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「大正園茶舗」奥村由起子さん(宇治田原町)

宇治茶問屋「大正園茶舗」の代表。
煎茶席の講座をはじめ、お茶を通じて地域等で御活躍されてます。
(写真左が奥村さん)

お店は、最初から継がれるおつもりだったんですか?

私には、弟がおりましたので弟が継ぐことになっていたんです。しかしながら、若くして病気で他界しましたので、私の夫が、継いでくれることになっておりました。でも、不幸は重なるもので、その夫も交通事故で急死しましたので、私が継ぐことになりました。

御主人が亡くなられたのは、いつ頃ですか?

私が31歳の時、昭和46年の夏です。夫が交通事故で亡くなった時、長男が4歳、長女がまだ2歳でした。私も国家公務員をしておりましたので、子どもが義務教育を終了するまではと、両親が従業員と頑張ってくれることになったんです。
でも、私も老舗の「のれん」は守りたいと思いましたので、余暇は両親に家業を学びました。

家業を継がれることを決意されてから、まずどんなことをされたんですか?

まず、煎茶道を学ぼうと思い煎茶道東阿部流に入門いたしました。そこで、全国煎茶道連盟の36流派の家元の方々に、当店のお茶を愛飲していただいていることを知ったんです。そうしたら、うちのお茶がどのようにお点前していただいているか知りたいと思いまして、開莚されている全国のお茶席を廻りました。どこで、如何にして、当店のお茶がもてなされているのか?どんな雰囲気で点前されているか?を知りたかったんです。

大正園玄関

日本全国を回られたんですね。

日本だけじゃありませんよ。時間があれば、中国、イギリス、フランス、ドイツとお茶席さえあれば、異国であっても、そこでもてなされる日本茶を確かめに行って、緑茶の良さをPRします。また、我が家でショートスティを受け入れ、日本と海外との文化交流をしたこともあります。

いろんなお茶席を見られて、どう思われましたか?

やはり、大切なのは、お道具とお茶とお菓子の調和だなと思いました。 お点前もT.P.Oに合った振る舞いが大切だと思いますし、お茶席のしつらえや、お道具の取り合わせもそうだと思うんです。 お茶を美味しく点てるのがモットーで、満足していただける安価で美味しいお茶を届けたいと思い、店の商品をあれやこれや試行錯誤しながら両親に学びました。
でも、頼りにしておりました父が倒れ、半月で他界したのですが、お茶を通じて煎茶道連盟の会長でもある黄檗山萬福寺の管長様との出逢いがあり、「自分が生かされていること」を教えていただき、悲しみに暮れることなく仕事に専念できました。

店舗内の茶室

いろんなことを乗り越えてこられたんですね。

萬福寺の管長様との出逢いもそうですが、一碗のお茶がいかに「人とつながりのある尊さ」であるかを、家業と趣味の中でしみじみ味わいました。ですから、仕事の上では、従業員に「奉仕の心を大切に」と申しております。お客様を大切にすれば、またお越しいただけるし、その方が新しいお客様をお呼びくださるという気持ちをもって接するようにと申しております。

店舗で使用されている茶器 お稽古場茶室

お茶で人が繋がっていくんですね。

そうなんです。宇治田原町は、「緑茶発祥の地」であり、永谷宗円ゆかりの町です。
町の女性会でも煎茶道を学んでくださる方が多くなり、町のイベントに参加したり、小中学生対象に「お茶の美味しい入れ方、もてなし方(作法)」を講義と実践させていただいたりしています。また、文化協会に加入し、煎茶道教室を設け、お茶を美味しく点てられるよう皆さんと勉強しています。どんなに立派な道具でもてなされても、一煎のお茶が美味しくなければ満たされませんから。

ペットボトルのお茶を飲まれる方は多くなってきていますが、急須で飲むお茶の良さを教えていただけませんか?

