浄安寺(久御山町)山崎君香さん
久御山町にある浄安寺の奥様。趣味を多くお持ちで、茶道、詠唱の先生、お琴の師匠、それからお寺で習字も教えておられます。住職である御主人が不在時には、衣を着てお参りにも行かれます。さらには、奥様のアイデアで、秋にはお月見のお茶会を開かれたり、2月15日から4月15日までは椿展も開かれています。 自然が大好き、お寺と椿が大好き、地元の佐山が大好きとおっしゃる奥様にお話を伺いました。
浄安寺さんは歴史のあるお寺と伺いましたが
天喜元年(今から900年程前)後冷泉天皇の頃にできたんです。その頃は「浄福寺」という名前でしたが、天正元年(今から430年程前)ですから、織田信長の頃に「浄安寺」になったんです。
その頃、初代の開山上人が、宇治の平等院を隠居されて移ってこられたんですよ。
また、浄福寺は後冷泉天皇の勅願寺だったので、木津川で捕れた魚とか、佐山のお野菜とかを朝廷に献上する際に、ここで印をもらわないと献上できなかったのです。
浄福寺だったのは、現在の観音堂で、その中に奉られている観音さんは「聖観音」といって、平安時代の作と言われて、彫刻で有名な定朝の父、康尚の作風であると言われてます。
腰をちょっと曲げてはってね、右足を半歩前に出してはって。人々の苦しみ・願い事をきいてくださる観音さんなんです。一年一回、8月9日にだけ扉を開けるんです。 なんでこの日かはよう知らんのですけど、昔はあちこちの村人がお参りに来られて、行列を成したそうです。夜店や市が立ったそうですよ。
御開帳の他にもいろいろと行事をされているそうですが?
9月の満月に近い日曜日にお月見の野点のお茶会をしています。境内の庭園に緋毛氈(ひもうせん)を敷いて、丸いお月さんが山門と釣鐘堂の横から上がってくるのを観るんです、そりゃあ、きれいですよ。縁側でお琴弾いてもらって、お座敷でお点心を召し上がってもらうんです。お点心は、お月さんにちなんで、おだんご、ウズラの卵、枝豆、マスカットとか・・・丸い物が主体なんです。
どうしてお茶会をしようと思われたのですか?
自然と生活が密着したものが好きなんです。お月さん見ながらお茶やお料理をいただいたり、お琴を聞いたり・・・心が落ち着いてくるでしょ。 町中のビルが林立しているお寺だったらできないけど、有り難いことに、うちはお庭が広いし、東から南の空までみんな見えますから。
実はね、そこの道路(宇治・淀線)のとこも、昔は浄安寺の薮だったんです。
昭和16年に、戦争が始まる前に京都飛行場ができたんです。コカ・コーラの工場があるあの辺りにね。
大久保から淀まで続く物資の輸送道路として、この道ができたんです。京都飛行場ができる前は、菜の花畑だったんです。菜の花の黄色とれんげ草のピンクと、麦を植えてはったんでね麦の緑と、横手に桃の花、それからちょっと遅れて梨の白い花が咲くんですわ。
そこで寝ころんでね、空を見てたらヒバリの鳴き声が聞こえてきてね。 愛宕山が見えて、比叡山が見えて、生駒山系があって。黄色と緑とピンクと白と・・・。きれいでしたよ。その風景が今でも忘れられないんです。娘や孫にも見せてやりたかったです。今では、工場が建ったり、団地が出来たりで、昔の面影はなくなりましたね。
今とはずいぶん様子が違ったんですね。昔の佐山のことを教えてください。
昔はね、佐山の村はぐるりが全部川でした。まん中ほど地面が高かったんです。村に入る道、入り口が4つありまして、そこには全部薮があったんです。敵が攻めてきたら、皆、薮に集結して、竹を切って槍にしたんです。それと、この佐山は四つ角がないんです。皆三叉路です。敵が攻めてきたとき、二つの道を抑えたら捕まえられるでしょ。でも、選挙カーは「佐山の村程回りにくい所はない。行ったら突き当たり、こっちに行ったら他の選挙カーとかち合う。」って言わはります。(笑)
薮といえば浄安寺さんにも薮があったんですよね。先程道路造成のために伐採されたと伺いましたが
そうなんです。境内の薮がある日全部伐採されて、土になって道になったんです。薮の中には薮椿があって、真っ赤な椿がきれいだったんですよ。小さい頃は、落ちた花でままごとをしたり、ひもに花を通して首飾りにしたりして遊んだりしたのに・・・。悲しかったですね。でも境内にも椿が残っていましたし、椿は大好きだったんです。
二十歳の頃、お茶のお稽古で先生のところへ行ったら、毎週変わった椿を生けてはるんですね。それを見て「ああ、やっぱり椿はいいわ」と思って、先生のところのゴミ箱に捨ててあった枝を持って帰って挿し木したのが始まりです。
今では、230種類になります。道を歩いていて珍しい椿があるとお願いして一枝もらったり、あそこに良い椿があるって聞いては、電車乗ってバスに乗って一枝もらってきたり。でも、挿し木して、花が咲いて切れるようになるまで10年かかるんです。
「浄安寺椿」という椿があるそうですね
親指くらいの白い椿なんです。父が「この椿はよそにない椿やから、大事にせんとあかん。この椿があることは人にしゃべってもあかんし、一枝あげてもあかん」と言うてたんです。本堂と庫裏の間の中庭にひっそりとあったんです。江戸時代の終わりから200年くらいの樹齢です。
それで、椿博士が見に来られて「浄安寺椿」と名付けてくれたんです。4月10日頃に咲きます。
「椿展」を開催されるようになったきっかけってなんだったんですか?
