陶芸作家は自ら求人することがないので、弟子入りを希望する人は、自己開拓や縁故を 通じて、自力で道を開く必要があります。
3 家業に従事
実家が製陶業を営んでいる場合は、家業に従事する人も多いです
4 京都市立工業技術センターでの研修
「各科」から京都市立工業技術センターの伝統産業技術者研修「陶磁器コース」(みやこ技塾) に進む人もいます。ここでは「釉薬」の専門的分野の研修を主にして、陶磁器製造技術と知識と を幅広く習得できます。期間は1年ですが、専科に進みさらに1年延長することもできます。
詳細は京都市立工業技術センターに直接問い合わせてください。
(京都市下京区中堂寺南町17 京都リサーチパーク内 電話:075-311-3171)
Q20 さらに別の機関で訓練や研修を重ねるほうがよいのでしょうか?
- 訓練や研修を重ねる道はありますが、そうしないと就業できないということではありません。就 業に必要な基礎知識と技能は当校の1年の訓練で十分身に付きます。
- 事業所の実態も「土もの」(陶器)と「石もの」(磁器)に分かれており、「土もの」の事業所な ら当校の1年の訓練のみで十分就業できます。
そもそも技能は実際に仕事をしながらのほうがよく身に付くものです。また、当校なら法に基づ く就職斡旋まで可能ですが、他の機関ではそこまでは期待できません。 - 就職して実務の世界に早く飛び込んで経験を積むほうがよいと考えますが、幅広い訓練や研修を 重ねて、したいことを絞り込んでいくことも一つの選択です。要は、各人の陶工としての将来設計 との兼ね合いで決めることです。その多様な選択肢の第一歩として当校があるといえます。
Q21 求人状況・就職斡旋の状況はどうですか?
- 当校は、職業安定法に基づき無料職業紹介が行える施設として指定されており、事業所からの求 人を受け、就職斡旋をしています。したがって、就業条件も法に基づく規定を満たしているかをチ ェックし、就業条件の確保に努めています。
- 近年、陶磁器業界の不況により、求人がかなり減少している現実にあります。したがって、事業 所訪問や求人依頼範囲の拡大など、校としても努力を強め、求人の確保に努めています。
- 今日まで成形系(「成形科」と「研究科」)については、進学者や家業従事者、縁故就職者が多いため、就職希望者に対応する求人数はありましたが、今後は予断を許さない状況にあります。
- 「図案科」については就職希望者が多く、その数より求人数が少ない状況ですが、縁故就職や自 己開拓努力の結果もあって、最終的にはほぼ全員の進路を確定してきました。しかし今後は予断を 許さない状況にあります。
- 京都の陶磁器業界は事業所規模が小さいこともあり、公募による求人方式が少ないことが特徴で す。したがって求人内容と自分の希望とが一致しない場合は、自ら働きたい作風の事業所を探し、 様々な人のつながりを活用し、就職依頼活動を自力で行うことも必要です。
Q22 弟子入りについて教えてください
- かっての技能伝達は、「大工」や「料理人」の世界などの様に、弟子入りという徒弟的修業が基 本で、陶磁器製造もそうでしたが、より効率的に技術を身に付けられるようにということで、職業 訓練施設や各種学校などが整備されてきました。
- 今でも弟子入りが残るのは、特定の陶芸作家の作風に惚れ込み、報酬よりもそこで仕事をしなが ら教えてもらうことを期待するからです。そこでしか身に付かないことを学びたいと思って弟子入 りするわけです。何年かの厳しい修業の後、腕が上がり、師匠の評価を得られれば、世に出しても らう「後押し」も期待できます。
したがって、弟子入りを志向する人は大部分が陶芸作家または自営を目指す人です。親が陶芸家 でその後を継ぎたい人が、若いうちに一時期他所で修行させてもらうため弟子入りすることもあり ます。 - 弟子入りは雇用ではなく、修行という位置付けです。したがって給料といえるものはなく、月々 若干の手当をもらい、盆暮れにはややまとまった手当をもらえる程度です。それに「下働き」から何でもやらねばなりません。弟子入りを志す人は、生活のための自己資金または親の援助が期待できることが条件であり、精神的にも強固な自立志向が必要でしょう。
今でも弟子入りを求める人はいます。しかし陶芸作家も不況の中で仕事の確保に苦労されている 方も多く、特定の縁故でもあれば別ですが、なかなかOKはもらえないのが現状です。 - 弟子入りする場合は、最初からハイレベルの陶芸の知識・技能は求められません。師匠に染めて もらうわけですから、中途半端な色が付いているとかえって邪魔になる場合もあります。生半可な知識を振りかざすのも禁物です。大事なのは熱意、気働きのできる能力です。それと仕事のコツや 技を盗める能力も必要です。手取り足取り教えてはもらえません。自分で学べる人しか続きません
Q23 陶芸で食べていけるようになるにはどれくらいの修業期間が必要ですか?