ペットボトルのお茶との違いは、まず茶器を楽しめるということですね。 いろんな茶道具を愛でることができますし、日によって器を変えるという楽しみがありますよね。
それから時間を楽しめます。煎茶道でいえば、無駄な動きがないんです。ひとつひとつの動作が理にかなっていて、時間の流れの中でお点前しているというのを感じます。一煎の中に、茶量と湯量と時間でいろんな楽しみが持てるんです。 その一煎が心の架け橋となり幸せを味わえば最高だと思います。 お茶は体にもいいので、心とからだの為に一煎から始まる健康な毎日を送っていただきたいです。

   

煎茶道で使用される茶器

将来の夢を教えていただけませんか?

若い方、年配の方々に、是非緑茶のおいしさを味わってほしいんです。煎茶は、中国文人の趣味の一つとして日本に伝わり、年月を経て煎茶道として確立されたものです。若い方々に伝えていくために、まず、私自身が、文人趣味の世界を学び、その知識を得たいと思っています。そして、売茶翁や文人たちの精神、和の精神を基本にして、もてなしの中に人と人とのつながりを大切にできるよう伝えていけたらと思います。一輪の花、一碗のお茶、それを心の和みにしたいです。

最後にお薦めスポットを紹介してください。

高尾に隠れ里の伝承があり、又、弘法大師ゆかりの井戸から霊水が流れている場所があるんです。そこから、左方に琵琶湖や大津市内が眺められ、猿丸神社へと続く山道があるんです。そこをお薦めします。四季折々の山野草が咲き、静かな山間から見える琵琶湖や宇治川が流れる風景が素晴らしいです。春は桜から始まります。梅林でも有名です。山のにおいを充分に感じられ、私を慰めてくれるんですよ。

先日、奥村さんが皆さんと一緒にされている煎茶道の教室におじゃましてきました。
この日は、奥村さんの先生である財団法人煎茶道東阿部流理事の奥村雪涛さんが来られていました。
皆さん、背筋がピンと伸びておられ、ひとつひとつの動作がとてもきれいでした。私は、煎茶道について何も知りませんでしたので、そのひとつひとつについて丁寧に御説明してくださるのを伺いながら、見とれてしまいました。
慎重にお手前をされている方の緊張が、こちらに伝わってくるようでした。奥村さんが煎茶道の教室について「家のこととか、仕事とかから離れて、『自分と向き合える時間』が持てる」とおっしゃっていたのですが、まさにそんな感じでした。「おいしいお茶を入れてお客さんに喜んでいただきたい」そのためには、茶量、湯の温度、時間に慎重になる。だから、適度な緊張がある。そんな空間でした。
奥村さんはおっしゃいます。「『宇治茶発祥の地』宇治田原町に住んでいるんだから、おいしいお茶を入れたい」山城地域は、お茶が特産です。普段飲んでいるお茶も、先程記しました「お茶の量」と「お湯の温度」と「時間」に気を配られるだけで、とってもおいしいお茶になります。忙しい毎日ですが、自分のためにほんの少しお茶の時間を設けてみられませんか?山城地域のおいしいお茶をどうぞ召し上がってください。

「大正園茶舗」の連絡先

〒610-0231
京都府綴喜郡宇治田原町立川西垣内7
電話0774-88-2012
ファックス0774-88-3637
E-mailアドレス taisyouen@nike.eonet.ne.jp



やましろ観光ちょっとメモ

宇治田原町高尾(うじたわらちょうこうの)

弘法の井戸 山間から見える宇治川

京阪宇治バス「下町」バス停から徒歩約30分の高尾に「弘法の井戸」があります。
そこから、山手に上っていくと、山間の向うに大津市内の遠望が広がります。この日はあいにくの天気ではっきりと見えなかったのですが、それでも壮観でした。もう少し上っていくと、山間を流れる宇治川を観ることができます。深い緑と黒に近い濃青色が、「自然の迫力」を感じさせてくれます。悩んでいることがあっても「それは些細なこと」と思えてくるほど力強い自然があります。
  この道は猿丸神社へと続く道で、健脚自慢の方は挑戦されてはいかがでしょう?弘法の井戸から徒歩約3時間。森林浴が味わえます。