初めは玄関に生けていたんです。そうしたら、お茶のお稽古に来られているお嬢さん達が「先生、ここ(玄関)だったら私らだけしか楽しめへんし、本堂にでも並べてお客さんに見てもらわはったらどうです?」と言うてくれたんです。それで、20年程前から本堂に並べることにしました。
「椿展」は予約が必要ですか?
お抹茶を一服ほしい方は電話で予約してくだされば結構ですけど、庭の木には札が下がってますし、本堂も短冊がつけてありますし、ポットとお茶とお菓子が置いてありますし、御自由に御覧いただいて召し上がっていただいています。期間は、2月15日から4月15日までの2ヶ月間です。時間は、朝9時から夕方5時まででしたら門が開いてます。拝観料は無料です。素人がやってることやさかい。それに、花に会いに来られるのと同時に仏様にお参りに来られるのですから。
椿展をされていて、一番うれしいことは何ですか?
来てくださった方が、感激して帰って行かはる後ろ姿を見るのがうれしいです。お礼状とかお手紙をいただくのがうれしいです。
逆に椿展をやめようと思われたことはありますか?
一回もないです。2月15日が迫ってきたらわくわくします。命ある限り、足腰が立つ間は続けようと、喜んでいただこうと思ってます。
本当に椿がお好きなんですね。
どうして椿に魅せられたかというとね、厳寒・極寒で一番に咲く花でしょ。梅もそうですけど。2月のこの一番寒い時期に、北風や雪に耐えて咲きますから。それを見ていたら涙ぐましくなるんです。
いい椿はね、葉っぱが(花を)ガードするんです。偉いでしょう、葉っぱ。今年は咲いてないのかなと思って、葉っぱをのけるとちゃんと咲いているんです。人間のお母ちゃんが、我が子殺したり餓死させたりしてますね。植物でも我が子をかわいがるのにね。
本当に世知辛い世の中ですが、皆さんにメッセージというか一言いただけませんでしょうか?
そうですね、「童心を大切に」ですかねぇ。子どもは悪い子なんていないんです。社会が悪いんです。子どもは宝物です。大人も子どもも感性豊かに暮らしていけたらと思います。割り算のような生き様ではなくね。感性豊かにね、自然の中に生かされている喜び、自然と共に生きているということ。「慈しみの心」を大事にしたいですね。
最後にお薦めの観光スポットを教えてください
「流れ橋」ですかね・・・。
私は「流れ橋」の上から眺める夕日が好きですね。これは本当にきれい!この近くだと雙栗神社さん。国宝ですし、黒椿が有名ですよ。(浄安寺さんにも黒椿はあるそうです)
それから、木津川の堤防から眺める景色。佐山の方に向かって見ると、村がポコンと下の方に見えるんです。木津川の底より村の方が低いんですよ。それを見ていると、有象無象の生活がなんだと思うんです。中でゴチャゴチャ言うてても、大自然の中ではごく一部分じゃないかって。それと、木津川に生息する小鳥の声を聞くのもいいですよ。
昨年の4月に、お世話になった方が連れて行ってくださったのが浄安寺さんでした。予約もなくおじゃましたのですが、たまたま奥様がおられたので本堂へ案内してくださいました。それから、本堂に生けてある椿について、一つ一つ説明してくださいました。椿についてはもちろん、添えの枝や花器についても丁寧に説明してくださるんです。説明の合間にお茶を入れてくださり、お菓子まで頂戴いたしました。
本堂の椿の説明が終わると、お庭に出て境内にある椿を一周して説明してくださいました。突然訪問いたしましたのに、本当に丁寧に説明してくださり、とても有り難く、そして楽しい時間を過ごさせていただきました。そのとき感じたんです。遠くに行くだけが観光じゃないと。
例え隣町でもその土地の物「光」を「観せて」いただき、その土地の人から暖かいもてなしを受ける・・・それが観光になるのではないかと思います。
皆さんの地域にもすばらしい「光」があると思います。それを見つけてもっと輝かしてみませんか?大切なのは「この土地が大好き」という気持ち!それさえあればきっと見つかります。さあ、一緒に見つけに行きましょう!
浄安寺へのアクセス
〒613-0034
京都府久世郡久御山町佐山双置80
浄安寺
TEL0774-41-6036
近鉄京都線 「大久保」駅から淀行の京阪宇治交通バスで「佐山」下車すぐ
又は、
京阪電車「淀」駅から宇治行のバスで「佐山」下車すぐ
やましろ観光ちょっとメモ
流れ橋
木津川に架かる八幡市と久御山町を結ぶ「上津屋橋」の通称。
全長356.5m、現存する木橋としては国内最長級。1951(昭和26)年に架けられました。
自動車は通れませんが、府道です。(府道八幡城陽線)木津川が増水するとワイヤーで繋がれた橋板が八つに分割して流され、水が引けばワイヤーを引っ張り橋板を元に戻す。この付近一帯は、コンクリート護岸や電柱がないため、時代劇のロケーション等によく利用されてテレビでも目にした方が多いのでは?欄干がないので風が強いときはちょっと怖いかもしれませんが、時代劇のヒーロー・ヒロイン気分で橋を渡りに来られませんか?