- 当校の訓練では実践的で濃密な実力養成をしていますが、それでも奥深い陶芸の世界の入口レベ ルの基礎を身に付けた段階に過ぎません。5~10年間は多様な修業をし、腕を磨かなければ一人 前にはなれません。
その結果が一人前の給料を稼げることになるのであり、場合によっては自立も可能となるのです。 それがどれだけ早く実現するかは、多少は才能も影響しますが、要は本人の努力の結果であり、あ る意味では才能も努力に含まれるといえます。 - 自立(陶芸家として)を目指す場合も、本校修了後直ちに自立することは困難と思ってください。 いずれは自立を目指す人も、一度は就職または弟子入りをし、5~10年間は実力を養い、製造と 販売のノウハウを覚えた後にすることを勧めます。
実務経験を重ね、様々な障害を乗り越える中で、多様な実践的技術が磨け、仕事の段取りができ るようになります。また、商品企画ができ、受注から販売までの流れがわかるようになり、業界で の人的なつながりもできてきます。その期間を経ないと自立は困難です。
したがって、当校修了後は教育訓練施設の中での訓練や研修を重ねるより、実務経験による技術 習得を目指すほうが自立への近道ともいえます。 - 加えて、自立するためには、消費者のニーズにマッチした製品を生み出せる特別なセンスが必要 です。夢を持ってチャレンジすることは大事なことですが、全ての人の夢がかなうわけではないという現実も承知した上でチャレンジしてください。
Q24 「図案科」を出た人が自営している例はありますか?
- 就業する中で「絵付」技術に熟練して一定のレベルに達し、あわせて業界事情に通じた後、自営する人もいます。他の製陶業者から「絵付」仕事を請け負ったり、完成品を作って自分で販売しま す。その場合、素地は製陶業者から提供を受けたり、既製品を買ったり、ロクロ師に注文して必要 なものを調達します。また、ひねり・タタラ・石膏型成形などの技法を勉強して、ロクロを使わな いで素地を自分で作ることも可能です。それに「絵付」をし、施釉、焼成して完成品を作ります。
- 「絵付」の魅力で作品を売る場合は、釉薬と焼成の技術の幅はそう広くありません。そうして完 成したものもその人の立派な製品です。そのような過程を経て自営する人もいます。また仕事が発 展すればロクロ職人を雇用し、自分の企画で製品を作る工房を営む道も可能です。京都ではそのよ うな人達が「色絵陶芸協同組合」を組織し、支え合いながら活動をされています。
- 「ロクロ」・「釉薬」を自分の中心技能にするか、「絵付」を自分の中心技能にするかという違い はありますが、これは陶芸へのアプローチ方法の違いに過ぎません。入口が違うだけで、「焼物づ くり」の世界に変わりはありません。
Q25 「ロクロ」と「絵付」の両方ができることは目指せませんか?
- 「ロクロ成形」と「絵付」は、それぞれが一生をかけて習得しなければならない、奥深い技術で す。一人の人が両方をマスターするのは極めて困難です。だから業界では「ロクロ師」と「絵付師」 の分業体制が一般的なやり方です。
広い陶芸界では両方やっている人もありますが、ここで問題にしている「絵付」は、「京焼・清 水焼」・「九谷焼」・「有田焼」のような伝統的文様を駆使した花鳥山水が自在に描けるようなレベル が必要な、高度な「絵付」をさしています。 - このような専門的な「絵付」ではなく、筆でサッサッと単色の絵を描く程度のことは「ロクロ師」 (成形師)でもやっている人がいます。「釉薬」による装飾の他に簡単ではあっても絵が描ければ 製品の幅が広がります。そのため一人で制作しようとする人の中には、時間を作って「絵付」の基 本を独習したり、各種講座で勉強する人もいます。
- 腕に技を身につける訓練は一度に多くの分野を並行してやれるものではありません。「ロクロ」 または「絵付」の技術をまずマスターし、仕事に就き、それでさらに必要なら勉強の分野を広げる ことです。最初から両方同時に勉強することは困難です。
Q26 就業の実態に男女差はありますか?
- かって業界では、「ロクロ仕事」は男性の仕事という固定観念があり、未だにかなり残っていま す。これは「土もみ」・「ロクロ成形」・「窯焚」や重量物運搬などにかなりの力を要求される作業が 多いことなどが原因と思われます。加えて、事業所の規模が零細なため、様々な仕事を一人でこな してもらう必要があることも原因です。
- 今日では女性の社会進出の高まりの中で、かなり克服されてきましたが、未だにその傾向は強いため、女性で「成形科」を志望する人はそれを乗り越えるだけの強い決意と就職開拓の取り組みが 求められます。
- なお、「絵付」の仕事には男女差はないですが実態としては女性の割合が高いです。これは「ロクロ仕事」が男性の仕事とされてきたことの裏返しの結果と思われます。逆に男性が少ないせいか、 就職に際しては男性が歓迎される傾向にあります。
- 業界としては、熟練に時間を要するため、長く働き続けられる人を求めています。男女雇用機会 均等を現実のものにするため、今から仕事に就こうとする人も含め、一人一人の就業継続努力が求 められています。
Q27 陶磁器業界での就業条件はどうですか?
- 京都の陶磁器業界は概して零細で、従業員が4人以下のところが6割を占めています。家族従事 者でやっているところが多く、それに若干名の雇用者を加えて構成されているところが大半です。
- この仕事は、腕で仕事をするため、年齢が高くなっても働き続けられ、生涯の仕事として取り組 めるのが特徴です。入職時の賃金は、まだ腕が伴っていないということもあり、最低賃金(現在約 13.5万円/月)程度からスタートし、腕が上がって職場で不可欠の人材になればなるほど高くな るといえます。
