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都会の人に炭焼きを 「甲田 敏一さん」

 

 京都府唯一の村、南山城村。村の約4分の3は山林で、京都府和束町、笠置町、奈良県奈良市、三重県伊賀市、滋賀県甲賀市に接しています。自然がいっぱいで緑豊かなこの地域では、お茶やシイタケ、夏の冷涼さをいかしたトマトなどが栽培され、消費者の方々に特産品として親しまれています。
 この南山城村の北西部、童仙房地域に、炭焼きに約60年間精を出す炭焼きの達人「甲田敏一さん」がおられます。
 南山城村では、農山村への移住や営農を希望し、田舎暮らしの場所を探しておられる方を対象に「京のやましろ田舎ぐらし必見★発見★体験プログラム」を南山城村田舎暮らし推進協議会が中心となり山城北・山城南農業改良普及センターの協力のもと実施しています。 
 甲田さんはプログラムの5コースのうちの1コース(炭焼きコース)の受入と講師を担当され、炭焼き作業の指導、体験を通して、都市部の人と地元の人が知り合う機会やきっかけ作りに活躍されています。
 また、村内の炭焼きグループ「隅(すみ)の会」の会長であり、炭焼き体験教室の開催や小学校の炭焼き体験キャンプの受け入れ等、手作りの炭窯で良質の炭作りとともに田舎暮らしの良さを多方面に発信されています。

炭焼きを始めたきっかけは?

 自分は15,6の時からおじいさん、おばあさん育ちで、山に一緒に連れて行ってもらってお伊勢さんの山で炭焼きをやっていた。以降、1年間だけ休んだが、それ以外はずっと続けてきた。もう60年近くほど。それでもまだまだ1年生。炭でも農業にしても毎年同じようにしても毎年同じ物はとれないですからね。毎年幼稚園生だと思ってやってます。
若い頃は製材所に勤めていたこともあった。大きな山で木を切ってきて製品にしたり。製材所はこの山を下りた所にあり30年ほど勤めました。山仕事ばっかりですが。

山は木を切らないとダメ

 自分の思いは山の木を切らないとダメですわ。「間伐」ですね。それで炭焼きとかを沢山行い、木の伐採をやりたいと思って。その思いで炭焼きをさせてもらっています。
 雑木の山を切らないで放っておくと、林がくたびれて切っても新しい芽が出なくなることがおこってしまう。だから1本でも多く切るように考えてやっています。 

切らないでおくと・・・

 大木になると、風が吹くと根に負担がかかるのか倒れて根っこのところに水が入って山が崩れる。木は1メートル伸びると根は3メートル伸びると言われている。だから間伐すると際から細かい根も生えて土を締めてくれます。
 昔は炭焼いて一生懸命やったので山の木が大きくなる合間がなかったんです。そのくらい木を切ったのですが、今は切らないしね。
(戦後間もない頃は、燃料不足のために木炭の需要があったので、南山城村は木炭の産地でした。木津川から大阪方面へ運んでいました。その後需要が減りましたが、甲田さんは良質な炭を作り続けておられます。)

伝承活動(炭焼き体験)について

 最初は役場の方から頼まれました。南山城少年自然の家や農業改良普及センターからも依頼があります。世話させてもらえるだけで結構だと思っています。
 窯は焼き始めると毎年続けておかないとダメですから。使わないとダメになる。
 体験では、最初に原木を切りますのでケガをしないように、まず最初に教えます。
 ここで体験した人が、炭焼きが楽しくて一人でやるようになった人もいます。遠い所の人から一度話も聞きたいし、仕事も見に行きたいと言われることもあります。
 (「京のやましろ田舎ぐらし必見★発見★体験プログラム」では、炭焼きコースを指導、田舎ぐらし希望者へ作業体験の指導等を行い、南山城村への定住促進に貢献されています。やる気のある人には伝承技術を親切丁寧に承継され、体験者との信頼関係を大切にされている。)

 

炭焼きの手順

  1. ナラの木を窯の高さにあわせて切る
  2. その木を窯の中に詰めていく。
  3. 斧を使って丸太を割り、燃料となる薪づくりを行う。
  4. 火をつけ、蓋をしめる。
  5. 3日ほど焼き、火を止めて3~4日後に炭を取り出す。(3~4日くらいはそのままにしないと、熱くて窯の中にはいれない)

南山城村はこんなところ

 この辺は隣は離れているけれど、必要な時は「来てくれないか?」と言ったらすぐ来てくれます。風邪ひいてもすぐ知られてるし、お互い気を付け合ってます。毎日あそこのおばあさん顔出してたのに今日は見ないなとなったら、何かあったのかと思いますよね。夫婦げんかもしたことありません。妻は自分の気持ちを察しているのかうまいこと納めてくれます。 

やろうという気持ちのある人は嬉しい

 炭焼きをするのに都会から来てくれた人もいる。やる気のある人は嬉しい。
 歳は関係ない。ボチボチやったらいい。若ければ盛大にやったらいいしね。
 自分の体調の悪い時など辛い時もあるが、来てくれる人がいて、俺もしたい、俺もしたいと言ってくれて、それに応えようと頑張るので一日でも長生き出来るのだと思います。えらい抵抗があっても腹を立てずに穏やかに、そういう気持ちでやっています。 

最後に炭焼きに興味のある方へ一言

 この仕事は経験し、現地で実地で自分で覚えていかないと分からないところが多くありますので、最初は真似してもらえばいい。言葉で言われてもわからないですよね、正直言って。真似してもらって、その人、その人の性格を自分でつかんで真似を、うまい事良い所を盗めばよい。木の1本でも、持つ場所にしても、ああすると軽く持てるのかとか分かるし、こうすると重たいのだとわかるし。
 自分で実際に手を動かしてやってみることが大切。

 

 甲田 敏一【平成19年度京都府農山漁村伝承技能登録者(炭窯作り)】
 府内の農山漁村地域において多年にわたり培われ、行われてきた伝統的又は優れた生産・生活に係る技能として「平成19年度京都府農山漁村伝承技能登録」に登録されている。
 炭焼き体験、炭焼きキャンプのほかにも、炭焼きの研究に熱心であり、炭窯で作るまろやかな味の塩「竹塩※」が高級料理屋で人気となっている。(※塩を入れた竹筒を炭窯で焼いて塩を一旦高熱で溶かした後に固めたもの。竹塩は削って粉にして料理に使用。)  村内で減少しているトマト栽培を約40年前から現在も続け、有機栽培等こだわりトマトを栽培されている。

(平成21年12月18日取材)